東京都議会議員(町田市選出)の
おくざわ高広です。
公営企業とは、地域住民の生活や地域の発展に不可欠なサービスを提供する様々な事業活動を行うために、地方公共団体(都)が経営する企業であり、水道、下水道、交通(都営バス・都営地下鉄)、病院、市場どがその代表的なものです。
なお、公営企業では、経済性をもって(料金を徴収して)、公共の福祉の増進に寄与する(都民サービスを提供する)ことが求められており、そのバランス感覚が非常に重要であると私は考えるものです。
〇あまり、都民の皆様の注目が集まらない分野ではありますが、各会派(政党)によって重視する観点が異なり、民営化すべき!都が直営すべき!といった意見が分かれ、その時々の政局に振り回されてしまうケースが散見されます。私としては、公営企業が政局に振り回されることなく、その役割を果たしていくための鍵が「見える化」つまり意思決定過程の透明化であると考えてます。
また、変化する社会にあって、その社会貢献性や社会的責任を常に問い直し続けることで、初めてその役割を発揮するものであり、また、その価値を発揮するためには、企業同様に経済的な持続可能性を高めなければならないと考えます。
〇議場は、質疑を通じて問題点を指摘すると同時に、局長や知事といった都政の意思決定権者に対して、提案をできるプレゼンの場でもあります。その点では、知事より「議論の客観性と透明性を確保する重要性」と「改革に向け、手綱を緩めることなく、幅広く多角的な検討を進めていく」旨の答弁があったことは、前進であったものと考えます。
こうした機会をとらえ、今後とも未来志向の提案を重ねてまいります。
~以下、全文です~
無所属 東京みらいを代表して、質疑に臨ませていただきます、時間が限られていますので、個別の局に対してお伺いしますが、その問題提起や提案のメッセージはぜひ全ての局・本部に受けとめていただければありがたいです。
はじめに、交通局が実施している通信環境整備事業について伺います。
各会計決算特別委員会でも指摘しましたが、都が進めるTokyo Data Highway構想において重要なのは、通信インフラ整備はあくまでも手段であり、その目的は「都民がより豊かに、そして、いかに幸せを感じて生きていけるか」であります。加えて、この通信インフラ整備は、都が保有するアセット、つまり土地や建物の有効活用であるという視点も忘れてはなりません。
先般、5Gアンテナ基地局等設置ワンストップ窓口を開設するとともに、都保有アセットデータベースが公開されました。都が保有するアセットを開放し、民間事業者による基地局設置を強力に後押ししていこうという姿勢がみえます。データベースを見ると、まだ交通局の保有するアセットは公開されていないようですが、都営地下鉄では、これまでも光ファイバー事業と携帯電話・PHS・Wi-Fi事業といった通信環境整備事業を行っています。
Q1.そこで、具体的にどのような事業を実施し、どれだけの収入を得ているのか伺います。
A1.
・交通局では、都営地下鉄を利用するお客様が、携帯電話やWi‐Fi等を使用できるよう、通信事業者がアンテナや基地局を設置するための場所を有償で貸出
・当局で設置した光ファイバーケーブルについても、利用を希望する事業者に有償で貸付
・これらの平成三十年度の収入は、約十三億六千万円
約13億6000万円の収入ということで、これは同じ交通局が実施する電気事業の売電収入に匹敵する額であり、貴重な収入源といえます。この後の質問で触れていきますが、将来予想される人口減少社会において、公営企業の持続可能性を高めることは、都政の大きな課題です。
その点で、交通局でいえば、都営地下鉄や都営バスの運行といった中心的なサービスを維持していくために、それ以外の事業収入を追求していくことが必要です。Tokyo Data Highway構想は、民間事業者のイノベーションのチャンスであると同時に、都にとっては、都が保有するアセットの有効活用による収入増加のチャンスです。そして、そのどちらもが、結果として都民生活をより豊かにすることに繋がるものと考えます。今後、Tokyo Data Highwayサミットなどにおいて具体的な話が煮詰まっていくものと考えますが、そのような観点も大事にしていただきたいと申し述べておきます。
ここからは、公営企業の社会的責任と持続可能性について質問していきます。まず、公営企業及び関係する政策連携団体の障害者雇用について伺います。
都では、国の定める法定雇用率を満たすのみならず、知的障がいや精神障がいのある方の就労を促進する「東京チャレンジオフィス」の取組などを進めていますが、政策連携団体においては、まだまだ取り組みが不十分であると感じます。
私は、政策連携団体とは、その都民サービスが都政課題の解決に寄与するのみならず、その運営自体が都内企業のモデルになるべきであり、障がいのある方などに、その門戸を広く開いていただきたいと考えるものです。
Q2.そこで、平成30年度における、各局および関係する政策連携団体の障害者雇用の状況について伺おうと思いますが、今回は水道局及び政策連携団体である東京水道サービス株式会社と株式会社PUCの取組についてお伺いします。なお、法定雇用者数を下回る場合は、その対策についてもお答えいただきたいと思います。
A2.
・当局では、平成30年6月1日時点の障害者雇用率が、2.94パーセントであり、法定雇用率の⒉5パーセントに対し、必要な雇用者数を確保した。
・一方、当局所管の政策連携団体は、東京水道サービス株式会社が2.04
パーセント、株式会社PUCが2.07パーセントであり、法定雇用率の2.2パーセントに対し、いずれも必要な雇用者数を確保できなかった。
・このため、両団体では、ハローワーク等を通じて新たに障害者を雇用するとともに、障害特性に配慮した配置や、ジョブコーチを活用した職場内のコミュニケーションの向上支援などを行い、障害者の定着を図ってきた。
・こうした取組により、現在は、両団体とも必要な雇用者数を確保している。
平成26年時点では水道サービスは1.81%、PUCは1.52%だったと聞いていますので、その後の5年間で着実に改善し、現在は必要な雇用者数を確保するに至っているということで、その取組は評価できると考えます。
分科会の質疑では、下水道局の政策連携団体である東京都下水道サービス株式会社では、現場仕事が多いこともあり、障がいのある方の雇用に苦労しているとの答弁がありました。しかし、多くの民間企業が同じ課題を抱えていることに鑑みればこそ、積極的に取り組むべきであると指摘しておきます。
また、東京水道サービスでは、障がいがあるけれど現場仕事を希望されている方とどうすれば一緒に働いていけるのかと意見交換を重ねているとお伺いしました。引き続き、こうした取組を継続していただきたいと思います。
次に、エネルギー利用について伺います。
水道局、下水道局、交通局の公営3局は、あわせて年間23億キロワットアワーを超える電力を使用しています。平成29年度の都内電力消費量が約792億キロワットアワーとのことですから、公営3局で都内の約2.9%の電力を使用していることになります。そのような大量の電力を使用する企業として、電力使用量の低減と再生可能エネルギーの利用促進は、社会的責任であると同時に、その取組に大きな価値があると考えます。
ここで、東京メトログループと交通局を比較してみると、年間電力使用量は、東京メトログループの約27億8千万kWhに対し、交通局は約5億3千万kWh、そのうち再生可能エネルギー利用量は東京メトロ約297万kWhに対し、交通局約2万5千kWhとのことです。年間電力使用量は約5分の1にもかかわらず、再生可能エネルギー利用量は100分の1を下回るという、非常に残念な状況です。大量のエネルギーを消費する公営企業の社会的責任を強く自覚して、取組を強化していただきますよう、要望しておきます。
さて、交通局では、水力発電による電気事業を行っており、電力の安定供給とクリーンエネルギーの創出を目的として、年間約1億kWhの電力を販売しています。クリーンエネルギーの創出自体は、数多くの民間事業者が参入するようになり、環境局の資料によれば平成29年度の都内における再生可能エネルギーにより発電された電力の利用量は、約 112 億kWhと推計されています。そういった状況に鑑みると、クリーンエネルギーの創出のみならず、その先にあるエネルギーシフトを見据えた施策を推進すればこそ、そこには公営企業が取り組む価値があるのではないかと考えるところです。
経済産業省の資料によると、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた課題として、(1)コストダウンの加速化と固定買取価格制度いわゆるFITからの自立化(2)長期安定的な事業運営の確保(3)次世代電力ネットワークの構築(4)産業競争力と技術革新の追求といった課題が挙げられています。
たとえば、都が現在検討中の卒FIT後の買取価格への上乗せは、電源特性に応じたインセンティブ付与という面で有効です。加えて、次世代電力ネットワーク構築という観点から、地域電力を育てていくような取組が必要であり、そこに都が果たしていく役割があるものと考えます。
Q3.そこで、交通局では、電気の供給先として、新電力を利用しているとのことでありますが、その狙いについて伺います。
A3.
・電力市場の活性化に向けて、国が電力自由化に取り組んできた中、交通局においても、電力市場の競争性が高まるよう、平成二十四年度に条例を改正し、東京電力に限定してきた売電先を公募により決定
電力市場の競争性を高める取組とのことですが、朝日新聞と一橋大の調査では47都道府県と20政令指定都市の庁舎の電力調達について、いったん新電力と契約後、現在は大手電力に戻っている自治体が、過半数に上ることが分かったそうです。中には、新電力よりも2割以上安い金額での落札もあったそうです。また、東京新聞のアンケートでは、自治体が中心となってつくった新しい電力会社の約4割が、大手電力の安値攻勢に苦しんでいることがわかっているそうです。競争性、つまり価格競争だけでは、スケールメリットのある大手電力会社に新電力が淘汰されていくことを暗示しているのではないかと危惧します。
未来の東京への論点では「気候変動への対処は、全世界で取り組むべき課題である。東京は世界の都市の先頭に立って、あらゆる手段を総動員してゼロエミッション都市を実現する必要がある。」と書かれており、公営企業としての交通局が電気事業などを通じて、どのように貢献していくのかも問われていると考えます。繰り返しになりますが、クリーンエネルギーの創出にとどまらない価値を発揮すべく、検討を深めていただくことを期待します。
この電気事業ですが、都政改革本部による見える化分析によると、「事業を取り巻く環境を踏まえ、今後の経営の方向性について、直営継続、コンセッション方式、民間譲渡の3つの選択肢を比較検討するよう指摘を受けています。
Q4.それを踏まえ、平成30年度は、今後の経営の方向性について民間事業者との予備的対話を実施したとの事ですが、その結果について伺います。
A4.
・交通局では、電気事業の経営形態のあり方に関して様々な知見を得るため、平成三十年度は電気事業に関心のある十七社から意見を聴取
・事業者からは、再生可能エネルギーとしての水力発電の価値が高まっているという意見や、黒字の事業を手放すことへの是非が示されるなど、様々な意見を得た
電気事業に関心のある17社から意見を聴取した中では、黒字の事業を手放すことへの是非、つまりそれは都民の理解を得られるのかという意見が出たと理解しますが、逆にいえば赤字になってから民間事業者への譲渡を行おうとすれば、それこそ大幅な改革が必要になるのであって、電力の安定供給という点で問題が生じるのではないかと考えます。どの局・本部にもいえることですが、将来にわたってより良い都民サービスを安定した価格で提供しようとすればこそ、経営形態の見直しについても、先送りせずに、真正面から議論しなければならない、そのように指摘しておきます。
こうした議論を進める上では、客観的かつ公平な視点が必要であり、議論の過程はできるだけ透明化を図るべきと考えます。先ほどご答弁頂いた予備的対話については、その募集要項をみると、各事業者のノウハウとアイディアを保護するために、意見交換の具体的な内容については、非公開とされています。しかし、引き続き幅広い検討を進めていく必要があると考え、もう一問質問します。
Q5.平成30年度に実施した予備的対話に参加した民間事業者17社の属性とそれぞれの参加目的について伺います。
A5.
・平成三十年度は、予備的対話の事前準備として、事業者からの意見聴取を実施し、参加した事業者は、電気事業者、コンサルタント、建設会社など
・近年、再生可能エネルギーへの社会的な関心が高まる中、交通局の電気事業について、情報収集を目的に参加したものと思料
様々な業種の方々が、まずは情報収集のために参加したのではないかということです。今のご答弁では、予備的対話の事前準備というお話ですので、本年度、本格的な予備的対話があるものと思いますので、見える化分析で指摘された3つの選択肢について、しっかりと掘り下げていただきますようお願いします。
都政改革本部による見える化分析では、下水道局についても指摘がなされています。私たちは、公共の福祉の増進には、まず長期的な視点で経営の持続可能性を高めることが必要であり、幅広く調査検討を進めるべきであると考えます。
Q6.下水道局においても、平成29年12月、見える化改革報告書において、新たな施設運営手法の検討を行うこととしていますが、平成30年度の検討内容と結果について伺います。
A6.
・下水道事業における施設運営手法については、平成30年度から令和2年度までの3年間で、調査業務委託を活用して、検討。
・昨年度は、予備的調査として、事業環境の検証や他都市の官民連携導入状況調査、官民連携事業の実績がある企業等へのアンケート調査などを実施。
・事業環境の検査では、施設の老朽化や豪雨の増加等を踏まえ、東京下水道の特性などについて分析。
・また、アンケート調査では、スケールメリットや収支状況の安定性等から当局施設の運営への関心がある一方で、事業規模の大きさが運営の制約となるとの意見あり。
・引き続き、様々な施設運営手法について、経済性だけでなく安定的なサービスの提供という観点も重視し、幅広く検討。
平成30年度は、今取り上げた交通局や下水道局の調査以外にも、工業用水道の廃止決定や市場移転といった大きな変化があった年でもありました。都民生活を支える基幹的なサービスについて、将来にわたって持続可能性を高めていくためには、時に大胆な決断も必要です。その際、様々な角度から調査検討を重ね、客観的かつ公平な立場から議論を深めていくことがまず大切であることは先ほども指摘しましたが、一方で、先送りしないスピード感も求められます。
そのような難しいバランスの中で方向性を決めていくために重要なことは、見える化つまり意思決定プロセスの透明化であると考えます。たとえば、都立病院の経営形態の検討においては、平成28年6月に「今後の都立病院が担うべき医療の方向性」の検討について、外部有識者も交えた経営委員会に付託されて以降、平成30年3月に「都立病院新改革実行プラン」が出されるまでの間、会議資料と議事録が公開されています。また、中央卸売市場については、今後の経営計画の策定に向けて、外部有識者による「市場の活性化を考える会」が設立され、会議終了後に議事要旨が公開されるなど、一定の見える化が図られています。
一方で、平成30年度といえば、当時の特別顧問による改革から都庁自身による自律改革へと舵を切った年でもあります。ただ、経営形態の見直しを含む抜本的な改革を、自律改革、つまり内部の議論だけで、進めるのは容易ではないと感じるところです。
そのような観点からも、意思決定の過程においては、外部有識者も交え、より透明性の高い議論を行うことが重要であると考えるものです。
Q7.そこで、下水道局および交通局における平成30年度の調査結果の受け止め方に加え、今後の検討における議論の透明性と客観性の確保について、知事の考え方を伺いまして、質問を終わります。
A7.(知事)
・私は常々、改革の担い手は一人一人の職員であり、都政改革の柱は自律改革と申し上げてきた。
・下水道局及び交通局が実施している経営形態の見直し等の検討は各局が主体となり、スケジュールに沿って着実に進めていると承知。
・改革の実効性を高めていくためには、学識経験者など第三者的な立場からの意見や助言を得ることと、必要な情報についても公開していくことが重要。
・今後とも、改革に向け、手綱を緩めることなく、幅広く多角的な検討を進めていく。
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