導入:夜明け前の静寂と熱気

今朝は、まだ空が藍色に染まる暗いうちに出発しました。吐く息が白く、肌を刺すような冷たい空気が、かえって身を引き締めてくれます。目的地は、この街の海沿いにある波止場です。

日の出前の静寂の中、波止場へと続く道には、すでに多くの釣り人の姿がありました。彼らの足取りは軽く、その手にはロッドケースやクーラーボックスが握られています。夜明け前のこの時間帯は、大物を狙うアングラーにとって、まさにゴールデンタイムなのです。

展開:波止場を彩るメタルジグの軌跡

波止場に到着すると、そこはすでに熱気に包まれていました。多くの釣り人が等間隔に並び、一様に沖合に向かってキャストを繰り返しています。

彼らのほとんどが手にしていたのは、メタルジグでした。この時期、回遊魚を狙うショアジギングは定番の釣り方です。夜明けのわずかな時間、青物が回遊してくるのを信じ、重いジグを遠投し、しゃくり上げる動作が繰り返されます。

「ヒュッ、ヒュッ」というロッドを振る音と、ジグが水面に着水する「チャポン」という音が、静かな海に響き渡ります。その一投一投に、釣り人たちの期待と情熱が込められているのが伝わってきました。

展開:期待と現実のギャップ、そしてサゴシの行方

この波止場では、今週はサゴシ、ネリゴ、ヤズ、そしてクロ(メジナ)などが釣れていたという情報が流れていました。特にサゴシ(サワラの若魚)は、手軽に釣れて引きも強いため、人気のターゲットです。

しかし、今朝の様子は少し違いました。周囲の釣り人に話を聞いてみると、「最近はサゴシも見ないようになったね」と、少し寂しそうな声が返ってきます。ネリゴ(カンパチの若魚)やヤズ(ブリの若魚)の釣果も散発的で、以前のような爆釣ムードはありません。

回遊魚の動きは気まぐれで、水温やベイト(餌となる小魚)の状況によって、群れが一気にいなくなることがあります。もしかすると、サゴシの群れはすでに次の漁場へと移動してしまったのかもしれません。

結論:釣果を超えた朝の散歩の価値

結局、私が波止場を後にする頃、目立った釣果を上げている人はほとんどいませんでした。それでも、釣り人たちの表情はどこか清々しいものでした。

釣果が全てではありません。まだ暗い早朝の澄んだ空気、水平線が徐々にオレンジ色に染まっていく夜明けの美しさ、そして、同じ趣味を持つ人々との静かな一体感。

今回の散歩は、大漁という結果には繋がりませんでしたが、それ以上に大切な、心と体をリフレフレッシュする時間を与えてくれました。また次の週末、この波止場を訪れるのが楽しみです。

釣れていた魚たち(イラスト)