相続税法第66条4項 『相続税等の負担の不当減少』 要約

 

一般社団法人に対し財産の贈与又は遺贈があつた場合において、当該贈与又は遺贈により当該贈与又は遺贈をした者の親族その他関係者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるときは、当該一般社団法人を個人とみなして、これに贈与税又は相続税を課税する。

 

 

一般社団法人に対して寄付を行う場合に関係してくるのが、相続税法66条4項『相続税等の負担の不当減少』です。

相続税の負担を少なくするために一般社団法人に対して財産を寄付してしまおうという行為を防止するためのものです。

 

この法律については通達で、

 

法人に対して財産の贈与等があつた場合においても、当該財産の多寡等からみて、それが社会一般においてされている寄附と同程度のものであると認められるときは、法第66条第4項の規定を適用しない

 

と定められているため、数万円程度までの少額の寄付は『相続税等の負担の不当減少』には該当しません。

 

 

 

では、数百万円から数千万円の高額の寄付を一般社団法人に対して行いたい場合はどうでしょう。

 

これについては相続税施行令33条3項で、次の各要件のすべてを満たす場合には、『相続税等の負担の不当減少』にはならないとされています。(すべて要約しています)

 

①その運営組織が適正であるとともに、その定款において、その役員等のうち親族等の数がそれぞれの役員等の数のうちに占める割合は、いずれも三分の一以下とする旨の定めがあること。

 

②当該法人に財産の贈与若しくは遺贈をした者、当該法人の設立者、社員若しくは役員等又はこれらの者の親族等に対し、特別の利益を与えないこと。

 

③その定款において、当該法人が解散した場合にその残余財産が国若しくは地方公共団体又は公益社団法人若しくは公益財団法人その他の公益を目的とする事業を行う法人(持分の定めのないものに限る。)に帰属する旨の定めがあること。

 

④当該法人について、法令違反、帳簿書類の隠蔽仮装、その他公益に反する事実がないこと。

 

ちなみに上の青字部分「その運営組織が適正である」ことについては、一般社団法人については通達で、

 

(イ)理事の定数は6人以上、監事の定数は2人以上であること。

(ロ)理事会を設置すること。

 

などを定款に定めておくことが求められています。

 

まとめると次のとおりです。

 

<一般社団法人が寄付を受ける場合のポイント>

1)少額の寄付を受ける場合は、『相続税等の負担の不当減少』には該当しない

2)高額の寄付を受ける場合には、『相続税等の負担の不当減少』に該当することを避けるため、以下のことを行う

  ・あらかじめ「その運営組織が適正である」ような定款にしておく

  ・役員や関係者に特別の利益を与えない

  ・法令違反や帳簿の隠蔽仮装などをしない

 

 

大学の運動部が設立した一般社団法人はOBOGから寄付を受けることが多くなるので、注意が必要ですね!

 

(追記:たぶん数千万円~億単位の寄付でなければ『相続税等の負担の不当減少』の対象にはならないでしょうね^^;)

 

(追追記:そもそも、贈与税の課税についての措置なんだから、年110万円以下の寄付は贈与税の基礎控除範囲内か。

 具体的な案件で検討し始めると、ほんといろいろ勉強になります。)