こんにちは、高橋功明です。
ブログ始めて何となく書き連ねて来ましたが、やはり『不思議な話』というものに惹かれる人は多いようですね。
自分自身含め周りの感触から、スピリチュアルな世界への皆さんの興味の高さを感じるところであります。
なので今日も、自身の経験に基づいたちょっと不思議な小話をひとつ。
ちなみに一部脚色はしてありますので、悪しからず。
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何だか暗い人だなぁ…。
これが、私が彼を見た時の第一印象だった。
実年齢よりずっと年上に見えたのは、あるいはその暗い表情のせいであったのかもしれない。
北海道札幌市内の某病院。
千葉の病院から、地元である北海道の病院に転院出来たはいいけど、同室の人々は何だかクセの強そうな人ばかり。
特に、その『彼』の表情の暗さは印象的だった。
話しかけても、何だかぶっきらぼうというか。
正直、あまり関わりたくないと思った。
まぁ、いいや。自分は自分のペースでやればいいし。
「気にしない」と決めたら、本当に気にしないでいられるのが私の得意技。
これから入院生活を共にする『彼』の様子に引っ掛かりを感じたのも束の間、私は持ち前のマイペースさを発揮させてすぐに入院生活にも慣れ、『彼』とはあまり関わらないまま数日が過ぎた。
そんなある日。
「もうすぐ、全く見えなくなるんだってさ。可哀相にな。まだ若いのに。」
私の隣のベッドの男性が、私に話した事でその後の『彼』の状況は一変することになる。
「ん?何が?誰の話?」
「ほら、向かいのベッドの彼。もうすぐ目が完全に見えなくなるんだって。」
「え、でも、その治療で入院してるんでしょ?」
「うん、でも、原因がわからないままなんだって。そんなんだから、この間、『今後の医療の発展のために』とかって、研究のための同意書だか何だかにサインしてくれって頼まれたらしいよ。」
なるほど、そういうことだったか。
妙に暗い表情も。
ぶっきらぼうな返答も。
そうか、そういう理由だったんだ。
『彼』が帰って来た後、誰もいないのを見計らって話しかけてみた。
「お疲れ様。調子はどうだい?」
「え…。あー、うん、まぁ、いつも通りかな。(そっちは)どう?」
「うん、こっちは快適にやってるよ。」
「そっか。それはいいね………。」
いつも通りの暗い表情。
「ところでさ、さっきトクさんが言ってたんだけど、君、目が悪いのかい?」
「あー、うん……。トクさん、おしゃべりだなぁ。俺の話聞いたんだ?」
「うん、ごめんね。ちょっと聞いて気になってさ。」
「………あっそ。まぁ、そういうことなんだけどさ。」
「ちょっと手首貸してくれない?」
「は?」
「ちょっと試したいことがあってさ、ちょっと手首貸して欲しいんだけど」
「え、何………は??」
いきなり「手首貸して」と言われて目が点になっていた『彼』は、それでも私の説明を聞いてくれ、意外とすんなり協力してくれた。
5分後。
「め…………め!!!!め!め!め!!!!」
「ヒーリング中は話さないで。落ち着いて。後で聞くから。」
「いや、だから……………!!!」
5分後。
私が目を開けると『彼』は目をパチパチさせ、周囲にあるものを見渡してしきりに「なんで??なんで?なんで?」と、繰り返している。
丁度良いタイミングで帰ってきたトクさんが、怪訝な顔で『彼』を見ている。
2週間後。
『彼』が見舞いに来てくれた。
嬉しそうにニコニコしているので、何か良いことがあったのかと聞いた。
「今日は天気がよかっただろ?だから歩いて来たんだ。」
「そっか。近所なんだね。」
「1時間半くらいかな。」
「え!なんでそんな距離歩いて来たの?」
「だってさ、色んな物が見えるから勿体なくてさ。道端の小さい花とか、すごく綺麗なんだ。そういうのが見えるのが嬉しくて歩いてたら、いつの間にか着いてたんだ。だからすごく楽しかったよ。」
そう言って笑う彼の表情に、あの暗い影は見当たらない。
「コウさんももうすぐ退院でしょ?今度遊びに行くね!!」
待ってるよ。
そしてまた教えてよ。
君がこれから見る、数々の綺麗で素晴らしい景色の話を。
色鮮やかな君の人生の出来事を。
聞けることを
楽しみに待ってるよ。