昇天記 (仮 虹色)

昇天記 (仮 虹色)



先日、私は富士山へ登山に行った。非常に爽快な旅であった。富士山登山を目指す目指す者が多いそうであるが、その理由がよく分かる旅であった。
今回はその一端を皆さんに紹介したいと思う。


まず、出発は木曜日の夜であった。先日まで夜勤の仕事をしていたので、つい寝すぎでしまい、出発が遅れる羽目になってしまった。
自宅を午後8時ごろ出発、高速を経て、富士山に到着したのは、10時半ごろであった。車から出ると、思わず、「寒いかも」と思った。調べによれば、富士山山頂付近は空気が薄いため、更に寒くなることがあるという。「…これで平気であろうか??」などという考えもよぎったが、深く考えないことにした。なぜなら、目的は登山であり、既に行動は開始されているからだ!(笑)このごに及んでの諮詢は無駄であろう。行動あるのみである。
5合目までは車で行けるのだが、その先は当然のように自分の足しか頼りになるものはない。ところが、先日まで夜勤の立ち仕事をしていたので、足が若干痛いのではあるが、富士山の空気の爽快さがそれを忘れさせてくれた。
霊峰の効果であろうか?
真っ暗な中を歩いていく。5合目は2000メートルくらいらしいので、理論的には1700も登れば終わりのはずである。正直、楽勝ではないのか?との思いで来たのだが、中々6合目には着かない。




昇天記 (仮 虹色)



昇天記 (仮 虹色)


6合目で予想外に疲れ、思わずジュースを買う。富士登山をした人は分かると思うが、山では若干物が高い。ここの時点で400円くらいであったろうか。上に持ってくる手間賃が加算されているためだ。
私の周囲には大勢の登山客がいる。彼らの中には健脚(それとも慣れているものか?)相当なペースで行くものも少なくないが、私はあくまでも自己のペースを守ることにした。なぜなら、富士には高山病というものがあり、上に行けば行くほど空気が薄いため、呼吸困難・あるいは気を失ったり、行動不能になることも少なくないからである。事実、6合目付近ではかなり寒くなっており、どう考えても地上の気候とは違う感じがした。
さらには息が荒くなりはじめており、空気が薄くなったことを容易に理解させてくれた。
持参のスナック菓子の袋はパンパンになっており、これも地上との気圧の違いを感じさせてくれる。

登山道、というか、登山に至る山道には、しっかりとした(?)手がかりや足がかりとして石の道らしきものがあるのだが、そこにある石の1個1個をしっかり掴み、上を目指す。ところどころで休憩しながら行く。
~合目の山小屋以外には特段の休憩施設もないため、岩の上や、山道の曲がりを利用して暫時休む。休むと行っても、時間は無駄にしたくないため、5分から10分程度の休憩で済ましていく。ご来光を山頂付近で見たいと思っていたからである。




昇天記 (仮 虹色)

また、この休憩は別の意味もあった。高山病の防止である。ゆっくり上がることで高山病を防止する重要な効果も期待できた。
6合目の山小屋でここの主(恐らくはそうだと思われる、山小屋の店主のような人物)と若干の会話をしたあと、さらに上を目指す。
7合目付近からは非常に視界が開け、麓の雄大な風景がまさに一望のもとである。光の点の1個1個は恐らくは自動車であろうし、どこかに住む人の家の窓の明かりであろう。さらにはパチンコ店などの巨大なネオンサインなのだろう。それらが美しく瞬いている。
高速道路は長い光の帯に見えた。帯には光る光点が無数に存在し、それがゆっくりと移動しながら延々と続いていく…。美しいの一言であるが、それよりも「最終目的」の方がもっと重要であるし、さらに美しいものが待っているはずだ。




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昇天記 (仮 虹色)



昇天記 (仮 虹色)

8合目付近になると、もう寒い。着替えを行い、セーター姿になる。寒いわけであるから、空気も薄い。はあはあと息をしないと眩暈がする。
肺が普通とは違う感覚であるし、頭が痛くなってくる。
「これが高山病というものなのか?」とも思ったが、ここで退くわけにはいかない。眼下には街があり、ここまで来てこれらを無駄にするわけにはいかないのだ、という思いでさらに上を目指す。
高山病予備軍なのかどうかしらないが、若干の頭痛などはあっても、心は相当に楽しい。なんというか、楽しいのだ。足は痛いし、空気の薄さのため、激しく息はしても、非常に楽しい思いで心は満たされてくる。不思議の一言である。



昇天記 (仮 虹色)




昇天記 (仮 虹色)




昇天記 (仮 虹色)

しかし、遂にご来光の時は山頂前で来てしまった。
8合5勺付近のご来光小屋あたりで空は明るくなってくる。ご来光をどうにか写真に収めたいため、仕方なく小休止に入る。




昇天記 (仮 虹色)



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昇天記 (仮 虹色)

黎明直前の風景



昇天記 (仮 虹色)
富士の山肌



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昇天記 (仮 虹色)
ご来光




昇天記 (仮 虹色)



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昇天記 (仮 虹色)

日の出前は寒い。風は起こり、体感気温は下がる一方である。薄いセーターでは本当に寒い。
(今の気温はいくらであろうか?)との考えもよぎるが、ここは山の山腹、どうにもしようがない。

ご来光あとは急速に気温が上がってくる。日光の温度がじかに感じられる。1分おきに気温があがることは体中で体感できる。
まずは地面である。ゴム手を通して、岩があったかくなっていくことがよくわかる。
9合目くらいだと、かなり熱くなっており、自分の手よりも温度が高いので、40℃くらいには感じられるほどだ。




昇天記 (仮 虹色)



昇天記 (仮 虹色)


昇天記 (仮 虹色)


昇天記 (仮 虹色)
山頂から眼下を望む



昇天記 (仮 虹色)
富士山山頂 浅間大社 奥宮



昇天記 (仮 虹色)
富士山の元噴火口



昇天記 (仮 虹色)


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昇天記 (仮 虹色)



昇天記 (仮 虹色)


昇天記 (仮 虹色)
日本一高い店で出されるラーメン。



やっと山頂の石垣が目に入ってくるころになると、本当に空気が薄い。足が痛い、動かないよりも、空気を吸うために止まることが多くなる。山頂を目前にして、何とも口惜しいが、とにかく空気が薄いため、仕方なく小休止を挟む。

山頂には大勢の人がいた。あまりの多さにびっくりする。
かなりの人は喜び半ば疲れ半ばであるが、楽しそうである。



浅間神社奥宮で完成、でもいいのだが、さらに剣が峰を目指す。ガイドのロープを伝っていくと、なぜが反対側の岩場に出てしまった。仕方ないので、ここではロッククライミングをして鳥居まで行く。何とかできるものである。

山頂の小屋でみそラーメンを食し、下山する。

下山は簡単ではあるが、あまりに時間がかかるため、私はここで「近道」をすることにした。
樹海突破である。

今から思えば、バカなことをしたとは思うが、何でも出来そうな感じがして思わず樹海の中に入ってしまった。(あとは若干の面倒くささのため、笑)

樹海の中というのは以外に明るい。日中暗くなどと聞いていたが、日は相当に差す。途中山菜取りの人などにもあったので、簡単に出入りできるのではないか。
ただ、それらの人に聞いた方向よりも近道があるような気がして、さらに奥に入っていく。
沢を幾つも越えていく。
面倒になって、沢に飛び込んでしまう。沢を伝っていけば、いつかは山麓に出るだろうとの思案であったが、沢の下には巨大な倒木が幾重にも並んでいて、歩きにくいことは想像を絶していた。
どこかの沢では大きく滑落し、金剛杖をなくしてしまう。滑って怪我もした。
水はなくなり、チョコだけが支えである。

そんな中、樹海に入って数時間後であろうか、遂に自動車の動く姿を見つけられた。
(!俺の考えは正しかったか??)との思いがよぎるが、車道にはいるとどうにも交通量が少ない。
残念なことに、目的の道路を過ぎて林道に入ってしまったようである。
地元役場の人数人とあうが、あくまでも自力を目指し、さらに行く。
すると、吉田口の5合目に出た。どうにも富士山を4分の1周くらいはしてしまったのか。
しかし、吉田口にも行きたかったので、まあいいか、の思いで下山を開始する。
この吉田口というのは5合目まで車道が出来るまではメインの登山道であったらしい。
しかし現在ではほとんど人がおらず、多くの山小屋も閉鎖されている。
夜半に行くには寂しい限りの道である。

ここを下って富士吉田市内に入ったのは午後の8時ごろであったろうか。
あったろうか、とはどういうことか、といえば、この時点で腕時計を無くしていたからである。笑
登山とは思ったよりも苦労は多いかもしれないとは思いながら、次へ。