直接介護を担う介護職員の立場で、利用者の衣服について皆さんはどのように考えているのだろう?

衣服の趣味、嗜好はそれぞれあっても良いと思うし、あって当然だ。
介護される側になったとしても、若い頃のスタイルやその時代の嗜好にこだわるのも良いと思う。
本人視点で考えればね。

逆に介護をする側になった時に果たしてその趣味、嗜好と、介護をする時の利便性を照らし合わせた時に、本人の嗜好を全面的に受け入れなければならないでしょうか?

ほぼ寝たきりの状態で立位もほぼ不可、認知症も進行し、一日中傾眠状態にある人がいたとする。
この人は男性だが、若い頃からベルト付きのスラックスを履き、上着は全てボタン付きのいわゆるカッターシャツを着ていることが多かった。

家族はそれを考慮し、ほぼ寝たきりの状態にある現在でも用意する衣服は同様のものばかり。

この人をトイレ介助する場合2人介助で行うのだが、1人が抱え、もう1人がズボンを下げる。
しかし、スラックスでベルト付きの為にベルトを外すのにも手間がかかり、なおかつ腰の部分が伸びないので、上げ下ろしにも手間がかかる。
なおかつ、声をかけて状況説明を繰り返しても理解できていないので一動作に対していちいち抵抗される。
一回のトイレ介助をするだけで、職員はヘトヘトだ。

全てを職員の都合、介助する側の都合で物事を図ることには私は反対だが、この状態でベルト付きのスラックスを履き続けることってどうなんでしょう?今となっては、本人はそれに対して執着することもなく、理解もできていない。

私は折衷案として、スラックスに見えるが腰がゴムになっているようなズボンもあるので、せめてそのような物で折り合いをつけて良いと思う。

まぁ、物については選択や検討すれば良いと思うのだが、この一例を取っての考え方に疑問を感じている。

ちなみに、この例は介護施設を運営する側の人間の身内なのだが、家族の立場でありながら、介護施設を運営する側でもあるという、職員からすれば非常にやりにくい事例。

介護の業界を中途半端にと言っては失礼だが、中途半端に知識があるだけに、本人視点、尊厳を重視し、なおかつ介護職員の自分視点の問題提起をしているとすれば、職員からすれば、なおさらやりにくい。

本音を言えば、もっと介護しやすい服を用意してくれよ!なんで未だにこんな服着ないといけないの?ってことだと思う。

上着もボタン付きのものじゃなくても良いのに、いちいち抵抗されながらボタンをはめるのも毎度のこととなれば、結構めんどくさい。

繰り返しになるが、ライフスタイルは大事ですよ。本人の嗜好も大事ですよ。

だけど、介護する側の利便性も考慮してもらわないと、必要のない手間がかかり、いくら本人を尊重したくても、毎日のことだと正直めんどくさい!ってなるのもよくわかる。

例えば、外に出かけたり、面会者があるとか、何かの機会にそのような服を着るのはわかるが、この人だって、若い頃自宅でくつろぐ時に常に同様の格好をしていたとは考えにくい。

このように、理想やあまりにも本人視点を重視しすぎると、逆にその側のことが見えなくなってしまい、裸の王様のようになってしまうことがあると思います。

介護する側もされる側も、それを取り巻く側も、全体を俯瞰して、必要なこと、大事にすべきこと、諦めること、今に合わせること、ってとても重要だと思います。