大学の同級生からのその電話は、西川が亡くなった、という事だった。
西川も、大学の野球部で一緒に汗を流した仲間である。
3年の時に、リーグ優勝、大学選手権で、全国制覇を達成した。
その3年の春、首位打者に輝き、日米大学野球にも選ばれた。
その後、彼は社会人野球のヤマハに進む！
そこでも、全国制覇を成し遂げている。
引退後は、コーチや監督を経験し、その時も、都市対抗野球に何度か出場している。
彼が監督時代、時間があったら教えに来て欲しいと、頼まれた事があった。
少しでも力になりたく、二つ返事で承諾した。
彼は、頑固で真面目、余計な事は一切言わない。
指導の仕方も、緩みがなく、聞いているこちらが苦しくなる時があった。
これについて話しあった事がある。
しかし、これは俺の性格だから仕方が無いんだ。
自分でも分かっているが、どうにも出来ないのだと言う。
なんとも実直で、心配になるくらいだが、この真面目さ、信念が通じれば、選手は伸びるなと思っていた。
彼の指導で、何人かはプロで活躍することになる。
奥さんにもお逢いした。
最後まで弱音も吐かず、子供達に遺言でも残す？
と話したらしいが、考えた末、何も残さず旅立った。
余計な事は昔から言わない！
酒が好きで、息子にも、看病した帰り際に、帰ったら美味くビールでも飲めよ。
これが最後の言葉になったらしい。
人は、使命を持って生まれて来る。
彼は、使命を全うしたのだろうか？
昨日、昔からの友人が来て、野球談義になったらしいが、まだまだ欲を持ってたらしい。
しかし、俺は充分な事をしたと、私は思っている！
欲を持てばキリがない、彼は多くの人に野球の素晴らしさを教えた。
また、野球を通して、素晴らしい人間も作り上げたと感じている。
奥さんが言った。
死に際まで、何にも言わず、気丈に一人で逝ってしまいました…！
ゆっくり休め！
富士山より高いところに旅立った友よ…！