商店街小僧 | 夢酔録

商店街小僧

人気(ひとけ)の少なくなった商店街のアーケード




垂れ下がった風除けの古びたビニールカーテンに軟式ボールを当ててはグローブでキャッチ

飽きれば店のテントに投げ上げ転がり落ちる先を予測してキャッチ ボールは泥や煤にまみれてたちまち真っ黒

 今度は横の布団屋さんの立てかけてある一枚板の台を目がけてピッチング練習 当ててはゴロをキャッチ 当ててはゴロキャッチを飽きもせず繰り返した

 雨の日や人通りのある日は店内に吊るされた商品のひらひらした紙の値札をピシッとシャドーボクシングの真似事

店が忙しい時間帯は狭い店の二階の四畳半の部屋で弟と二人 大きな箱いっぱいに入ったウルトラマンやゴジラ ガメラ 怪獣やタイガーマスク仮面ライダーソフビなどの玩具を広げて…

ご飯はお客さんが来ないうちにかきこむように 食器洗いや片付けが終れば母と私と弟は先に少し離れた家に帰って風呂の用意や洗濯物を取り込む母の手伝い 父は店を片付け帰宅 風呂からの晩酌 祖父が風呂に一番に入り店の二階に帰る。

繁盛店だった

目が回る忙しさだった

裕福だったが自由はなかった

身体の不自由な弟

忙しい店

休みなく働き続ける両親 祖父 曾祖母もいた(声が思い出せない)ロボットのソフビ買ってもらった 今でも形記憶する今ならパチやけどかっこよかった

安もんやけどお気に入りやった

 箪笥の引き出しに食べかけのアンパン隠してた 格好のネズ甚八の… 

葬式は田舎やった

土葬やった

田舎や親族のしきたり 風習 親戚づきあい 年に何回もあった誰かの葬式 法事 結婚式

光化学スモッグ 朝礼台に旗が立つ 

工場だらけ でかいのはサイレンうるさい 溶接に使うエチレンガスの匂い 空き地に土管 野良犬たちや浮浪者(差別用語なのか?)との陣取り合戦 

前のパチンコ屋の客は負けた腹いせに玉をショーウィンドウに当てよった

 馴染みのアベさんというおっちゃんはピストルのおもちゃ買ってくれた

今から考えたら いつも目は笑ってなかった

高い買い物して 上得意になって 借りては返して信用作り 子ども手なづけ さらに高い買い物して ある日飛んだ

 父も祖父も責任をお互いに…

どっちもひとがよかった

家では機嫌悪い家族 

商売人(おとな)は嫌な人種だと心から思った

サラリーマンも同じで

そう(不機嫌)なるには理由があると自分もおとなになるとわかる

 そして自分はその店にいる

今年で店は60年 

私は還暦まで2年

ボール遊びもシャドーボクシングも腕が痛くてできない

膝も足首も痛いが暇になれば片付けと値付け

野良犬たちはいない

今のところ平和な日々

商店街には理事長不在 秩序はなくなっても事件はなし

良くも悪くも刺激なし

救急車来たら人が集るが珍しくもないほどの高齢化

ドック(造船)が盛んだった頃と変わらないのは得体の知れない外人がうろついていること

私はあの頃親父が駆使していた以上?の根性英語で会話している!?


鳴門の先輩に会いたいです!