雛形から決定権を譲られた矢島は臆することなく言った。
「5億!?」
高田が驚いてしまった。
「・・・ちょっと5億は高すぎませんか、雛形さん。」
嶋田は雛形にたずねたが、
「いや、今回の件は矢島君に全て任せたから、オレがどうこう言うことじゃない。」
「・・・そうですか・・・矢島さん、それで今回の件は全て終わりにしてくれますか?」
「ああ。当然だ。」
「わかりました。じゃあ、飯島に運ばせますので、手錠外してやってもらえますか・・・」
嶋田の頼みに従って、矢島は飯島の手錠を外した。
腫れ上がった顔で、飯島はヨタヨタと奥の部屋に向かった。
「トモ、雄二、手伝ってやれ。」
原田が二人に指示した。
飯島が奥の部屋の鍵を開け、中に入って驚いた。
札束が入った紙袋が無数に積み上げられていた。
「うげーー!飯島ちゃん、これ全部で幾らあるの?」
トモがおちゃらけて斉藤に話しかけた。
「1袋1億。全部でだいたい200袋。」
「200億!雄二、いくつか持って帰ったってバレないぞ!」
飯島から渡された5つの袋以外に持って帰ろうとしたトモを飯島は睨んだ。
「冗談はもうやめて、さっさと帰ってくださいよ。」
飯島はトモに向かって冷たく言った。
「あーやだね。冗談が通じないヤツは。雄二、お前3つ持て。」
トモと高田は両手に袋を持ち、雛形たちがいる部屋に戻った。
「社長、いただいてきました。」
「よし、じゃあ帰るか。嶋田君、今回のことはお互いこれで終わりだ、いいね。」
「雛形さん、わかりました。ありがとうございます。」
嶋田は深々と頭を下げた。
5億円という大金を抱え、一行はエレベーターで駐車場のフロアへ降りた。
「いやー矢島君、今日は本当にありがとう。助かったよ。高田君もお礼して。」
雛形が言った。
「はい、矢島さん。本当にありがとうございました。」
「おう、雄二、またなにかあったら言ってこいな。」
「じゃあ、矢島君これ持って帰って。」
雛形はそう言うと、紙袋3つを矢島に持たせた。
「いや、雛形さん、これはもらいすぎですよ。」
「いやいや、うちの大事な従業員を助けてくれたんだ。車も潰させてしまったしね。」
「そうですか、じゃあ、お言葉に甘えて。」
「おお!矢島儲けすぎだぞ!今度奢れ!赤羽のありさちゃんのところ連れてけ!」
トモが会話に入り込んだ。
「わかったよ、今度な。では、雛形さん、原田さん、ありがとうございます。」
矢島はそう言うと、フロントの潰れた車の助手席に紙袋を投げ込み、走り去った。
「じゃ、帰るか。」
雛形の一言が、高田を悪夢の晩から解放してくれた。
「あ、そうだ雄二。渡邉のほうはどうだった?」
原田の言葉ですっかり忘れてた潜入調査の成果を思い出した。
渡邉と焼肉を食べたのが何日も前のように思えた。
