前回の記事では、ノーマルシリンダーヘッドのままボアアップすると、圧縮比が極端に高くなるという事実が判明しました。
今回は圧縮比を適正範囲にするためにどのシリンダーヘッドを使用するか検討します。
手始めに候補を挙げてみます。200ccにボアアップしたいのでその周辺の排気量から選択します。
①CBF125/CBF150 200cc化シリンダーヘッド(バルブはギフト)
早速これらを使用した場合の圧縮比を算出したいところですが、CB125Fのシリンダーに載らなければ使えないのでまずは適合を検証します。
①CBF125/CBF150 200cc化シリンダーヘッド
CBFシリーズ用のシリンダーヘッドであるため、スタッドボルト孔の間の距離は同じであり、物理的には載るといえます。
しかし、CBFシリーズはキャブレター仕様です。そのため、CB125Fのシリンダーヘッドに存在するO2センサー、油温センサーの受けが存在しません。また、インテークマニホールドの穴の形、サイズも異なります。
CB125F シリンダーヘッド・・・(A)
9がO2センサーで、10が油温センサーです。O2センサーの受けも図示されています。
CBF125 Stunner(2008 キャブ仕様) シリンダーヘッド・・・(B)
CB125FにあったO2センサーの受けがありません。
CB125F インテークマニホールドおよびスロットルボディ・・・(C)
(B)の12は(C)の12にあたります。両者ともボルト孔はM6のようです。上記の商品のボルト孔もM6という記載があります。
手前側のボルト穴のほうが奥のそれより高いところにあるということは共通していますが、両者で角度が異なっているように見られます。穴の形は違いますが、サイズに関してはこの画像では相違しているとも一致しているとも言い切れません。
センサー受け、インテークマニホールドの相違を解決すれば、CB125Fのシリンダーに載せることも可能といえそうです。
スペアとして所有しているCBF125 Stunner(2008)のエンジンの該当部分を確認してみます。
CB125FにおいてO2センサー、油温センサーが存在する場所の写真です。穴こそ空いていませんが、キャブ仕様なのにCB125Fのセンサー受けと同じ形の出っ張りがあります。
インテークマニホールドのエンジン側です。穴径は21mmです。CB125Fにおいてここに相当する部分は内径20mmだったので、穴のサイズは適合範囲内といえるでしょう。
しかし、ボルト孔の位置に関しては工夫を要しそうです。FI(CB125F)だと横方向に隣り合っていますが、キャブ(Stunner)だと縦方向に隣り合っています。
(余談)
キャブ仕様エンジンにFI仕様特有のパーツのベースがあることについてですが、この時期のこの形式のエンジンは、キャブ仕様として生産されるものとFI仕様として生産されるものが混在していたのでしょうか。または、近くFIへの移行が予定されていたのかもしれません。
実際に、ホンダのパーツリストサイトを見ると、2008年にはキャブ仕様のCBF125 Stunnerしか存在しないのに対し、2009年にはFI仕様のCBF125(Stunnerでない)が存在します。パーツリストにキャブレターではなくスロットルボディが載っていました。
パーツリストサイトでCBF125 Stunner(2008)のシリンダーヘッドを確認すると、先程述べた出っ張りが存在しません・・・。まだFI仕様のシリンダーヘッドの図が作られていなかったのでしょうか。確かに機能をもっていない部分を描いても仕方ないでしょうから、納得できます。
私のスペアエンジンがFI移行の過渡期に製造されたものということは事実といえそうです。
物事の準備は早いほうがいいですから、FI化が決まった時点でその仕様の鋳型を作り、機能が同じであれば古いものを使う理由もないので早々に旧鋳型は廃棄されたため、2008年仕様のCBF125 StunnerにはFIにしかない出っ張りがあるのではないか、と勝手に想像します。
余談が長くなりました。話を戻します。
CB125F純正シリンダーヘッドならば赤丸の部分に各センサーの受けがあります。
上記の商品にも同じような出っ張りがあれば両センサーの径、ピッチに合わせてタップをたてることでセンサーを接続することができますが・・・、残念ながら存在しないようです。冷却フィンに穴を開けると様々な不具合が出てきそうなので、両センサーの移設を考えます。
O2センサー:
エキゾーストパイプに移設しようと思います。
キャブ仕様のバイクにA/F計を取り付ける際にはO2センサーをどこかに取り付ける必要がでてきますが、エキゾーストパイプに穴を開けて溶接しているケースをよく見ます。
幸いにも溶接ができるので、純正O2センサーの径とピッチに合ったナットを溶接して移設します。
ホームセンターにてピッチを確認してきました。
径はM12でピッチは1.25のようです。
このサイズのナットも併せて買ってきました。削って寸法を併せて溶接します。
油温センサー:
ドレンボルトに移設しようと思います。
純正油温センサーの径はM10、ピッチは1.25でした。ドレンボルト(90131-KRM-840)は径M12、ピッチ1.50です。
ドレンボルトの部品ページに載っている適合車種、CG150 TITAN(Brasil)はCB125F(China/EU)とほぼ見た目が同じで、エンジンも同じです。しかしクランクケースなどは共通部品として表示されません。ドレンボルトを手がかりになにかわかるかもしれません。BROSもCB125Fから派生したような見た目のオフ車で、エンジンは同じようです。両車種ともインスタグラムでよく見ます。とくにTITANのほうは2021年にCG160 TITANがリリースされたようで、エンジンはCB125F(2021)と共通しているようです。
以上の条件で探すと、このような商品がありました。
センサー取付部R1/8・・・?この規格は初めて見ました。調べてみます。
モノタロウにて説明されていました。
要所をかいつまんで記述すると、Rは"テーパーねじ"を示し、1/8は接続するパイプの内径だそうです。詳しいことは放っておいて、今回の判断に関係するのは"R"です。CB125F純正油温センサーは以下の画像の通り、ネジ形状が平行であり、テーパーではありません。モノタロウの説明によると雄ねじの外径(9.728)はM10のそれ(理論上は10.000)に近そうですが、そもそもテーパーねじではないので残念ながら上記の商品は適合しなさそうです。
どうやらアダプターを自作する必要がありそうです。
M12、ピッチ1.5のドレンボルトの中心にM10、ピッチ1.25のタップをたてればよさそうですが、中心を出すのに苦労しそうです。これに関してはまたの機会に考えようと思います。
なんにせよ、どうにか油温センサーの移設はできそうです。
この商品に限らず、同じ仕組みのドレンボルトの取り付け例を見てみると、ECUへ信号を送るためではなく、単純に油温計を設置するために使用している例が多い印象でした。
油温センサーの位置が違えば、ECUに送信される温度情報も従来の位置におけるそれとは異なるかもしれませんが、これはやってみて不具合が出たら他の場所に移設を考えようと思っています。ドレンボルト以外だとエンジン本体に孔を開けてタップをたてる必要がでてくるため、できれば避けたいです。
インテークマニホールドの穴:
CBF125 Stunnerと同様にボルト孔が横方向ではなく縦方向に隣り合っています。
インテークマニホールドとの接触面積が十分に大きければボルト孔を横方向に隣接するように開け直そうと思います。
接触面積が不足する場合はインテークマニホールドおよびスロットルボディの角度を変えて対処できればと思います。
以上より、このシリンダーヘッドはどうにかCB125Fに適合しそうです。
思ったより記事が長くなってしまったため、今回はここで終了します。次回、CB190R純正ヘッドの適合を検証し、適合したヘッドを使用した場合の圧縮比を計算します。