ISPは"Innovation in Sounds Philharmonic"という正式楽団名の略
11月10日19時10分開演、大田区民ホール・アプリコにて
指揮: 田中健
演目: 「ジュピター」、「威風堂々」全5曲、組曲「火の鳥」1919年版
開場時間の10分ほど前に会場に着いたが、開場を待つ人の数が少なかった。人数は演奏会場に入ってからも少なめで推移。私はこれに対し、これまであちこちのアマオケを聴いてきた経験から考えると、上手な演奏をする団体なのではないかと推測した。舞台から10列ほどの客席はかぶりつき席を除くとほぼ空席。2階以上を閉め切ったうえでの一階席は全体で5割前後の入りだったろうか。そして推測は当たり、演奏は大いに楽しめた。以前に「もったいない演奏会」として紹介した体験の時と同じになった。
「ジュピター」は意表を突くようなゆったりしたテンポとソフトな歌いまわしで始まり、指揮者の意図が行き届いた、統制の取れた演奏だった。エルガーのマーチは聴き慣れた第一番こそうきうきしたものの、同じ作曲家のマーチを5曲連続で聴くと少々辛かった。しかし最後の火の鳥はメリハリが聴いており、この日で一番感銘を受けた。これまでに聴いた何回かの演奏で私が持っていたこの曲の印象を、良い方向に更新して頂けた。恐らく一番練習されていたのでは。もちろん指揮が的確だったこともあるのだろう。
この楽団の変わった名称は、音楽を通して新しい「価値視点」を実験する楽団であることに由来しているらしい。演奏会は練習成果を発表する場ではなく、聴衆とともにホールに響く音楽と緊張感を共有し、最後の「実験」をおこないたい、と語る団長挨拶を読むと姿勢が見えてくる。この団の新しい価値視点とは、アマオケの中で「当たり前」と言われる事に対し、新たな角度からの視点(着想)を指し、実験とは失敗も考慮の上、着想を行動に移すことを意味します、とも書かれており、どこか不明瞭ではありながらも、とても結構な姿勢である、と共感を覚えた。今や形式化、硬直化が見られるクラシック音楽の演奏会の在り方に一石を投じるものであるから、今後も発信を続けていただきたいと思った。アマチュアだからこそ発信できる事柄に違いない。
但しこういう考え方が演奏の醸し出す響きに反映されていたとは思えないし、この日の客の入りと無関係であって欲しいとも思う。
開演前の舞台に団員が三々五々現れ思い思いの練習をする。そして舞台に照明が当たると静まり指揮者が出てくる。これは他の演奏会でアメリカンスタイルと呼ばれていたように思うが、緊張の本番に突入する前の良い前段階ではないかと感じた。これが新しい「価値視点」なのかな。
アンコール無し、というのもはっきりしていて良いのではないか。但し、これには聴衆側の主体的反応も要請されるだろう。良かったのならそれに応じて称賛する、それほどでもなかったらさっさと拍手を止めて席を立つ。こんな感じになったらいいな。あわよくばもう一曲聴けるから、と思って形式的に最後まで手を叩き続ける習慣は無くなって欲しい。