ふたつのオリンピック ロバート・ホワイティング著 玉木正之訳 角川書店 | takacciの「見た・観た・聴いた・読んだ」

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音楽に関すること、観たこと、読んだことへの感想などを書いていきます。(文中敬称略) 2019年4月より別サイトで掲載していた写真の記事も同居させましたが、20年7月に元に戻しました。

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副題: 東京1964/2020

とてもとても面白い本だった。私はこの著者を「菊とバット」、「イチロー革命」などの日米プロ野球の違いに着目した、スポーツ分野の書き手なのかと思っていたのだけど、実際は「東京アンダーワールド」という闇世界をリポートするなど、一歩どころか何歩も日本の実態に踏み込んだ記事を書く、独特の視点の持ち主だということを知った。

 

表題・副題に拘らず、本書の内容はアメリカの小さな町で生まれてから現在に至るまでの、著者のざあっとした自伝とも言えるものであるが、その大部分を占めてメインとなるのは、若くして府中のアメリカ軍基地に赴任し共産勢力を相手とする諜報戦に携わりながら、東京での生活にどっぷり浸かって行き、当初は在日アメリカ軍の一員として、そして除隊後は英語教師をしながら、戦後間もない東京とその後の変化に立ち会って目にした、私から見ると驚天動地の体験の物語だった。

 

私がさえない少年時代を過ごしていた東京に於いて、実はこんなことが起きていたのだ、とびっくりすることが実に次から次へと書かれていて、読み始めるとなかなか止められないくらい引き込まれた本だ。

そうは言っても何が面白かったのか全く伝わらないだろうから、面白いと思ったトピックを幾つか挙げてみる。

・府中の米軍基地が携わっていたU2
偵察機の情報と偵察戦の実態
・米軍の同僚から得た戦後間もない焼け跡の東京での生々しい実態
・A級戦犯をアメリカに協力するという契約のうえ開放した話
・子供用書籍に「力道山物語」という美談を描かれたほどの男の無軌道な暴れぶり
・赤坂・六本木辺りにあった数多の高級ナイトクラブの裏話

 

訳者あとがきまで入れると全590ページ。原文英語のセンテンスの長さを踏襲したように一つひとつの訳文が長く、読み易い日本語というわけではなかったし、話題が著者の想いに沿って何度も前後する。中には客観的に見て現実と思いえない数字も出てきた。しかし、そんなことが気にならなくなるくらい夢中になって読んだ。

終盤に現在の生活について書かれており、我が家の近くにお住まいと分かった。そのうち岸辺をジョギングするご夫妻を見掛けることが出来るかもしれない。