随分読み続けてきた池田晶子の著作だが、この本を読んだのはこれが著者の逝去(2007年2月)のあとに(6月末)出版された本だから。これまでも著者は「人は死を恐れるが、死を語る人だって死んだ経験のある人は居ない。死について知っている人は居ないのであり、それが恐ろしいことなのか、或いは気持ちの良いものであるのか、分からないのである。だから死を恐れる理由はないのである。」という論旨で語ってきていると思うのだが、(私は彼女のそれがどんな形で到来したのかを知らないのだけれども)死が迫っていた時期の著作を読んだらそれに対する姿勢に変化が出ているかもしれないと思って読んだのである。
しかしそういう変化は感じられなかった。
これまで読んできた彼女の著作との違いは語り口の変化だろう。より直接的に彼女の思う「本質」が語られていたように思う。これまでに彼女の著作を読んできた方で「いまいち言っていることが分からない。」という気持ちを持っている人は、この本も読んでみたら良いのでは、と思う。
と言っても、どうしてそういう結論になるのか分からない、或いは質問してみたい、という点は多かった。例えば死の恐怖について。人は死んだあとより死に至る直前の苦しみが怖いのではないかと思うのだが、このことに彼女が言及した文章を読んできていても書かれているのを見たことがない、と記憶している。こういうことは形而下の問題なのだろうか。
私はこのように感じる箇所は、この本でも結構多かった。
平明な言葉のみで普遍を語ろうとするこの著者には、もっと生きて考えを語り続けてほしかったなあ。