この巻で扱っているのは明治以降戦後に至るまでの演劇と批評の分野。
歌舞伎に関し新しい時代の台本がじり貧となっているのがよく分かった。
また著者が書いている通り歌舞伎は実際に舞台を観て評価すべきものであって、台本の出来不出来を大々的にどうこう言っても仕方がなさそうだ。それにしても現代に至るも登場するのが相も変わらずサムライや町人というのを見るにつけ、歌舞伎は保存的演劇形態なのかと心配になる。話はそれるが、読んでいると著者は歌舞伎見物が好きそうだと思えた。
先日ニュースで紹介されていたスーパー歌舞伎では人気アニメを元として過激で面白そうな舞台を創造しているようだったが、大衆演劇の一つとしてこういう方面にすそ野を広げ、将来も人気娯楽の一分野であって欲しいと思った。保存すべき古典芸術として生き残るのでは先細りしていく?
新派・新劇の誕生とその後の発展にも言及されており参考になった。
批評に関しての紹介も面白かったが、私が読んだ限りだと戦前までの批評家の論争というのは互いの体面を掛けて怒鳴り合う、という感じであり、そうでない建設的な批評も有ったに違いないと思うものの、先輩作家が有望な新人を高く評価し、活躍の場を提供して育て一派をなしていく、そしてそれを非難する別の一派と論争するという図式が基本だったようにも読めた。
批評の最後は小林秀雄の紹介で終わっている。学生の頃何冊か読んでちんぷんかんぷんだった苦い思い出がある批評家なのだけども、彼の著作は戦後だったかある時期以降難解で高踏的な内容が影を潜めて読み易く変化した、と書かれているので今度目を通してみようと思う。
なおキーンの日本文学史はこれにて読了、と行きたいところなのだが、近代・現代篇八をもう一回読み直しているので読了はまだです。