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『2016年第一四半期を振り返る(前篇)①』三橋貴明 AJER2016.4.19(9)

https://youtu.be/ZSEfc-5PXhY
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 国家の経済力とは何なのか


 国家のおカネの量ではありません。国家のおカネの量が経済力だというならば、日本銀行に10京円分の紙幣を印刷してもらいましょう。わたくしたちの手元に10京円分のおカネが配られたとしても、それは同時に日本銀行の負債になるので、国家全体では「国民の10京円の現金」という資産と、「日銀の10京円の現金」という負債が相殺され、ゼロになってしまいます。


 ならば、国家が外国に保有する資産(対外資産)と、外国が自国に保有する資産(対外負債)の差額である対外純資産の金額でしょうか。対外純資産が多い=経済力があるという話になると、
世界で最も経済力があるのが日本。最もない(対外純負債が多い)のがアメリカ
 という話になってしまいます。


 そんなわけは、ありません。


 国家の経済力とは、おカネの量ではありません。モノやサービスを生産する力、国民経済の供給能力(潜在GDP)のことです


 特に、非常事態が発生した際に、「経済力」の有無が大きく意味を持ってきます。発展途上国が自然災害からなかなか復興できないのは、別におカネがないためではありません。モノやサービスを生産する力、経済力が不十分であるためです。


 要するに、経済とは国家全体の供給能力が、国民のモノやサービスに対する需要を満たせるか否かで決まってくるのです。分かりやすい例を出しておくと、「水と食料を供給できるのか、否か」ですね。水や食料を国民に供給できない経済は、間違いなく「失敗」です。


 経済が「失敗」した社会では、おカネや貴金属がどれほどあったところで役に立ちません。ちと古い例ですが、北斗の拳の第一話(でしたっけ?)ですね。水売りのヒャッハーお兄さんが、宝石で水を売ってくれと頼んできた人を足蹴にするシーンです。(肉を持ってきた人には、売る)


 そして、日常的に「経済力」が国民の需要を満たしていたとしても、大規模自然災害や戦争、内乱等の非常事態が発生すると、国家や地域は「経済の失敗」に追い込まれます。熊本・大分地震により、日本各地にモノやサービスが溢れていたとしても、被災地に届けることができない。理由は、「交通インフラのサービス」が破壊され、現地に「運送サービス」を供給できなくなってしまったためです。


 自然災害が発生した際に、可能な限り各「経済力」を維持する。つまりは、家屋や施設の倒壊を防ぎ、交通インフラやライフラインを維持し、被災者に物資を届けることを可能とする。インフラやライフラインが破壊された場合は、速やかに復旧する。


 我が国は、「非常事態」発生時をも含めた経済力を強化していかなければ、国民が生き延びることができない国土の上に存在しているのです。非常事態をも含めた経済力の強化こそが、藤井聡先生が提唱された「国土強靭化」の思想なのだと思います。


 それにしても、熊本・大分地震という非常事態発生時に、運送サービスの一端を握ったオスプレイ使用や、電力供給の要である川内原発稼働に猛反対する「連中」が出てきたのには、驚いてしまいました。


 阿蘇大橋が落ち、しかも陸自の大型輸送ヘリがフル稼働してすら、被災地に十分な物資を運び込むことができませんでした。非常事態時における物資の「空中輸送サービス」は、我が国は不十分だったわけです。


 不足した運送サービスを補うために、米軍のオスプレイに支援してもらったことが何が問題なのか、さっぱり分かりません。オスプレイの使用に反対する人は、代替案を提示しない限り、被災者に「苦しめ」と言っているのも同然です。


 しかも、オスプレイ投入に反対しているのが、「自分は物資が豊富で安全な場所にいる」東京の連中なわけですから、中谷大臣が怒るのも分かります。


左派系メディアの執拗なオスプレイ批判に温厚な中谷防衛相がイラッ「全力でやってますよ!」 記者会見詳報
http://www.sankei.com/politics/news/160422/plt1604220033-n1.html
「全力でやってますよ!」
 温厚な人柄で知られる中谷元防衛相が、22日の記者会見で気色ばむ場面があった。熊本地震の輸送支援に協力している米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの必要性を、共同通信や東京新聞など一部のメディアが執拗に追及。果ては災害支援に全力を尽くす陸上自衛隊の能力にまでケチをつけたためだ。記者会見の詳細は以下の通り。
 共同通信記者「オスプレイの必要性がどうしても理解できない。(中略)
 共同通信「なぜ陸上自衛隊は(大型輸送ヘリの)CH47をたくさん持っているのに、積載量の少ないオスプレイが必要なのか」
 中谷氏「当時の状況は全能力、持てるヘリを全て使って実施をしていたわけです。それ以上の所用があったということで、われわれとしてはできる限りの努力をしたということです」
 共同通信「3・11のような広範囲な大震災と違い、阿蘇地方、熊本地方という局地的な地震だ。そこでなぜオスプレイのような航続距離が特徴のものが必要なのか。航続距離は必要ない。非常に短い高遊原(分屯地)と南阿蘇地区の間をピストン輸送すればいいだけだ」
 中谷氏「当時は道路が寸断していました。また大渋滞で
した。そういうところに物資を届ける手段としては、航空機、ヘリしかありません。従って自衛隊の持ち得るヘリは全て投入して実施しておりましたが、当時の状況は水や物資が届かないという状況にあります。現実にオスプレイは、中山間の地域においてもそれを運ぶだけの能力があるので、実施が可能であると私は思ったので、米側と調整したということです」(後略)」』


 あるいは、川内原発です。


 熊本・大分地震において、薩摩川内市で観測された震度は最大で4でした。加速度にしても、8・6ガルが最大でした


 川内原発の基準値振動は、620ガルです。また、川内原発は160ガルの振動が発生すると、自動停止します。


 九州電力や関連会社の皆さんが、懸命に電力サービスという「胆」のライフラインを復旧させようとしている最中に、川内原発の停止を求める「政治運動」をやっているわけです。やはり、自らは電力が供給され、安全な東京で暮らしながら。


腐っている
 以外の感想が出てきません。


 エネルギー安全保障や「被災地救援」を無視し、オスプレイ投入や川内原発の運転に反対する連中も、「カネ!カネ!カネ!」と、震災が発生したにも関わらず、消費税増税を強行しようとする政治家も、共に腐っています。この手の連中が大きな声で間違った主張を続け、国民世論や政治が影響される限り、我が国は「亡国への道」を進まざるを得ません。


 非常事態が発生した際は、誰が本当の意味で「日本国」のことを考えているかが見えてきます。皆様も、本ブログで「経済力」の本質を新ためて考え、同時に「誰が、何を言ったか」を目を見開いて見て下さるようお願い申し上げます。


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