株式会社経世論研究所 講演・執筆依頼等、お仕事のご依頼はこちらから
三橋貴明のツイッターはこちら
人気ブログランキングに参加しています。
チャンネルAJER更新しました。
「日本はなぜ経済成長したのか(前半)」三橋貴明 AJER2024.6.4
令和の政策ピボット呼びかけ人に「独身研究家 荒川和久先生」が加わって頂けました。
【農家の人は注意!】罰金が課されるかも?日本で成立したとんでもない法律 [三橋TV第874回]三橋貴明・saya
https://youtu.be/SIyx8E7lne8
財務省はPB黒字化では飽き足らず、国債利払費を含む「財政収支の黒字化」に財政目標を変更していようとしています。普通に「狂ってる」と言って構わないと思います。
財政目標に国債利払費を含める(=財政収支の黒字化目標)ためには、
「これからは国債金利が膨張していく! 利払費も含めた財政目標を」
という印象操作をする必要がある。
だからこそ、今年3月の日銀のマイナス金利政策解除が昨年時点でリークされ(これ、アウトでしょ)、「金利ある世界」というレトリックが一斉に使われるようになった。
財務省にとって都合が悪いのは、現実の日本の国債利払費は、
【日本の普通国債発行残高・金利・利払費の推移】
http://mtdata.jp/data_89.html#ribaraihi
と、極めて低いことです。理由は、もちろん日本の国債金利が低迷を続けていたためです。
「あ、それ、もう終わりますから」
という理屈で、利払い費を含めた財政目標に転換したいのでしょうが、実はことはそう単純ではない。
極めて重要な、財務官僚の答弁ですので、必ずご視聴ください。
図の国債利払費は「粗」です。つまりは、日銀保有分の国債や、「政府の金融資産(※主に外貨準備)」に対する利払い費を考慮していない。
国債について「自国通貨建て」と「外貨(共通通貨)建て」を無視しているのと同じです。
当たり前ですが、
「利払い費が問題だ~っ!」
というならば、「=政府が支払う利払費-政府が受け取る利払費」で見なければなりません。当たり前でしょ。幼稚園児でも、分かるんじゃね?
家計にしても、住宅ローンの金利が月6万円、金融資産からの金利収入が月10万円だった場合、
「利払いが多すぎて破綻する!」
など、やらんでしょ。ネットでは、月に4万円のプラスじゃん。
日本は国債の半分を日銀が保有しているため、「国庫納付金」として日本に戻る国債利払費が2兆円強あります。加えて、政府の外貨準備(ほぼ米国債)へのアメリカ政府の利払費が巨額。
結果、ネットの利払い費は遂にドイツを抜き去り、G7諸国で二番目に少ない(一番はカナダ)という状況になってしまいました。
『(財務官僚の答弁を引用)お答え申し上げます。OECDが本年5月に公表いたしました、最新の経済見通しによりますと、G7諸国の2022年のネットの利払い費の対GDP比について、日本は0.28%、カナダが▲0.36%、ドイツが0.48%、フランスが1.89%、米国が2.98%、イタリアが4.01%、英国が4.02%となっておりまして、G7諸国の中で二番目に低い値になっています。』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
特別コンテンツ「三橋貴明×宇山卓栄:日本人はどこから来たのか(前編)」がリリースになりました。
https://keiseiron-kenkyujo.jp/apply/
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
何しろ、国会で財務官僚が答弁したわけですから、これは決定的です。
ちなみに、カナダのネットの利払い費がマイナス(金利収入の方が多い)になっているのは、債権(恐らくはほとんどが米国債)からの上がりに対し、カナダ国債への利払費の方が少なくなっているためでしょう。
いずれにせよ、日本のネットの利払い費は対GDP比0.28%。日本の利払い費を問題視する前に、
「アメリカの心配をしてやれよ!」
なのでございますよ。ちなみに、日本のネットの利払費が低いのは、アメリカ様が米国債の金利を日本政府に払って下さっているのも、理由の一つです。
G7諸国のネットの利払費については、永濱利廣先生が各所で講演されており、ようやく自民党の積極財政派にも浸透し始めています。
【あるべき経済財政運営~変わる財政政策の考え方】
https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2023/1116_07.html
この「ネットの利払費」の概念が知れ渡ってしまえば、「国債利払が~」という財務省のプロパガンダは「オシマイ」となります。
とはいえ、知られていない場合・・・。
『日銀は「円安抑制」と「金利安定」どちらを優先するのか 国債の買い入れ減額決も難しい舵取り
日銀が長期国債の買い入れを減らすことを決めた。ただ、円安進行をより強く阻止するために、国民生活に悪影響を及ぼす追加利上げには踏み込めない状況。金融政策の正常化への道のりは容易ではなく、日銀の手探りは今後も続く。(後略)』
この手の「円安を利用した利上げアピール」を繰り返し、
「これからの政府は国債利払で大変なことになるんだ・・・orz。財政収支を目標にしなければ」
という世論醸成と世論誘導を財務省がひたすら展開してくることになるでしょう。
つきましては、与野党の積極財政派の皆さん。是非とも、「財務省の国会答弁」を繰り返し活用し、そもそも「国債利払費」を問題視しようとしている財務省は頭がおかしい、という事実を国会議員や国民に周知して下さいませ。
もう一回言いますが、政府の利払費を問題視するなら、日本ではなく「アメリカを問題視しろよ!」なのですよ。あちらは、こちらの10倍だぞ!