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『グローバル化疲れ(後編)①』三橋貴明 AJER2018.1.30
https://youtu.be/zTZAffiW9yU
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3月4日に総選挙が行われるイタリアでは、中道左派の民主党(与党)、中道右派連合、五つ星運動と、三つ巴の争いになっています。
現時点では、ベルルスコーニ元首相が率いる政党を中心とする中道右派連合が若干、リードしているようです。もっとも、過半数に届かないのも確実と言われています。
移民問題に対する姿勢を見ると、中道右派連合が「移民制限」、民主党は「容認」。五つ星運動は態度を決めかねている、といったところです。
大変、興味深いのは、イタリアでも「国(イタリア)の借金」が問題視されており、日本さながらに「借金時計」までもが登場している点です。
『イタリア総選挙、甘い公約に潜む「財政債務の時限爆弾」
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/02/post-9549.php
「すべての約束は借金です。よく考えて」──。ローマやミラノの主要駅を訪れると、巨大な「債務時計」の下にこうしたメッセージが掲げられている。
シンクタンクが設置したこのデジタル時計は、現在2兆3000億ユーロに膨らんだイタリアの債務をリアルタイムで表示。3月4日の総選挙に向け、減税や歳出増加といった甘い約束をする政治家にだまされないよう有権者に呼び掛けている。
イタリアの債務比率は国内総生産(GDP)比132%と、ユーロ圏でギリシャに次いで2番目に高い。2011年のような債務危機が再来すれば、もろい立場にある。
アナリストによると、世論調査でリードしている中道右派連合の公約が最も浪費的で、大幅な減税と公的年金および社会福祉費引き上げの組み合わせとなっている。(後略)』
重大かつ決定的な「事実」ですが、イタリア政府が債務不履行(デフォルト=財政破綻)に陥る可能性はあります。
何しろ、イタリアはユーロ加盟国であり、独自通貨国ではありません。イタリア政府は借り入れたユーロについて、中央銀行の国債買取で「対処」するわけにはいかないのです。
ちなみに、五年前は5%に近かったイタリア国債(十年物)の金利は、現在は1.97%と2%を下回っています。
インフレ率は1.5%を下回り、失業率は二桁。特に、若年層失業率は40%近くにまで高騰しているのが、現在のイタリアです。
本来であれば、イタリア政府は普通に国債を発行し、雇用対策を打ち出すべきです。ところが、例によりイタリアもまた緊縮財政。
マーストリヒト条約により、イタリア政府は債務対GDP比率の引き下げを欧州委員会から要求され、緊縮財政を強行。国民の雇用や所得を犠牲にするにも関わらず、状況が好転しないという悪循環が続いていました。
と言いますか、若年層失業率四割の国が緊縮路線を突き進み、状況が好転するはずがないのですが。
、
というわけで、今回の総選挙において、各政党ともに、
「財政緊縮路線は失敗した、これからは成長が鍵を握る」
という認識では一致しています。
緊縮財政の転換ということで、たとえば中道右派連合は個人・法人の所得税率の引き下げなどの公約を打ち出しています。また、五つ星運動や民主党も、減税と支出拡大。
既存政党がこぞって「財政拡大」を訴える中、例によりシンクタンクや経済学者、エコノミストたちが「警鐘」を鳴らしており、日本同様に、ローマやミラノといった主要駅に「債務時計」が掲げられている、という話なのでございます。
もっとも、イタリアと日本が決定的に違うのは、日本政府の財政破綻はあり得ない(負債が100%日本円建てであるため)ものの、イタリアはあり得るという点です。それはまあ、イタリア政府は勝手にユーロを発行することはできませんので、当然ながらデフォルトの可能性はあります。
とはいえ、この種の「日本とイタリアの違い」について無視し、イタリア政府が財政危機に追い込まれた際に、
「イタリアは破綻した。日本の状況はイタリアよりも悪い。日本も破綻する」
と、やってくるのが、日本の財務省をはじめとする財政破綻主義者たちのテンプレートです。
日本とイタリアは違う。日本政府の負債は100%日本円建てで、「子会社」の日銀が買い取れば実質的に返済負担が消滅する。イタリアの場合は、同じことができない。
この当たり前の「事実」だけでも、日本国民はあらかじめ共有しておく必要があると思うのです。イタリアにはありますが、日本に「国の借金問題」などありません。
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