映画予告編

 

本編3分

2018年公開の米国映画。

実力派俳優ホアキン・フェニックスと「少年は残酷な弓を射る」のリン・ラムジー監督がタッグを組み、第70回カンヌ国際映画祭で男優賞と脚本賞をダブル受賞したクライムスリラー。

退役軍人のジョーはFBI捜査官として働いていたが、PTSDと鎮痛剤への依存が原因で職を辞さなければならなかった。その後、彼は行方不明の女児を捜す仕事で生計を立てつつ、ニューヨークで老母と一緒に暮らしていた。

シンシナティから帰宅したジョーは仕事を仲介したエンジェルから報酬を受け取ると、雇い主であるジョン・マクリアリーが会いたいと言っていると伝えらえる。

ジョーはマクリアリーの下へ向かう。マクリアリーはアルバート・ヴォット上院議員の10代の娘ニーナの救出をジョーに依頼する。

ニーナは家出してからというもの、その行方が全くつかめなかったのだが、ある日、議員の下にニーナが売春宿で働かされているという情報が入ってきたのである。

議員は一刻も早く娘を救出したかったのだが、選挙中にその事実を明るみに出すわけにはいかなかった。

ジョーは躊躇することなくその依頼を受けることにする。FBI時代、人身売買されている女性たちを救えなかったという経験がジョーにあったからである。

ジョーは「救出したニーナを深夜のモーテルで貴方と引き合わせる」と議員に伝える。

ジョーは売春宿に張り込み、情報収集を行う。

ニーナは建物の最上階にいることが判明したが、そこにたどり着くのは困難であった。しかし、ジョーは強行突破の道を選ぶ。ジョーは道中に遭遇した警備員と買春客を次々と殺していく。ニーナを救出したジョーはそのまま議員と約束したモーテルへと向かう。2人がモーテルの部屋で議員を待っていると、テレビのニュースで「ヴォット議員が自殺した」との速報が流れる。

その直後、警官たちが部屋に乱入してきてニーナを連れ去っていく。彼らは汚職警官で、1人の警官がジョーの見張りにあたっていたが、ジョーはあっさりと彼を殺して脱出する。

ジョーはマクリアリーの自宅に向かったが、そこに彼の姿はなかった。銃と鍵束を持ち出したジョーがマクリアリーのオフィスに入ったところ、彼の惨殺死体を見つける。ジョーはエンジェルに危険が迫っていることを知らせようとしたが、時すでに遅かった。

エンジェルは息子ともども殺害され、さらにジョーの母親も殺されてしまう。母親を殺したと見られる男から、ニーナを連れ去って関係者を殺したのはニーナを買っていたウィリアムズ州知事であると聞き出す。

一挙に全てを失い、自らも死のうとしたジョーであったが、彼にはまだ守るべきものがあった。それはほんの一瞬の間に芽生えたニーナとの絆である。ニーナを救出するためにウィリアムズを尾行したジョーはウィリアムズの屋敷に侵入して護衛を次々と殺していく。

ところが、その先で目撃したのはニーナに喉を切られて死んでいたウィリアムズの姿であった。ニーナを連れ出したジョーはニーナとダイナーで休む。行き先のない2人だったが、「今日はいい天気」と言ってダイナーを後にする・・・(*^_^*)

幼い頃に受けた虐待、戦場体験によるPTSD、慢性的不眠症、等々、日々朦朧としながら暮らす主人公、ジョーだが、生業にしている失踪者捜索を邪魔する刺客が現れると、一気にやる気が沸点に達し、相手をハンマーで殴り殺してしまう。その緩急の落差が最大の見せ場とも言えるのだろう。

ホアキン・フェニックスが疲れ切った表情と完璧な肉体を時折鏡に写しながら演じる夢遊病者のような人物造形は画期的。噴出する血液の量も半端ないクライム・サスペンスは、同時に、現実と幻覚の境目を取り払い、観客を全く別のジャンルへと運び去ろうとする。

時折、心に表れる小さい頃のジブンは、今のじぶん/自分を苦しめる。でも捨てることはできない。自分の一部だから。

少女に“ジブン”を重ね、少女を救うことで“ジブン”を救った。あの頃クローゼットで泣いていた何も出来なかった弱い“ジブン”がいなくなった。そこから見える景色が変わり、見たことのない景色=美しい日が訪れたのだろう。心情の描写は丁寧で美しいと思いました。