誰が地域社会の課題解決を担うのか
防災や防犯または環境問題の地域課題は、どちらかといえば行政側から住民へ提案されることが多く、当事者たる住民がその提案された問題に対して関心を示し、若干の議論を経て提案された問題が解決に向かうのであります。
 住民の自主性や主体性を発揮するまでには時間を要するのであります。
 それは、社会の課題解決は「公」が行っていくものであるといった従来的な意識が地域社会を覆っているように思えます。
 しかしながら、地域が抱える課題解決の担い手は誰であるのか。という疑念が発生するのであります
 
             地域社会の主役は地域住民
地域における課題は様々であり、各地域によって異なるのであります。
昨今、地域の特色ある取り組みが各地で行われるようになり、ある部分においては地域コミュニティが復活しつつあるように思える部分があると思います。
 まだまだ限定的ではあるのでありますが一方で着実に裾野は広がりを見せつつあるようにも思います。
 これらから見えることは、地域の課題解決にはその地域住民自身による課題への関心の高さが影響しているということなのであります。
 住民組織による積極的な取り組みの姿は、住民の手による地域課題の新しい解決方策を示しているといえるのではないでしょうか。
 この、社会の課題解決を住民が担うという気運は、私たち日本の社会が持つ大きなうねりのなかで、意識されてきたことでもあります。
 やはり、地域の課題の解決は地域の住民が主体的に行って行くことが望ましく、そのことで地域のコミュニティが再生されていくことにもつながり、住民の満足度も向上していくことになると思います。

     
                小さな政府とは何か
  民間でできることは民間でする。そのことによって行政の責務を小さくする。これが小さな政府の意味であります。小さな政府に関しては賛否両論があるかと思います。ことに、福祉に関する行政が手薄になる可能性が指摘され、小さな政府は「低福祉低負担」の代名詞と言われることがあります。
 もっとも、日本では、「低福祉低負担」という語は、行政用語として定着しているわけではありません。土光臨調の後を受けた第2次臨時行政改革推進審議会(第2次行革審 会長・大槻文平)の最終答申(平成2年4月)の次の一文は、このことを端的に示しています。
 すなわち、「高福祉高負担型ではなく、公私の分担・協力を基礎とした活力ある福祉社会をめざす」として、低福祉という語は使われていない。しかし、この短い文を見れば、低福祉低負担に言及していることは明白であります。
まず、日本が目指すべきは「高福祉高負担型ではない」ことが明示されているのであります。
 続く段落の「活力ある福祉社会をめざす」という文言は、まさに福祉が課題であることに言及しています。そうして、その福祉は「公私の分担・協力を基礎」として進められるべきであると述べられているのです。すなわち、言外に低福祉低負担を示す一文であるのです。

               
                小さな政府とNPO
 「大きな政府」の実態が、かつての日本や北欧に見られるとすれば、「小さな政府」を目指す実態は米英にあります。行政が全て担うのではなく、民間でできることは民間が担う。
 アメリカでは、国や州といった行政機構が成立する前から、コミュニティが成立していたため、多くの公共事業はコミュニティによって担われてきた歴史があります。
では、コミュニティはどのようにして公共事業を担ってきたのか。当初は、非組織的・互助的な活動であったと考えられるのであります。すなわち、折々の互助活動であります。しかし、コミュニティ内の人口増に伴って、折々の助け合い活動では、賄いきれない課題が増え、やがて、特定の活動を組織的に担う組織が生まれた。これが、NPO(non-profit organization/日本語に直訳すれば、非営利組織)であります。すなわち、個人や団体の営利を目的とするのではなく、社会的課題に組織的に応える活動をすることを目的として設置される組織がNPOなのであります。
 それでは、「大きな政府」から「小さな政府」へ、どのように移行するか。土光臨調の実現に向けて、日本政府が模範にしたのが、上述したアメリカのNPOの活動であるのです。
 日本には「和」の文化が存在します。しかしながら昨今その「和」の文化についても人間社会自体つながりが薄くなりつつあり、共同体意識がなくなりつつあります。
 かつての日本には、コミュニティが存在していたように思います。
 しかしながら、近代化・都市化が進行し、経済成長とともに人々の生活面での利便性は向上しましたが、人間関係は希薄化の一途をたどって来たように思います。特に都市部においてコミュニティの破壊が進行したとは言え、地方には色濃くコミュニティを残している地域も存在しています。
 その破壊されたコミュニティをもう一度再生することが重要であることは疑いようのない事実なのであります。

              NPOを核とする共生社会の実現へ
 市民の手による新しい市民社会の在り方を示す行政の用語として登場したのが「新しい公共」であります。この語は、平成21年、鳩山内閣によって広く周知されるようになりました。
日本では「特定非営利活動促進法」成立後、次々にNPOが生まれ、急速に拡大していきました。しかし、NPO経験の浅い日本では、多くのNPOが活動維持に多くの難問を抱えている現状があります。
 ことに資金調達は難問で、多くのNPOが志半ばで立ち往生するというような実態があることは確かであります。
そこで重要となるのが、NPOをはじめとする市民の共生社会実現を支える仕組みの整備であります。
仕組みづくりの後押しは、当面、行政が担わなければならないのであろうと思います。
 ことに、NPO活動の資金調達に関しては、課税負担の軽減化など、法制が絡む問題は行政の責務であります。

この資金調達についての大きな課題を解決に向けた枠組みづくりが期待されます。