1.これからの自治体・組織・職員像と求められる能力(総論)

施政方針、総合計画、市人材育成計画のそれぞれにおいて、これからの自治体像、組織像、および職員像がうかがえるが、その抽象性、包括性いいかえれば玉虫色的な表現は、性質上やむを得ない面があるにしても、それらの内容を実現するための具体的な対策次元においてはある程度焦点を絞る必要があると思います。

今日の社会の一般的な論議から焦点を絞ると、次のような活動と能力が「キーワード」であると思われます。

<自治体および組織の活動(能力)>

①「総合行政」活動②「地域社会の経営」活動③「政策官庁的」活動④「市民との協働」活動

⑤「情報ネットワーク」活動⑥「マーケティング」活動・「組織管理活動」

<上記活動に共通するキーワード(能力)

① 個人・個性・②多様、競争③ 共生、協働、ネットワーク④ 自主自立、自己責任、自覚・ 自浄⑤職業的倫理(使命感等)・⑥知力、創造(先見性を含む)、専門、学習、・⑦変革、改革・挑戦、勇気⑧ デジタル化、スピード化

自治体や組織そのものは自体は実態のないものであり、そこに人が存在してはじめて活動能力をもつから、自治体像、組織像といっても結局は人の能力の総和であると思います。

したがって、職員個々人について、上記の「活動(能力)」や「活動に共通するキーワード

かかる具体的能力」を体系的に開発していき、次のような「望ましい職員像(プロ職員)の実現化」を図ることが重要であると考えます。

「① 豊富で高度な知識・経験と ② 高い精神性に裏付けられ、③ 確かな思考力をもって時代の要請に応え、④ 行政目的を実現する職員」

なお、これまでゼネラリストに対比される「スペシャリストの専門性」は、そのほとんどがプロ職員の能力の一部に含まれると考えます。「一芸に秀(ひ)いずれば諸芸に通ずる」で、その道を極めてバックボーン(背骨)をもったプロ職員が真のゼネラリストに成長していくと思います。

一方、何でも知ってる小才や、何でもできる小器用さでは、本当の仕事はできず、小手先の仕事になる恐れがあると考えます。組織管理的なゼネラリストは今日の民間企業にあっては不要視されている現状があります。

したがって、スペシャリスト的職制を新設し、職員のプロ化を進めていく必要があると考えます。

また、いずれも人員の増大化につながることになりかねないものであるから、従来のスペシャリスト、ゼネラリストの発想にもとづく人事管理は検討を行ない、明確にライン職・スタッフ職の位置づけを行なう必要があると考えます。

また、「プロ職員としての組織との係わり能力」としては、前向きに取り組む姿勢や、「組織のもつマイナス部分を冷静に観察し是正する能力と勇気」をもち、そうしたマイナス部分を率先して改める行動能力をもつことが求められると考えます。

2.具体的な施策展開として

「職員の行政マンとしての専門性を高めないといけない。」「これまでのようなジェネラリストでは対応できない。」と思っている職員は結構存在するものであると考えます。

 ひとつの参考資料としてですが、日本総研が行なった自治体職員への一方、「あなたは将来管理職として働きたいですか。専門職として働きたいですか。」というある自治体での全職員アンケート調査結果を見ると、全体として専門職志向が強いことがわかります。特にこの自治体の場合、20代、30代の若い世代の職員に専門職志向が強いことが分かります。


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出所 日本総研 自治体アンケート調査より

今後の人事政策を展開していく上において、このような、自治体側の職員の専門性を求めるニーズと職員が専門職志向を有していることを両立させることに留意しておく必要があると考えます。これが、分権時代の自治体改革の一つのポイントであろうと考えます。
 では、一体どのような点に留意して、専門職を養成していくことが望ましいのでありましょうか。

第一に、高度専門家と単なる習熟者を峻別することであると考えます。(後掲の図参照)。自治体の場合、比較的定型的な業務に長年従事している職員を専門職として位置付けている場合が多いと考えます。

しかし、これらの職員は、専門家というよりも習熟者として位置付け、高度な専門知識(例:公認会計士に匹敵する会計学の知識、大学で教える程度の福祉や法務の知識)を有する専門家を別途養成することが必要であります。

第二に、30代半ばまでは広い分野を担当して経験を積ませて、30代後半に、個人の希望や適性、専門性の有無などによって、専門職と管理職を峻別する方法も一つの考え方になるかと思います。

管理職と専門職は、給与など処遇上は基本的に対等にすることが望まれますが、一部の外部から採用した高度専門家(例:企業誘致に関して卓越した実績の有るコーディネーター、多くの外郭団体の経営改善の実績のあるコンサルタント)には、自治体幹部を上回る給与を出すこともありえると考えます。      専門家は高度な専門性を有する人材であるので、そのような高度な専門性がない場合には、専門家とは認めないことが必要であり、最低の基準づくりは必要であります。

また、高度な専門性もなく、管理職に昇進できない場合には、習熟者やその他職員として、昇進・昇格などの処遇面では一定の不利益を受けることはやむを得ないと考えます。これらの高度専門家は、外部からも積極的に採用することが望まれると思います。

第三に、管理職と専門職との垣根を低くして、両者の移動を容易にしておくことが必要であると思います。

専門職の職員となったが、その後一定の要件を満たせば、管理職に就任することも認めるのも必要であります。

一方で管理職の職員でも専門性は当然ながら必要であり、例えば課長がその専門性を生かして、専門家として部下なしの専門家になる可能性もある訳でありますから、管理職になった場合でも専門職への異動を行なう場合が存在するからであります。

これは、人事配置の流動性・柔軟性を確保することにも繋がり、また職員個人としての選択の可能性も高めることになると考えます。


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このような専門職制度の導入は、自らの専門性向上に向けて、自治体職員に自立的な行動を促すであろうし、また、外部専門家の採用もより簡易になるでありましょう。効果的な専門職制度の導入が、職員個人の自立を促し、ひいては自治体全体のパフォーマンスを高めることは間違いないと考えます。