「公共サービスに関し、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、公共サービスに関する施策の基本となる事項を定めることにより、公共サービスに関する施策を推進し、もって国民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与すること」を目的とし、衆議院における議員立法で立案された「公共サービス基本法」が200971日から施行されています。

この法律では基本理念として、①安全かつ良質な公共サービスが、確実、効率的かつ適正に実施されること。②社会経済情勢の変化に伴い多様化する国民の需要に的確に対応するものであること。③公共サービスについて国民の自主的かつ合理的な選択の機会が確保されること。④公共サービスに関する必要な情報及び学習の機会が国民に提供されるとともに、国民の意見が公共サービスの実施等に反映されること。⑤公共サービスの実施により苦情又は紛争が生じた場合には、適切かつ迅速に処理され、又は解決されること。
5項目を掲げ、「公共サービスに関する国民の権利であることが尊重され、国民が健全な生活環境の中で日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるようにすることを基本として、行われなければならない。」としています。
 昨今、地方公共団体においても人口の減少や高齢化に伴う労働力人口の減少、自治体内における産業の停滞など様々な要因による税収入の減少により自治体の財政は減少し、財政難に陥っています。

そのような背景の中、行政が行っている各事業について業務委託が進行している訳でありますが、この業務委託についても最終的には自治体の責任になるのであります。

この公共サービス基本法では第11条に「安全かつ良質な公共サービスが適正かつ確実に実施される」とあります。

これには、様々な視点が必要であり、かつ戦略性が必要なのであります。

単純に従来直接行っていたサービスを違う担い手に任せるだけでは、安かろう悪かろうの状態が生まれかねません。

 また、公共サービスの実施に従事する者の問題であります。(第6条・第11条)
非正規労働者の処遇が問題となっていますが、自治体にあっても正規職員と同じ仕事をする臨時・非常勤職員に「官製ワーキング・プア」という言葉が使われる昨今であります。

本来、専門性があるから経験や情報が豊富な事業者が担った方が良質なサービスが提供できると始められたはずの業務委託が経済性や効率性だけで行われるようになり、また、長期間の受託見込みがあるから先行投資も可能な案件も価格だけの入札が繰り替えされるようになりました。

その結果、最終的にはサービスを提供する者の労働条件切り下げで辻褄があわされるようでは、「責任を自覚し、誇りを持って誠実に職務を遂行」もできないであります。

サービス提供に最終的責任を持つ自治体は、「適正な労働条件の確保その他の労働環境の整備」の検証責任を負わなければならないのであります。

 こういった様々な実情をより深く理解し、端的に住民サービスの向上という「スローガン」だけではなく、住民の自律といった視点も併せた公共サービス改革が必要なのではないか。