自治会等がこれまで果たしてきた役割を踏まえ、自治会等の活動を基礎にした現実的な仕組みとして、現行法制度の下で市町村に導入が可能な制度を検討していきたいと思います。
まず、①意見集約の仕組み市町村よりも狭域の適切な規模の地域ごとに住民自治組織の代表者等で組織する「地域審議会」を設置し(合併した場合には原則として旧市町村域 「地域審議会」が各地域の )、住民自治組織を通じて住民意見の集約を行うことを想定します。
地域住民の意見を適切に集約するための方法としては、市町村の附属機関として、住民自治組織の代表者等で組織する「地域審議会」を例えば旧市町村単位で設置し、地域審議会が各住民自治組織を通じて住民意見の集約を行うことが考えられます。
 この場合、市町村の合併の 、特例に関する法律 (以下「合併特例法」という )で規定されている期間に定めのある地域審議会とは異なる恒常的な機関として設置することが考えられます。
 現在の自治会等には、活発な活動を行い、住民自治の充実にとって重要な役割を果たしている事例が多く見られますが、地域住民が気軽に参加できるような組織運営に改善する余地がある場合も考えられます。そのため、地域審議会を設置する場合には、住民自治組織において、活発な議論が行えるよう、地域住民が気軽に参加できる身近な話し合いの場を設けることが重要であると考えます。そして、そこで議論された内容を住民自治組織の代表者を通じて地域審議会の場で集約していくことが考えられます。
②行政への意見反映
「地域審議会」は市町村長に対して意見具申できることとし、市町村に支所が置かれる場合には、支所長に対しても意見具申できるものとします 「地域審議会」から意 。見具申があった場合、市町村長(支所長)はこれを尊重するものとします。
地域ごとに集約された住民の意思は市町村の様々な施策に的確に反映されることが望ましいと考えます。このため、地域審議会は市町村長に対して、また、支所が置かれる場合には支所長に対しても意見具申ができるものとし、市町村長等には提出された意見の尊重義務を課すことを想定します (支所が設置される場合には、当該地域における住民の意見の集約と反映が的確に行えるよう地域審議会は支所の設置単位ごとに設けることが適当と考えます また 支所長に対する意見具申をより実効性のあるものとしていくためには 。支所に一定の権限が委譲されていることが望まれます )。ただし、こうした制度の設計と運用にあたっては、地域審議会がいたずらに地域の利害を代弁し合い、市町村の一体性を阻害するようなことがないよう、十分に留意することが重要です。
③住民自治組織の設置
自治会等の地縁による団体と身近な地域課題に対処する各種地域団体をネットワークし、これらの諸団体の活動を総合調整する住民自治組織として「地域自主組織」を組織することを想定します。
現在の自治会等の中には、小規模なものや、人材や財政の面で課題を抱えているものも見受けられることから、地域の身近な公共的課題を市町村と地域住民が協働して担うことができるよう、自治活動の基本単位である自治会等を基礎とし、小学校区や中学校区単位あるいは旧市町村単位など地域の実情に応じた区域ごとに、複数の自治会等と各種地域団体(青年団、婦人会、PTAなど)で組織する新たな住民自治組織(以下「地域自主組織」という )を設置することを提案します。
地域自主組織は地域内の各種公共的団体の活動を相互に連携するネットワーク型の組織とし、これにより、地域の人材を有効に活用して地域の課題に総合的に対応できる体制を作り上げ、従来から地域の公共的課題を主体的に担ってきた自治会等による活動の成果を基に、地域の自治活動をさらに発展的に展開することを目指します。併せて、地域自主組織は地域審議会の構成単位としての役割をも担うことを想定します。
④住民自治組織に対する権能付与
市町村(又は支所)が行う事務のうち 「地域自主組織」が地域の実情に応じて処理することが望ましいものについては、地域自主組織の体制及び法的制限等を勘案の上、市町村(支所)が担っている事務の一部を委託し、所要の財源を措置することが考えられます。
市町村が行う事務のうち、地域の実情に応じた対応が望まれるものや地域自主組織において処理する方が的確な事務の執行や効率的な事務処理が期待できるもの、あるいは地域の人材や資源を活かすことができ、ひいては市町村全体の活性化にも繋がると考えられるものについては、地域自主組織の力量を勘案の上、市町村が処理する事務の一部を委託することも考えられます (もっとも、地域自主組織に委託することについて法的な制約のあるものは委託事務から除くことになります )。
もちろん、地域自主組織への事務の委託は、行政からの押し付けや単なる行政の下請けとならないよう、市町村と地域自主組織が十分に話し合い、合意を得た上で進めることが重要です。