旦那の気持ちとその気持ちを助ける家族・・・Kさんは、3店舗のラーメン店の経営をしていました。 もともと厨房で下働きをしていたKさんにとって、自分の店を持つことは当初からの夢でした。 そして、念願かなって、一店舗目をオープンすることができました。 ... 目新しさもあって、一時はそれなりの人気店になり、その勢いで続いて、2店舗目、3店舗目をオープンさせました。 ところがその後、売上はいっこうに伸びず、それどころか次第に客数も減少していきました。 毎日、朝早くから仕込み、昼間は休みなく働き続け、スタッフが帰った後も深夜まで一人で片付け…。 我も忘れて、一生懸命に働いているにもかかわらず、毎月150万前後の赤字を出し続ける状況にまで悪化してしまいました。 駅前でチラシを配ったり、お客様に割引チケットを配ったり、知人の家の壁にポスターを貼ってもらったり、とにかくできることを見つけて、すこしでも売上を伸ばす努力を続けました。 しかし、どんなに努力しても、どんなに働いても、いっこうに店の状況がよくなる気配はありません。 次第に顔からは、笑顔が消え、いつも眉間にしわを寄せていました。 自信を無くし、生気もなくなっていきました。 Kさんが帰宅すると、妻のSさんと幼い子どもが寝ています。 その横で静かに着替えていると、目を覚ましたSさんが、小さな声でいつも言います。 「今日も遅くまで、お疲れ様…」 「…まあな…」 そんなとき、Kさんは何と返事をしていいのかわからず、いつも力のない返事になってしまいます。 “妻に心の内を話したところで、どうにもならない。自分ひとりで解決するしかない” もちろん、夫の苦しい状況は、妻の幸子さんもうすうす感じてはいたのですが、“お疲れ様”と言う以外、伝える言葉がありませんでした。 幸子さんも、なかなか寝つけない日々を過ごしていたのです。 何もできない歯がゆさに苦しみながら。 そんなある日… Kさんが、いつものように明け方になって家に帰ると、寝ているSさんの横で、子どもが起きていました。 何気なく、そっと抱き上げました。 そして、あやそうとすると、やっと片言で話しはじめたばかりの子どもが、自分に何かを伝えようとしています。 「…ぱぱ」 何を言っているのか、はじめはよくわかりませんでした。 「ん?」 「…んち、ぱぱ」 それでも、子どもは同じ言葉を何度も言っているようです。 「な~に?…」 「…いちんちの…ぱぱ」 こちらの顔をじっと見て、必死に何かを伝えようとしています。 「何の、ぱぱ?」 そして、とうとう、子どもの言葉をはっきりと聞き取ることができました。 「にほんいちのぱぱ」 「!」 思わず、Kさんの目に涙があふれ、頬を伝って流れていきました。 「……………」 子どもを抱きながら、ただ泣きました。 それまで、必死に耐えていた心のたがが外れように、あふれてくる悔しさを我慢することができなくなりました。 “悔しい…なんと、自分は情けない人間なんだろう。 子どもの言葉に素直に、「そうだよ」と、うなずけない自分が…本当に悔しい。 日本一どころか、明日食べていけるかどうかもわからない。 この子は、それでも自分のことを、日本一と思っている…” その日、Kさんは布団の中で目をつむっても涙が止まらす、とうとう一睡もできませんでした。 それから木村さんは一念発起し、よいと思ったことは、次々に行動に移していきました。 “どんな苦労をしてもかまわない、子供が誇りに思うような父親に、絶対なる!” 毎日、毎日、必死に研究を続け、その結果、次々と新しい料理を作ることに成功していきました。 実は、この話の陰には、妻、Sさんの見えない支援があったのです。 仕事の面では何も手伝うことができない幸子さんは、心の中でいつも彼を励まし続けていました。 帰りの遅い父親がいない家の中で、毎日子どもに語りかけていたのです。 “あなたのパパは、日本一のパパよ”