ぼくは昔、小学校1年から北海道に住んでた。
北海道では、だいたい11月上旬頃に一回雪が降る。
最初の雪は、当然すぐ溶ける。
しばらく雪がふらないけど、11月下旬頃に降る雪は、
溶けないでちょっとずつ残るようになる。
その後、降っては残るの繰り返しで、根雪になる。
後は3月末までずっと雪の中の生活。
夜なんか、雪が音を吸収するから本当に静かだ。
北海道に暮らし始めた年、始めて根雪になったときは
親父が面白がって、自発的にカマクラを作ってくれた。
秘密基地のようでとてもおもしろかった。
※その後はせがんでも作ってくれなくなった。
よっぽど重労働だったのだと思う。
言葉にするとロマンチックな感じだが、実際は
ロマンチックな要素は全くない。
実際に生活してみるとよく分かる。
大量に雪が降った朝は、家から出れないので、まず雪かき。
昼間に雪が沢山降ったときは、親父は帰ってきてから雪かき。
その雪は、空き地に運ぶ。
そのせいで、空き地は、1月になると、
小山のようになる。恐ろしい。
ひと月に1回は雪下ろし。
そうしないと家が潰れてしまうし、場合によっては、
雪が屋根から落ちて、人が雪の下敷きになってしまう
危険性がある。
※毎年、雪の下敷きになって死亡する人たちが結構いた。
道内で一回引越しをして、2件目の家の時は、隣の家との
距離が近過ぎかつ、そんな大量の雪を捨てる場所が無い。
なので、雪下ろしの時はトラックを借りてくる。
屋根から下ろした雪をトラックに積み込んで、港に行く。
雪を海に捨てるのだ。
冬の港はそういったトラックでいっぱいだった。
ぼくは、小学校5年ぐらいからその手伝いをしてた。
命綱を腰に巻いて、上から順番に雪を取って、
下ろしていく。
結構な重労働だった。だけど懐かしい。
ま、そんなことは置いといて、スキーの話。
小学校1年の年、根雪になった後、ぼくの同級生のお母さん
がスキーをやろうと誘ってくれた。
その頃、住んでた家は、玄関を出ると、100mぐらい先
までは全く何も無い。
すごく田舎だった。
で、その先は、ちょうどイイくらいの斜面だった。
うちから、3分でゲレンデがあるようなもんですよ。
※多分20度くらいの斜面・・・。
遊ぶにはちょうどイイくらいですな。
最初は、スキーの付け方がわからないので、おばさんが
スキー靴を履かせてくれたり、スキーの履き方を平地で
教えてくれた。
家の前でスキーを履いたので、100mスキーで移動した。
とてもつらかった。陸に上がったペンギンのようなもん。
※始めてスキーを付けたのに、100m歩けってのは酷よ。
結局、途中で歩くの諦めて、スキーを持ってスロープ
のところまで行った覚えがある。
斜面の上で、おばさんが手伝ってくれて再度スキーを
履いた。
おばさんは、サクッと「じゃ、行くよぉ」って言って
ザッ、ザッ、ザッ、キュッツ!
あ、かっこいいじゃん!
おばさんは、こっちを見て、
「シャチくん、おいで!」とかなんとか言いながら
嬉しそうにストックを振って合図してくれた。
ああ、おばさんのようにやればいいんだ!と素直に
思って、上からおばさん目掛けてまっすぐ滑りだした。
ゴンガラガラガラ!
何が起こったかわからない状態。
気がついたら、足が複雑に絡んで、空が見えた
おばさんが慌てて、助けに来てくれた。
上から覗き込みながら、
「大丈夫ぅ?シャチくんにはちょっと厳しかったかなぁ?」
当然、含み笑いをしていたのは言うまでも無い。
おばさん、あなたは北京原人に安全装置解除した銃!
を渡したようなもんですよ。
あるいは、1m四方に20個平均ぐらいの地雷が埋まってる
地雷原で、マイケル・ジャクソン呼んでムーンウォーク
やらせるようなもんですよ。
危うく死ぬところだったよ!
それがぼくの初めてのスキー。
でも本当は、これが終わりではない。
直滑降で最初はある程度滑ってて、途中から
ゴンゴロゴンゴロ転がったもんだから、結構な
距離を降りてた。
で、更に言うと、おもいっきり新雪!
当然、単なる空き地だから圧雪なんて全くなし。
今は大好物だけど、そのときは思いっきりぼくの敵。
上を見たら、母が思いっきりケラケラ笑ってた。
※ちなみに母はその当時スキー経験無し。
結局、ぼくが転がったのを見て、スキーを諦め、
その後、一度もゲレンデを滑らなかった。
頭来たから、おうちに帰ろうと思って、上に登ろうとした。
背中に入った雪も超冷たいし。靴の上から入った雪も
超冷たいし、なんも楽しくないもん。
でも、一歩も上に上がれねぇ。
必死になればなるほど、下に滑り落ちてく。
そりゃそうだよ。
初めてスキーするガキなんか、エッジの使い方
なんてわからないもん。
エッジ使えなけりゃ、下に落ちてくよね。
結局、おばさんがスキーを外してくれて、
更にスキーを持ってくれた。
ぼくはストックだけを持って、それでも、相当苦労
しながら、上まで登って、話しかける母を置いて、
そのままうちに駆け込んだ。
もう、スキーなんてしないと思ったことは言うまでも無い。
でも、北海道は、冬休み明けから授業でスキーをやる。
そのため、スキー滑れるようになったんだけどね。