ーーー心に棲むものはーーー
あたしを何度も助けてくれた、亮お兄ちゃん。
その姿は人間ではなかった。
そう、ダイレンジャー………………そう名乗っていた。
あれから、お財布や鍵とか、口紅やトランプの怪人に襲われたけど助けてもらった。
あの力、流石お兄ちゃん。
でも、自分はそれを、どう思ってるんだろう?
「由貴ちゃん………………由貴ちゃんッ!」
「!?」
ハッと気がついた。
眼前には、耳脇を覆うくらいの高さから髪を結んである亜季の姿があった。
「どうしたの?ボーッとしちゃって」
「う、うん………………ちょっと考え事してて」
「考え事?。あー、さっきの算数抜き打ちテストでしょ」
ズバリそれ、というドヤ顔の亜季。
とりあえず、由貴は頷いた。
「あたし全然ダメっ。またお母さんに叱られちゃう」
「亜季ちゃんもそうなんだ」
会話に割り込んできたのは、高めのポニーテールが特徴の町子。
「あたしもさぁ、今週末予定の理科のことばっかで算数はやってなくて」
「そう!そうなんだよ!」
ちなみに由貴は問題ない………………はずだ。
帰り道、亜季は"好きな人"について尋ねてきた。
小学4年生になって、いない方がおかしいという聞き方をしてきた。
そうだろうか。
まあ、亜季は2組の和也と上手くいってるらしいが………………。
「健一君は?」
健一。ボクシングジムの息子。
正義感が強く、イジメをする子達を一蹴している。
先日も、少し太っているという理由でイジメられていた正夫を助けていた。
「いつか言ってたよね?。由貴ちゃんが悪者にさらわれたら、助けてくれる人が良いって。健一君なら、ピッタリじゃない?」
なるほど。
そういえば、そんなこと言ったっけ。
「うーん………」
どうだろう。
健一は確かにそういったのに近いけど………。
「それにさ、きっと健一君は由貴ちゃんのこと好きだよ!」
「そんなことないって~」
自分はそんなモテようか。
どうでもいい。
結局、話は平行線のまま別れた。
帰宅した由貴はランドセルを置き、宿題を始める。
その後、祖父母のいる裏の母屋まで煮物を取りにいく。
由貴の家は、所謂敷地内別居というやつだ。
開けてみると、やっぱり人参が入っている。
どうも、この味が苦手だ。
ジュースにすれば飲めるが、煮ても焼いても食べにくい。
「野菜嫌いを無くさないとね」
祖母の言う通りである。
自分に身長はあまり高いほうでもない。
なんだか、胸ばかり膨らんできたような気がする。
家に戻ると、風呂に入る事にした。
弟は泥だらけで帰ってきたのが、脱ぎ捨てた靴下でわかる。
脱衣場でシャツを脱ぐ。
ああ、なんか乳房がくっきりしてきた。
4年生でこれは、成長しすぎではないだろうか。
湯に浸かり、昼に考えたことを思い出す。
あの時、自分はどういう感情を抱いたんだろう。
助かって嬉しかった。
間違いない。
亮が来てくれた。
嬉しい。
ああ、どれも抱いていた。
だけど、何か表現できない感情が芽生えたんじゃないだろうか。
これが、亮に対する恋心というものなんだろうか。
あの強さに。
いや、優しい亮に惹かれてるんだろうか。
あの強さを持った亮に。
「カッコいい………そうだよね」
憧れを抱いていたのを実感した。
あの一生懸命で、優しくて、強い亮。
いや、さっきから"強い"という単語ばかりが巡る。
「なんでだろ………」
結局、恋心だったのかの解答は得られなかった。
きっと、その内出るだろう。
由貴はセミロングの髪を2つ結びし、学校へと向かう。
教室までくると、町子が出迎えてくれた。
「おはよ由貴ちゃん」
「おはよう」
ランドセルから道具を出してると、町子が前に移る。
「今日、転校生が来るんだって」
「え、そうなの?」
「さっき職員室の前を通ったら小春ちゃんが聴いたんだってさ」
どうやら男の子らしい。
いったい、どんな子なんだろう。
そんな思いをクラス全員が抱き、朝の会を迎えた。
先生の隣には、快活そうな少年が1人。
「みんなの、新しい友達を紹介する。さ、自己紹介して」
「僕はコウ。みんな、よろしく!!」
この時、まさかあんな事になるなんて思いもしなかった。
喜びも、悲しみも、色んな戦いがある、もう一つのダイレンジャーとしての物語。
その先にあるものは………………。
おわり
あたしを何度も助けてくれた、亮お兄ちゃん。
その姿は人間ではなかった。
そう、ダイレンジャー………………そう名乗っていた。
あれから、お財布や鍵とか、口紅やトランプの怪人に襲われたけど助けてもらった。
あの力、流石お兄ちゃん。
でも、自分はそれを、どう思ってるんだろう?
「由貴ちゃん………………由貴ちゃんッ!」
「!?」
ハッと気がついた。
眼前には、耳脇を覆うくらいの高さから髪を結んである亜季の姿があった。
「どうしたの?ボーッとしちゃって」
「う、うん………………ちょっと考え事してて」
「考え事?。あー、さっきの算数抜き打ちテストでしょ」
ズバリそれ、というドヤ顔の亜季。
とりあえず、由貴は頷いた。
「あたし全然ダメっ。またお母さんに叱られちゃう」
「亜季ちゃんもそうなんだ」
会話に割り込んできたのは、高めのポニーテールが特徴の町子。
「あたしもさぁ、今週末予定の理科のことばっかで算数はやってなくて」
「そう!そうなんだよ!」
ちなみに由貴は問題ない………………はずだ。
帰り道、亜季は"好きな人"について尋ねてきた。
小学4年生になって、いない方がおかしいという聞き方をしてきた。
そうだろうか。
まあ、亜季は2組の和也と上手くいってるらしいが………………。
「健一君は?」
健一。ボクシングジムの息子。
正義感が強く、イジメをする子達を一蹴している。
先日も、少し太っているという理由でイジメられていた正夫を助けていた。
「いつか言ってたよね?。由貴ちゃんが悪者にさらわれたら、助けてくれる人が良いって。健一君なら、ピッタリじゃない?」
なるほど。
そういえば、そんなこと言ったっけ。
「うーん………」
どうだろう。
健一は確かにそういったのに近いけど………。
「それにさ、きっと健一君は由貴ちゃんのこと好きだよ!」
「そんなことないって~」
自分はそんなモテようか。
どうでもいい。
結局、話は平行線のまま別れた。
帰宅した由貴はランドセルを置き、宿題を始める。
その後、祖父母のいる裏の母屋まで煮物を取りにいく。
由貴の家は、所謂敷地内別居というやつだ。
開けてみると、やっぱり人参が入っている。
どうも、この味が苦手だ。
ジュースにすれば飲めるが、煮ても焼いても食べにくい。
「野菜嫌いを無くさないとね」
祖母の言う通りである。
自分に身長はあまり高いほうでもない。
なんだか、胸ばかり膨らんできたような気がする。
家に戻ると、風呂に入る事にした。
弟は泥だらけで帰ってきたのが、脱ぎ捨てた靴下でわかる。
脱衣場でシャツを脱ぐ。
ああ、なんか乳房がくっきりしてきた。
4年生でこれは、成長しすぎではないだろうか。
湯に浸かり、昼に考えたことを思い出す。
あの時、自分はどういう感情を抱いたんだろう。
助かって嬉しかった。
間違いない。
亮が来てくれた。
嬉しい。
ああ、どれも抱いていた。
だけど、何か表現できない感情が芽生えたんじゃないだろうか。
これが、亮に対する恋心というものなんだろうか。
あの強さに。
いや、優しい亮に惹かれてるんだろうか。
あの強さを持った亮に。
「カッコいい………そうだよね」
憧れを抱いていたのを実感した。
あの一生懸命で、優しくて、強い亮。
いや、さっきから"強い"という単語ばかりが巡る。
「なんでだろ………」
結局、恋心だったのかの解答は得られなかった。
きっと、その内出るだろう。
由貴はセミロングの髪を2つ結びし、学校へと向かう。
教室までくると、町子が出迎えてくれた。
「おはよ由貴ちゃん」
「おはよう」
ランドセルから道具を出してると、町子が前に移る。
「今日、転校生が来るんだって」
「え、そうなの?」
「さっき職員室の前を通ったら小春ちゃんが聴いたんだってさ」
どうやら男の子らしい。
いったい、どんな子なんだろう。
そんな思いをクラス全員が抱き、朝の会を迎えた。
先生の隣には、快活そうな少年が1人。
「みんなの、新しい友達を紹介する。さ、自己紹介して」
「僕はコウ。みんな、よろしく!!」
この時、まさかあんな事になるなんて思いもしなかった。
喜びも、悲しみも、色んな戦いがある、もう一つのダイレンジャーとしての物語。
その先にあるものは………………。
おわり