ある兄弟のクリスマス。
―――兄は母を想った。
生まれてから、触れてこなかった母。
なぜ捨てた?なぜ、自分を捨てたのだと。
それは疑問などてはなく、恨み。
生まれた場所が悪かったのだろうか。
生まれたことが悪かったのだろうか。
自分が、自分の存在が…………。
恨んだ。憎んだ。
そう、母を恨むことでしか、父を憎むことでしか自分の存在を示せなかったのだ。
誰かと触れ合うのに、憎しみしか方法がない。
憎しみでしか、世界と触れあえない。
そう教えられたのだ。
あの父から。
その結果、自分は世界に憎まれた。
私が何をした?
―――人を傷つけた
私が何をしたらいい?
―――償いを考えるなら、死ぬしかない。そうでなければ贖えない。
だから、ダメージがあるとはいえ、父の放った攻撃を受けたのだろう。
素直に。
心のどこかで、自分は死ななければならないと思っていたのだ。
なぜなら、母を、自分を思ってくれた母を傷つけたのだから。
―――親の心、子知らず
よく言ったものだ。
弟を守るため、母は去ったのだった。
弟を憎んだこともあった。
けれども、弟がいなければ母には会えなかった。
触れられなかった。
いなければ捨てられる事はなかったかもしれないが、弟を愛する気持ちは生まれなかっただろう。
だから、自分は母を求めた。
あれだけ酷いことをした。
あれだけ傷つけた。
それなのに、愛していると言ってくれた母。
触れたい。
あの温かさに。
抱いてほしい。
あの腕で。
目の前で母を喪った。
自分が招いた事だ。
殺したのは、自分だ。
嫌にもなる。
自分はやはり、この世界にいてはいけないのだろう。
―――違う。
母は、弟は、私を肯定した。
今までも決して無駄じゃないと。
恨む日々は終わった。憎む時間は終わった。
別れの間際に触れた、母の温かさ。
それだけで、自分のすべてを認められた気がしたのであった。
母が生んでくれたから、私はここにいる。
自分を否定し続けた先に、自分はいたのであった。
そして、受け継いだのだ。
母の想いを。
だから、私は「僕」を棄てなければならない。
世界を愛さなければならない。
「阿古丸様」
傍にいる彼女も、故郷の皆も、自分が背負っていくのだから。
力ではない。
心で、世界と向き合うのだ。
それが償いであり、母への答えなのだと信じて。
―――弟は母を想った。
ずっと待っていた。
理由も告げずに消えた母を。
どうしていないのだろう?
みんないるのに。
なぜ自分だけ、いないのだろう。
逢いたい。
あの温かさにまた、触れたい。
色々話したいんだ。
良い友達が、たくさん出来たんだ。
信じれる仲間に囲まれてるんだ。
どんな事でも、一緒に立ち向かえる人がいるんだ。
話したいのに。
自分は、こうしてるんだと。
なんでいないの?
―――捨てられたんだよ
僕の母ちゃんは違う!
―――同じだよ。あなたを捨てたんだよ
そう言われた事もあった。
思いかけたこともあった。
でも、思い出すんだ。
もっと小さい頃に触れた、あの温かさ。
忘れないよう、仲間と友達がその温かさをくれたんだ。
その温かさを、いや、その温かさで、また繋がりたいんだ。
そして、逢えたんだ。
―――お前はキバレンジャーなのよ。大勢の人のために戦わなくちゃいけないの!
逢えたのは、母の死の間際。
一瞬繋がる代償に、永遠の別れが訪れた。
母を喪う代償に、世界を守る力を手にした。
万能の神の力。
天に等しき存在。
自分はそう、戦わなければならない。
母の願い。
泣いて、泣いて託された想い。
そうだ。生きていかなきゃ。
託された想いを、繋ぎ続けるために。
母の想いを、生かすために。
兄とも繋がった。一緒に、背負っていくのだ。
「コウ」
呼ばれた。
ああ、自分の誕生日・母の命日にクリスマスイブか。
みんな、この瞬間を家族と迎えてるのだろう。
恋人と。
或いは、一人だけかもしれない。
でも、クリスマスはやってくる。
世界の救世主が生まれた日。
1日違いの、双子の英雄。
彼らは母を喪った。
彼らは母に託された。
戦いの果て、彼らは何を見るのだろうか。
何を得るのだろうか。
でも、今はただ、それぞれのクリスマスを過ごす。
―――メリークリスマス
―――兄は母を想った。
生まれてから、触れてこなかった母。
なぜ捨てた?なぜ、自分を捨てたのだと。
それは疑問などてはなく、恨み。
生まれた場所が悪かったのだろうか。
生まれたことが悪かったのだろうか。
自分が、自分の存在が…………。
恨んだ。憎んだ。
そう、母を恨むことでしか、父を憎むことでしか自分の存在を示せなかったのだ。
誰かと触れ合うのに、憎しみしか方法がない。
憎しみでしか、世界と触れあえない。
そう教えられたのだ。
あの父から。
その結果、自分は世界に憎まれた。
私が何をした?
―――人を傷つけた
私が何をしたらいい?
―――償いを考えるなら、死ぬしかない。そうでなければ贖えない。
だから、ダメージがあるとはいえ、父の放った攻撃を受けたのだろう。
素直に。
心のどこかで、自分は死ななければならないと思っていたのだ。
なぜなら、母を、自分を思ってくれた母を傷つけたのだから。
―――親の心、子知らず
よく言ったものだ。
弟を守るため、母は去ったのだった。
弟を憎んだこともあった。
けれども、弟がいなければ母には会えなかった。
触れられなかった。
いなければ捨てられる事はなかったかもしれないが、弟を愛する気持ちは生まれなかっただろう。
だから、自分は母を求めた。
あれだけ酷いことをした。
あれだけ傷つけた。
それなのに、愛していると言ってくれた母。
触れたい。
あの温かさに。
抱いてほしい。
あの腕で。
目の前で母を喪った。
自分が招いた事だ。
殺したのは、自分だ。
嫌にもなる。
自分はやはり、この世界にいてはいけないのだろう。
―――違う。
母は、弟は、私を肯定した。
今までも決して無駄じゃないと。
恨む日々は終わった。憎む時間は終わった。
別れの間際に触れた、母の温かさ。
それだけで、自分のすべてを認められた気がしたのであった。
母が生んでくれたから、私はここにいる。
自分を否定し続けた先に、自分はいたのであった。
そして、受け継いだのだ。
母の想いを。
だから、私は「僕」を棄てなければならない。
世界を愛さなければならない。
「阿古丸様」
傍にいる彼女も、故郷の皆も、自分が背負っていくのだから。
力ではない。
心で、世界と向き合うのだ。
それが償いであり、母への答えなのだと信じて。
―――弟は母を想った。
ずっと待っていた。
理由も告げずに消えた母を。
どうしていないのだろう?
みんないるのに。
なぜ自分だけ、いないのだろう。
逢いたい。
あの温かさにまた、触れたい。
色々話したいんだ。
良い友達が、たくさん出来たんだ。
信じれる仲間に囲まれてるんだ。
どんな事でも、一緒に立ち向かえる人がいるんだ。
話したいのに。
自分は、こうしてるんだと。
なんでいないの?
―――捨てられたんだよ
僕の母ちゃんは違う!
―――同じだよ。あなたを捨てたんだよ
そう言われた事もあった。
思いかけたこともあった。
でも、思い出すんだ。
もっと小さい頃に触れた、あの温かさ。
忘れないよう、仲間と友達がその温かさをくれたんだ。
その温かさを、いや、その温かさで、また繋がりたいんだ。
そして、逢えたんだ。
―――お前はキバレンジャーなのよ。大勢の人のために戦わなくちゃいけないの!
逢えたのは、母の死の間際。
一瞬繋がる代償に、永遠の別れが訪れた。
母を喪う代償に、世界を守る力を手にした。
万能の神の力。
天に等しき存在。
自分はそう、戦わなければならない。
母の願い。
泣いて、泣いて託された想い。
そうだ。生きていかなきゃ。
託された想いを、繋ぎ続けるために。
母の想いを、生かすために。
兄とも繋がった。一緒に、背負っていくのだ。
「コウ」
呼ばれた。
ああ、自分の誕生日・母の命日にクリスマスイブか。
みんな、この瞬間を家族と迎えてるのだろう。
恋人と。
或いは、一人だけかもしれない。
でも、クリスマスはやってくる。
世界の救世主が生まれた日。
1日違いの、双子の英雄。
彼らは母を喪った。
彼らは母に託された。
戦いの果て、彼らは何を見るのだろうか。
何を得るのだろうか。
でも、今はただ、それぞれのクリスマスを過ごす。
―――メリークリスマス