「健一君、正夫君」
大五達が合流した。
こうなれば、ゴーマ宮へ行くのみ。
「待ちやッ!大神龍の攻撃でゴーマ宮は崩壊寸前だで!」
駆けつけた亀夫が止めに入る。
もはや死地へと化したゴーマ宮にいけば、生きて帰れる保証などない。
「そんな場合か!俺達が行かなきゃ、中のみんなが死ぬんだぞ」
大五達は転身し、ゴーマ宮へと向かったのである。
ダイレンジャーとゴーマ、その戦いに終止符が打たれようとしていた。

















「星纏装ッ!」
ブレスレットにエンブレムを重ね、シン・キリンへと超転身をする。
朱雀を模したオレンジカラーの鎧が、太陽に見えてくる。
「な、なんぞい」
話には聞いていたダイレンジャーのパワーアップ。
傲慢で自信家の鯉のぼり内裏を以てして、その脅威は理解できた。
「アンタは何でも吸い込めるんでしょ?。なら、これを吸いきれる?」
太陽のオーラが形を変えていく。
鳥、朱雀のオーラ。
拡散し、鯉のぼり内裏の周囲に同様のオーラが出現していく。
「瞬光星・″太陽光″」
光速で移動し、オーラごと相手に突撃する必殺技。
サボテン大将軍をも葬った、包囲による多重攻撃。
あれなら、吸い込まれる前に鯉のぼり内裏に斃せるということだろう。
ガネーシャが計測する限りにおいては、シン・キリンの戦闘力は鯉のぼり内裏を上回っている。
それは敵も承知であろう。
単純な能力対決には収まらない。
鯉のぼり内裏は真剣な顔つきになり、躰中のあらゆる口が開いた。
「″羅羽呑み″」
鯉のぼり内裏のすべての口が吸い始める。
床に転がる破片を始め、周囲の様々な物体が引き寄せられていく。
物体だけではない。付近の空間が歪む。
空間さえ、呑み込んでいるのだ。
「な………」
あれでは、接近したなら吸い込まれてしまう。
シン・キリンの威力が例え高くとも……。
「無茶よ!」
無謀な攻撃は死を意味する。
ガネーシャが止めにはいるのは当然であった。
「………黙ってて」
全身全霊をかける。
止まってはいけない。
今までの戦いのすべてが、躰に染み込んだ戦歴が、そう教えてくれる。
「…………ハァッ!!」
シン・キリンは駆ける。
その瞬間には、朱雀のオーラへと達しており、鯉のぼり内裏へと翼を拡げた。
閃光の朱雀が次々と向かう。
受けて立たんと、身構える鯉のぼり内裏。
瞬く間の出来事であった。
幾つもの閃光が順に鯉のぼり内裏へと吸い込まれていく。
何の抵抗もなく、イッキ飲みという言葉通りであった。
あの光り輝く朱雀が、すべて消えてしまった。
「町子ちゃんは……」
反応がない。
完全に喰われてしまった。
逃げる?
いや、それも無理だろう。
こうなれば、自滅覚悟で吸い込まれる直前に零距離射撃をするしかない。
鯉のぼり内裏はガネーシャを見る。
ここはもう逃げられない。
ならば…………。
「うぐッ!」
突如、鯉のぼり内裏が苦しみだした。
震え、プルプルと小刻みの挙動になっていく。
苦しんでいる?
いや、あれは既に悶えているというべきだ。
口という口から、光を発している。
「ぼ…………ぼぉウェェェッ!!」
強烈な光が鯉のぼり内裏の腹を、もとい口を裂いた。
ガネーシャは驚くが、すぐに自身の脇に気配を察知する。
「あいたた……」
キリンレンジャーだ。
亜空間から脱出してきたようだ。
「これはどういうこと?」
さっきまで、反応が無かった。
完全に遮断されたはず。
「アイツの腹の中で、力をありったけブッ放しただけよ」
なんと。
作戦も手段もあったものではない。
吸い込まれては脱し、星纏装の時間いっぱい気力を放出し続けていたのだ。
耐えきれないほどの気力で、強引に亜空間ごと鯉のぼり内裏の腹を引き裂いたのだ。
「うう……」
まだ生きてる。
流石というべきか。
ガネーシャの銃口が向けられる。
今なら、無防備。
トドメをさすチャンスだ。
「ちょっと、殺さないでよ」
「?。何を言っているの?。今なら、確実に殺せるのよ」
「コイツは古いゴーマそのものだけど、阿古丸が作る新しいゴーマでも力になる。だから殺しちゃダメ」
ゴーマの生き方。
それを変えれば、服従するであろう存在。
無闇に殺す必要はないということか。
「甘いわね」
ガネーシャは銃を下ろした。
勝者はキリンレンジャーだ。何もしていない自分が口を出せはしない。
「この方は私が運ぶ」
鯉のぼり内裏に肩を貸すのは、子竜であった。
どうやら、抜け道を使ってきたようだ。
「香澄ちゃんは他のサーガレンジャーのみんなを連れて脱出して」
「…………ええ。ここから先は、お任せしたほうが良さそうね」
スペックだけでは計れない力の差。
ガネーシャはそれを実感した。
ここから先は自分を含め、付いていける段階ではないだろう。
しかし、彼女達はその甘さゆえに苦しむだろう。
いつか、遠くない未来で。