甦った大神龍が、終止符を打つためにゴーマ宮を攻撃する。
その様子を下にいる戦闘機総督と軍艦提督は狼狽えることなく眺めていた。
「これで元老院や阿古丸が死ねば…………」
「我らの天下だな」
先の演説でゴーマ15世が死亡したのが判明した。
ならば、大幹部である元老院と血筋であるシャダム阿古丸が死ねば、残ったゴーマを牛耳れる。
「大連者は総攻撃して斃さば、ゴーマの勝利となり大神龍は去るはず」
高笑いをする2人。
それを黙って砲撃団は視ている。
「うおっ……閣下っ!」
「どうした?」
「レーダーに2つの反応!」
索敵を怠らなかった部下がその存在を報せる。
すぐ後に、幾つもの反応が上空より接近していた。
氷柱…………雷を帯びた氷柱が降ってきたのである。
艦隊はその氷柱を浴び、戦闘不能に陥ってしまう。
更に、崖の上からシシレンジャーとテンマレンジャーが降りてきたのであった。
「なるほど。幻を見せてそれを攻撃させ、自分達は殺られたように欺いたか」
戦闘機総督はすぐにカラクリを見抜いた。
典韋をも退けた実力は、本物のようだ。
「ならば、我らが直々に相手しよう」
戦闘機総督が浮いていく。
機関銃を手にし、臨戦態勢へと移る。
同じくして、軍艦提督も両手に大砲を構えた。
両対の二門の砲を携え、更に全身の砲を出す。
大小合わせて、25の砲門が2人を狙う。
「集中砲火を浴びたらヤバい……」
「ここは分かれよう!」
火力を分散させるため、両者は2手に分かれた。
天狼トンファーを回しながら、テンマレンジャーは戦闘機総督へ向かってジャンプをした。
「らあァッ!」
トンファーの棍が空をかすめる。
自由に翔べる戦闘機総督の前には、接近戦を得意とするテンマレンジャーは不利となるのは明白であった。
「フンッ!無謀なのは勇気ではなく、阿呆がやることよ」
機関銃がテンマレンジャーを襲う。
棍を回転させるが、強い妖力が籠った弾丸を弾ききれない。
「うぐっ…………」
そのまま落下し、トンファーで地を砕いて衝撃を逃がした。
「野郎……」
顔を上げるテンマレンジャー。
しかし、その目線の先には飛来する物体があった。
「いっ!?」
一目でわかる。
あれは爆弾だ。
テンマレンジャーは走った。
着弾すると、包まれた妖力が爆発と同時に放たれる。
直撃ではなくとも、妖力を含んだ爆風がテンマレンジャーにダメージを与えていく。
脚の動きが衰えていき、テンマレンジャーは炎に囲まれてしまった。
「くそ…………」














大砲と機関砲による砲弾の嵐。
シシレンジャーは氷による冷却を試みるが、あまりの熱量に間に合わない。
単純な火力だけで、逃げ惑うが精一杯であった。
「グハハハッ!。手も足もでまいて」
砲門に装填される″雷撃拳″。
かつて大筒軍曹が陣を瀕死に追い込んだ、強力な砲拳である。
大筒軍曹は一発限りだったが、軍艦提督は妖力が続くなら無制限に発射できるのだ。
「くらえいッ!″無尽雷撃防弾雨″」
大小合わせ、初撃で25発もの″雷撃拳″が迫る。
氷の壁を張って誘爆を誘う。
しかし、すぐにまた撃たれる。
シシレンジャーは山の陰へと逃げるが、岩山ごと吹き飛ばそうと撃ち込み続けられる。
「う、うわぁぁァッ!!」










そこには、炎が2ヶ所あった。
幼い命を包む。
両督はその炎を見つめる。
「もはや肉体の一片もあるまい」
これだけの火力を浴びて生きていたら、もはや化け物であろう。
「さて、生き残ったゴーマの民を先導せん」
両督は不安に陥っている民を取り込もうと、去ろうとする。
しかし、その先には氷壁が突如出現した。
「何!?」
驚く軍艦提督だが、戦闘機総督には空から見えていた。岩から現れたシシレンジャーが。
いや、鎧を纏い、シン・シシとなっていた。
同じく、炎を吹き飛ばしてシン・テンマが出てくる。
「ここで殺られるわけにゃあ行かないんだよッ!」
戦闘機総督は機関銃と爆弾でシン・テンマを狙う。
けれども、雷速で移動するシン・テンマに触れることはない。
気がつかない間に空へと迫り、トンファーで背部を突き砕く。
「ぐぅ……」
落下していく戦闘機総督。
シン・テンマは気力を引き出し、更に降下していく。
「潤雷星奥義・″青天の霹靂″ッ!!」
口にした瞬間、シン・テンマは地上にいた。
潤雷星奥義・″青天の霹靂″とは、雷を纏い、限界を超越して雷光速で敵を貫く、必殺技である。
「ダイレンジャーの奥義はなぁ、絶対回避不能技だぜ」
1分を過ぎ、テンマレンジャーに戻る。
黒焦げになり、腹を抉られた戦闘機総督は空中で爆散したのであった。






軍艦提督の砲撃が通じない。
シン・シシは狛犬斧と獅子鉞を手に向かってくる。

「なぜ通じない……」
機関砲を撃つ。
すると、シン・シシの直前で凍結して、落下したのだった。
そこで気づいた。
あれは攻撃そのものを防いでるわけではない。
冷気のバリアが、熱エネルギーを吸収しているのだ。
ならば、星纏装の制限時間まで待つのみ。
あと、10秒程のはず。
シン・シシもそれを理解し、巨大な冷気の玉を生み出した。
絶対零度を圧縮し、その限界さえ突破したものである。
触れた瞬間に、物質を崩壊させる威力がある。
「くらうかァッ!」
一斉射撃で冷気の玉を攻撃する軍艦提督。
ゴーマきっての火力で、相殺しようというのである。
「ぬおおぉぉッ!!」
迫る冷気。
しかし、眼前で破裂した。
もう時間は経過した。
ならば、もう防ぐことは出来ないはず。
「小僧、これで終わ…………」
シシレンジャーが走ってくる。手には、狛犬斧を持っている。
しかも、赤く燃えているかのようだ。
「…………まさか……」
シン・シシは熱を奪っていた。
では、その奪った熱はどこへ行った?
その答えが、狛犬斧の色だとしたら……。
軍艦提督は急いで砲を撃とうとする。
しかし、撃つことが出来ない。
冷気の影響で、砲身が凍結していたのである。
「何………」
「だああぁぁぁァァッ!!」
ジャンプしたシシレンジャーが、両手で勢いよく飛び上がり、斧を振り下げた。
軍艦提督に食い込み、その傷口へと熱が入っていく。
内部へと入った熱が、軍艦提督の肉体を膨張させていく。
蝕むように、それも急激に。
急いで離れるシシレンジャー。
その直後に、軍艦提督は大爆発した。
突風ともいえる爆風が、辺りの木々を揺らす。
シシレンジャーとしても、予想以上の威力であった。
軍艦提督の火力をそのまま圧縮したのだ。
本来ならば、シャダムにとっておきたかったが……。
「正夫ッ!」
テンマレンジャーが駆け寄る。
お互いに強敵を斃した。
その代償に切り札を使ったが、今はコウ達に合流しなければ。