顔良と戦う麒麟連者。
阿古丸の放送を聴いてなお、立ち向かってくる。
「なぜ来るんです?」
「奴はゴーマを追放された身だ!。今さら、戻ってきたところで!」
やはり、上手くはいかない。
麒麟連者はダイレンロッドにヤイバーを付け、構えた。
「なら、斃すよ。天時星・″時転矛″」
時計回りにダイレンロッドを回転させる。
その後、顔良の胸へと突き刺す。
怯む顔良。すぐに再び胸へと矛が入り込んだ。
「何…………だ?」
秒、いや、一瞬一瞬に矛が自身の躰を貫いている。
時間…………そうだ。
自分と、麒麟連者の流れる空間が違うのだ。
何撃、何十撃受けたかわからない。
顔良はその重い躰を沈めたのだった。
その顔良が斃れた先で、文醜は天馬連者と戦っていた。
ダイレンロッドを叩きつけられ、怯む文醜。
そこに、天馬連者は追い打ちをかけていく。
「天重星・″重力回転落とし″ッ!」
回転蹴りを連続で浴びせる。
徐々に重力が脚部にかかり、その威力が上がっていく。
最後にカカト落としで、文醜の頭部を潰した。
そのまま絶命し、近衛兵はほぼ壊滅したのであった。
「片づいたな」
「ええ。では、急ぎましょう」
2人は、目の前にある″天上の間″へと繋がる扉を前にしている。
中にはコウと阿古丸、そしてシャダムがいるはずだ。
「よし、行くぜ!」
「待て」
入ろうと意気込んだ先に、一人の男がいた。
「君達が当代の大連者だな?。私は元老院・劉備大政大臣」
自らの武器である干将・莫耶の双剣を手にした。
「おいおい、さっきの脳筋の奴らよりは話が通じそうだったのによ」
優しそうな割に、融通がきかないのかもしれない。
相手はノコギリ大僧正と同格。あの時とは違うとはいえ…………。
「…………覚悟せよ」








″待たれぃッ!″











両者の間に、声と共に割って入る存在があった。
防具を付けた孫策、2メートル以上はある巨大な刀を背負った周瑜がきたのである。
「ここは我らに任せよ」
天馬連者は、すぐに理解した。
阿古丸に同心する者達に違いない。
恐らく、劉備とは同等の強さであろう。
「任せたぜ」
天馬連者と麒麟連者は扉の前に行く。
その奥で、孫策は拳を突き出した。
その拳圧は、劉備を弾き飛ばした。
遠くまで飛ばされたものの、すぐに体勢を立て直す。
「自暴自棄になったか、劉備殿」
元老院において、文官の最高権力である劉備。
主を失い、信ずるべき大義を失ったように思える。
「劉備殿、ゴーマはシャダムが造った泥人形だったのだ」
「泥人形?」
「すべてはシャダムが、″あれ″を手に入れるためのシナリオだったのだ」
阿古丸から聞いた真実。
怪しいと思っていたことへの確信がとれたのだ。
古代の文献が幾つか消えていたのも、納得がいく。
あれには、魂を吹き込んで傀儡とする術があったのだから。
「我らと、共に新たなゴーマで生きようではないか」
「…………」















幾つもの剣を折った。
何回も剣を当てた。
それでも、地に膝をつけてるのは自分であった。
「く…………」
青龍月刀は、刀剣元帥の召喚した刀のどれよりも強い。
でも、通じない。
理由は簡単だ。
刀の質だけでは覆せない妖力の差。
それに伴う刀剣元帥の剛性。
つまり、青龍月刀を上回る現在そのもの。
世界最高の剣といえるだろう。
「あなたはこれだけ強いのに…………なんで、まだ古いゴーマにしがみつくの?」
阿古丸の演説を聴いた。
彼のような武人ならば、シャダムを討とうとすると思っていたが。
「ワシが将たりえるのは、このゴーマの中にあってこそ」
血も、力も、誇りもゴーマと共に培ってきた。
今さら、生き方を変えれない。
いや、武人なればこそ…………。
「生きるも、死ぬも、ワシの道の上よ」
譲れない生き方がある。
ホウオウレンジャーからすれば、理解は出来ない。
ただ、一つ…………。
刀剣元帥は死ぬもやむを得ないと考えているのはわかっていた。
もはや、ここに自分の居場所はないだろうと思っているだろう。
シャダムを討ち、阿古丸をも倒して自身が天下を獲ろうとは微塵も思っていないだろう。
古き者である自分…………新しい者に…………。
「あたしは…………それとは関係なくあなたを斃すッ!」
「そなたの剣は愉悦の剣…………ワシを討つのはそんな剣ではない。だが…………ここまで戦った事に敬意を以て、応えよう」
刀剣元帥は地より、一刀を取り出す。
波のように、歪んだ剣。
「″大寒波″。今はフランベルジュと呼ばれておったか」
波のように歪んだ剣・フランベルジュ。
その原型と呼べる魔剣・″大寒波″。
刀身の太さは一般的なフランベルジュの3倍はあるだろう。
「ワシの持つ剣では、最も殺傷力がある。そちをこれで斬ってしんぜよう 」
大寒波を持ち、殺気が強まった。
今度こそ、本気で殺しに来たんだ。
しかし、何だろう。
この気持ちは、この高揚感は。
目の前に立つのは、ゴーマ最強の武人。
恐怖以上に歓喜がある。
この男を斬りたい、超えたい。戦いたいと。
「鳴水星…………」
もはや、刀を折れはしない。
ならば、勝機はただ一つ。
相手が剣を振るう前に、自分が相手を斬ること。
それには、最高速度での一撃必殺しかない。
「″天竜″ッ!″」
刀から水が逆噴射し、それに乗じてホウオウレンジャーも浮き上がる。
空中で回転し、そのまま勢いを増していく。
接近し、回転を加えた空中居合い斬り。
水飛沫が弾ける間を刀が通り抜けていく。
その間に、大寒波が。
やはり読まれていた。
だが、ならば大寒波ごと叩き斬るしかない。
「ハアァッ!!」
 






金属音。
廊下に響き渡る程の音がした。















受け止められた。
ホウオウレンジャーはすぐに着地して、突く。
刀剣元帥も同じように、いや、青龍月刀に向かって刀を出した。
当たった瞬間、青龍月刀の軌道はずれた。
しまった。
波のように歪んだ剣。
その歪みが刀を引っかけ、弾いてしまったのだ。
そのままマスクを弾き飛ばし、由貴の顔に傷をつける。
もはや、間合いはない。
急いで青龍月刀を引っ込め、正面に構えた。
そして、刀剣元帥の一刀が振るわれた。
「…………ヌンッ!」
再び金属音。
床からも、小さな金属音。
火花と共に、由貴は崩れ落ちた。
桃色のスーツは裂かれ、辛うじて繋がっている繊維。
それでも、由貴の幼い血がダラダラと流れていく。
由貴の視線には、右手の青龍月刀が映っていた。
短い。
折れた。
刀身の半分は空を舞い、斬撃武器として使うことは、もうできない。
「か……」
刀剣元帥は武器を下ろした。
武器を持たない者とは戦わない。
それに勝負は決まった。
ダイレンスーツは既に崩壊寸前。むしろ、保っていることに驚いているくらいだ。
「…………まだ……」
これだけ距離が詰まった。
由貴は折れた刀で、刀剣元帥の脇腹を斬りにいく。
カツン、という音。
斬るばかりか、攻撃ですらなくなっていた。
「もうよせ」
カツン、カツン。
何度も続ける。
「往生際をわきまえぬか」
惜しい。
とはいえ、ここで見逃してもシャダムに討たれるだけだろう。
その気骨を評し、再び大寒波で由貴の左袈裟を斬りにいく。
「あぐ…………」
ダイレンスーツがそれを止めた。
ただ、衝撃だけは緩和せずに由貴に伝わる。
血ヘドを吐く。
肺が潰れた。
そして、刀が力強く地へと向かう。
波のような刀だ。
ノコギリのように連続して、ダイレンスーツが削られていく。
そして、遂には由貴の躰へと刃は通った。
スーツは消え、幼い躰に戻った由貴は自らから噴いた血の海へと沈む。
もはや、痛みはなかった。
苦しい。
息ができない。
青龍月刀も、放してしまって転がっている。
負けられないのに、敗けたくないのに。
由貴は届くはずのない、青龍月刀へと手を伸ばす。
あれがないと、戦えない。
既に、正気を保ってはいられなかった。
見かねた刀剣元帥はレイピアのような剣を出す。
そして、うつ伏せの由貴へと刺した。
心臓を貫き、破裂したように血が拡がっていく。
由貴は、事切れた。