ずっと戦ってきた。
クジャクとの因縁を除いても、コイツは自分が討ちたい。
孔雀連弩を下げ、獅子連者と鳳凰連者に譲る。
ガラもまた、剣を持って戦う姿勢を見せる。
「行くぞ、大五・リンッ!…………ハアァァッ!!」
向かってくるガラ。
獅子連者は、鳳凰連者にスターソードを貸してもらい、二刀を構える。
「天幻星・″二刀孔雀斬り″」
腕に幻をかけて幻惑させ、一気にその刃を浴びせる技だ。
軌道が読めない。
だが、ガラにはそれは関係なかった。
獅子連者を殺すことさえできれば。
「ハアァァッ!!」
「………せいッ!」
ガキィィン、という金属音。
ガラの剣が空を舞う。
そこへ、鳳凰連者が飛び上がり、剣を掴み取った。
そのままガラの背後へ着地し、首筋へと剣を突き立てた。
獅子連者の剣と合わさり、逃げ場など一切無かったのである。
「おのれ……大五、リン…………」
「覚悟しろ、ガラ」
ここでクジャクの仇を討つ。
そうすれば、クジャクもきっと……。
″大五…………大五…………″
この声は。
パサッ、と落ちる形見でありるクジャクの羽。
それが浮き、山の頂へと昇っていく。
それによって生じた気力が転身を解除させられ、大五達はその頂を見つめる。
そこには、孔雀明王となったクジャクがいたのであった。
「クジャク!」
ガラも思わず立ち上がった。
死に追いやった親友。
まさか、再会するとは。
「クジャク、なぜ現界を?」
「あなた達に真実を伝えるため。…………ガラ、あなたの魂は既に昇天しているということを」
『!?』
昇天、つまりは既に死んでいるということ。
「輝けるガラァァァ」
クジャクがそう言うと、天より光と共に降り立つ女性がいた。
「!?。ガラ…………?。まさか…………」
そう、その女性はガラと瓜二つだった。
違いはクジャクと同じく、天女のような白い羽衣を纏っている。
それを抜きにしても思わず、何度も見返してしまう程だった。
「あなたは本来、6000年前に死んで…………悔い改めた魂は天上界にいったの」
「馬鹿な…………私はこうして生きている!」
ガラは主張する。
おかしいではないか。
あらゆる記憶、クジャクとの因縁、すべて自分は知っているのだから。
「それはシャダムが再現した本物の記憶。そう、お前はシャダムがこの世を手にするために用意した…………″泥人形″に過ぎない 」
「ど、泥人形…………」
シャダムが再現した記憶。
疑問が無かったわけではなかった。
ザイドスが泥人形であったこと。
いや、もっと前からだ。
クジャクが死んだ事を悲しみ、救ってくれた事に感謝さえしていたはずなのに。
いつの間にか、それを考えなくなっていたのだ。
感謝どころか、悲しみさえも。
そして、自分に言い聞かすように…………。
ザイドスが死んだ時に、頭を過りながらも、煮え切らない程に辿り着かなかった結論。
もしかしたら、自分も…………。
「愚かな泥人形よ。私の偽物よ」
″本物″のガラは気力を溢れさせる。
本来、ダイ族であるガラが使うのは不思議ではないのだが…………。
「元の土に還れッ!」
″本物″のガラが言うと、ガラの躰が震えた。
「!?」
次の瞬間、脚の感覚が無くなった。
ガラは下を見てしまう。
そこには、脚を型どった泥があったのである。
しかも、それは1秒前までは間違いなく自分の脚であったのに。
「うわああああぁぁぁぁぁァッ!!」
腕も指先から泥化していき、重みに耐えられず脚も崩壊してしまう。
「嘘よ、こんなの嘘よぉぉッ!」
蔑んでいたはずの人間。
それ以下、いや、命でさえないという事実が、ガラを絶望に突き落とす。
「すべてはこの世を我が物にするための、シャダムやの遠大なる陰謀だった」
クジャクは哀れみすら抱いていた。
自らが意思も、肉体も、命さえも、すべてが幻であったと知らされたなら。
「あああぁぁ…………あああぁぁ…………」
それが止まることはない。
変わるのではなく、ただ還っているだけなのだ。
腕も、胴も、胸までも泥と化していく中、ガラは鬼の如く形相で大五達を睨む。
「例え私が泥人形でも……」
この世のすべてに絶望したという表情。
「私はお前達を、永遠に憎むッ!」
そこに命はなくとも、確かに魂はあったと主張したいのか。
はたまた、本当に憎悪しているのか。
もはや大五達にとって、いや、ガラにとっても意味はないのだろう。
ただ、悲痛な叫びでしかない。
「ぐぅあッ!」
躰のすべてが泥と化した。
原型を留めているのはなく、頭部だけが泥になってなお、存在を保っている。
あまりの酷さに、まどかは目を背けてしまう。
「私は、ゴーマの…………ガラなのだ…………ああ…………ああ…………」
確かにいた、ガラという存在があったと叫ぶ。
しかし、最期の時は来た。
目玉がギョロッとしながら、泥の玉と化していた頭部は崩れた。
「ガラ…………」
あまりにも無惨な最期。
敵ではあっても、残酷すぎる結末に、大五は同情とも違う、何とも言えない感情を抱いたのであった。
「風よ……泥になった偽のガラを、永遠に吹き飛ばせ」
″本物″のガラは気力で風を起こし、ガラであった泥の塊を除去する。
その泥は周囲の土と同化し、何も残らなかった。
それを見届けた大五は、クジャクを見上げる。
「クジャク、お前はガラと…………」
「心配しないで大五。私はガラと、天上界で昔のように暮らしているわ」
親友に戻った2人。
手を取り合い、そこにわだかまりは微塵も感じさせない。
「残るはシャダム………しかし、調停者として覚醒した。一刻も早く倒さねば、地球は再び巨大な力に襲われるわ」
「巨大な力?」
思い当たる節はある。
しかし、その力は砕いたはず。
「私はもう二度とあなたに会うことはない。でも、いつまでも天上界から、あなたを見守っているわ」
聖母のような優しい顔と声。
大五が知っている、本当のクジャクだ。
「ああ、クジャク。俺も忘れない。君のことを」
あの時は、ただ悲しくて言えなかった。
会えて良かった。
愛せた事。
愛し合えたこと。
「さようなら 」
「ああ。さようなら」
別れの言葉。
それは、恋人のように。
そう、未練もないように。
笑顔で生きていくために。
クジャクはガラと共に還っていく。
大五はゴーマ宮を見つめる。
今は、前に進まなくてはならない。
シャダムの野望を砕くために。
クジャクとの因縁を除いても、コイツは自分が討ちたい。
孔雀連弩を下げ、獅子連者と鳳凰連者に譲る。
ガラもまた、剣を持って戦う姿勢を見せる。
「行くぞ、大五・リンッ!…………ハアァァッ!!」
向かってくるガラ。
獅子連者は、鳳凰連者にスターソードを貸してもらい、二刀を構える。
「天幻星・″二刀孔雀斬り″」
腕に幻をかけて幻惑させ、一気にその刃を浴びせる技だ。
軌道が読めない。
だが、ガラにはそれは関係なかった。
獅子連者を殺すことさえできれば。
「ハアァァッ!!」
「………せいッ!」
ガキィィン、という金属音。
ガラの剣が空を舞う。
そこへ、鳳凰連者が飛び上がり、剣を掴み取った。
そのままガラの背後へ着地し、首筋へと剣を突き立てた。
獅子連者の剣と合わさり、逃げ場など一切無かったのである。
「おのれ……大五、リン…………」
「覚悟しろ、ガラ」
ここでクジャクの仇を討つ。
そうすれば、クジャクもきっと……。
″大五…………大五…………″
この声は。
パサッ、と落ちる形見でありるクジャクの羽。
それが浮き、山の頂へと昇っていく。
それによって生じた気力が転身を解除させられ、大五達はその頂を見つめる。
そこには、孔雀明王となったクジャクがいたのであった。
「クジャク!」
ガラも思わず立ち上がった。
死に追いやった親友。
まさか、再会するとは。
「クジャク、なぜ現界を?」
「あなた達に真実を伝えるため。…………ガラ、あなたの魂は既に昇天しているということを」
『!?』
昇天、つまりは既に死んでいるということ。
「輝けるガラァァァ」
クジャクがそう言うと、天より光と共に降り立つ女性がいた。
「!?。ガラ…………?。まさか…………」
そう、その女性はガラと瓜二つだった。
違いはクジャクと同じく、天女のような白い羽衣を纏っている。
それを抜きにしても思わず、何度も見返してしまう程だった。
「あなたは本来、6000年前に死んで…………悔い改めた魂は天上界にいったの」
「馬鹿な…………私はこうして生きている!」
ガラは主張する。
おかしいではないか。
あらゆる記憶、クジャクとの因縁、すべて自分は知っているのだから。
「それはシャダムが再現した本物の記憶。そう、お前はシャダムがこの世を手にするために用意した…………″泥人形″に過ぎない 」
「ど、泥人形…………」
シャダムが再現した記憶。
疑問が無かったわけではなかった。
ザイドスが泥人形であったこと。
いや、もっと前からだ。
クジャクが死んだ事を悲しみ、救ってくれた事に感謝さえしていたはずなのに。
いつの間にか、それを考えなくなっていたのだ。
感謝どころか、悲しみさえも。
そして、自分に言い聞かすように…………。
ザイドスが死んだ時に、頭を過りながらも、煮え切らない程に辿り着かなかった結論。
もしかしたら、自分も…………。
「愚かな泥人形よ。私の偽物よ」
″本物″のガラは気力を溢れさせる。
本来、ダイ族であるガラが使うのは不思議ではないのだが…………。
「元の土に還れッ!」
″本物″のガラが言うと、ガラの躰が震えた。
「!?」
次の瞬間、脚の感覚が無くなった。
ガラは下を見てしまう。
そこには、脚を型どった泥があったのである。
しかも、それは1秒前までは間違いなく自分の脚であったのに。
「うわああああぁぁぁぁぁァッ!!」
腕も指先から泥化していき、重みに耐えられず脚も崩壊してしまう。
「嘘よ、こんなの嘘よぉぉッ!」
蔑んでいたはずの人間。
それ以下、いや、命でさえないという事実が、ガラを絶望に突き落とす。
「すべてはこの世を我が物にするための、シャダムやの遠大なる陰謀だった」
クジャクは哀れみすら抱いていた。
自らが意思も、肉体も、命さえも、すべてが幻であったと知らされたなら。
「あああぁぁ…………あああぁぁ…………」
それが止まることはない。
変わるのではなく、ただ還っているだけなのだ。
腕も、胴も、胸までも泥と化していく中、ガラは鬼の如く形相で大五達を睨む。
「例え私が泥人形でも……」
この世のすべてに絶望したという表情。
「私はお前達を、永遠に憎むッ!」
そこに命はなくとも、確かに魂はあったと主張したいのか。
はたまた、本当に憎悪しているのか。
もはや大五達にとって、いや、ガラにとっても意味はないのだろう。
ただ、悲痛な叫びでしかない。
「ぐぅあッ!」
躰のすべてが泥と化した。
原型を留めているのはなく、頭部だけが泥になってなお、存在を保っている。
あまりの酷さに、まどかは目を背けてしまう。
「私は、ゴーマの…………ガラなのだ…………ああ…………ああ…………」
確かにいた、ガラという存在があったと叫ぶ。
しかし、最期の時は来た。
目玉がギョロッとしながら、泥の玉と化していた頭部は崩れた。
「ガラ…………」
あまりにも無惨な最期。
敵ではあっても、残酷すぎる結末に、大五は同情とも違う、何とも言えない感情を抱いたのであった。
「風よ……泥になった偽のガラを、永遠に吹き飛ばせ」
″本物″のガラは気力で風を起こし、ガラであった泥の塊を除去する。
その泥は周囲の土と同化し、何も残らなかった。
それを見届けた大五は、クジャクを見上げる。
「クジャク、お前はガラと…………」
「心配しないで大五。私はガラと、天上界で昔のように暮らしているわ」
親友に戻った2人。
手を取り合い、そこにわだかまりは微塵も感じさせない。
「残るはシャダム………しかし、調停者として覚醒した。一刻も早く倒さねば、地球は再び巨大な力に襲われるわ」
「巨大な力?」
思い当たる節はある。
しかし、その力は砕いたはず。
「私はもう二度とあなたに会うことはない。でも、いつまでも天上界から、あなたを見守っているわ」
聖母のような優しい顔と声。
大五が知っている、本当のクジャクだ。
「ああ、クジャク。俺も忘れない。君のことを」
あの時は、ただ悲しくて言えなかった。
会えて良かった。
愛せた事。
愛し合えたこと。
「さようなら 」
「ああ。さようなら」
別れの言葉。
それは、恋人のように。
そう、未練もないように。
笑顔で生きていくために。
クジャクはガラと共に還っていく。
大五はゴーマ宮を見つめる。
今は、前に進まなくてはならない。
シャダムの野望を砕くために。