ゴーマ宮内部の言論の間には、多くの将兵や元老院が勝者への喝采を贈っている。
次期皇帝に決まったシャダム。
このゴーマにて、元老院ですら及ばぬ玉座に君臨を許された唯一人。
その後継者と決まったのである。



″シャダムッ!シャダムッ!″


勝者を称える喝采。
「皆のもの、聞けい」
勝者を王者と捉えるが如く、ピタリと止まる。
「参謀長嘉挧は死に、ゴーマの正当なる後継者はこの俺に決まったッ!」
再び喝采が始まる。
元々強硬派が主流だった。
これからは穏健派は肩身が狭いどころか、粛清が始まるだろう。
それを予感させるに十分な盛り上がりをしている。
「俺は再び地球を侵略し、ゴーマの世を築いてみせるッ!。者共、期待しておれッ!」
休戦協定を結んだ嘉挧はもういない。
ならば、協定は無効も同じである。
気兼ねなく侵攻ができるというものである。
今までで最高の盛り上がりをしている。
愉悦、とはまさにこの事だろう。
邪魔者を排した後に、自らの天下が到来したのだから。
「シャダムッ!」
歓声の中、それを裂くのは聞き慣れた声であった。
「ガラ、どうした?」
血相を変えて戻ってきたガラ。
青ざめていて、ガタガタと震えている。
「ザイドスが、大連者に殺されたわ」
その場に居合わせた全員が驚いた。
ちょうど、コットポトロが安置していたはずのオーラチェンジャーと″天宝来来の玉″が消えている事に気づく。
「そうか……。それより、俺が次期皇帝に決まった。ガラ、喜んでくれ」
「え……」
何と言った?。
″そうか″、とその一言で済ましてしまうのだろうか。
ザイドスは腹心として、自分に尽くしてきた男ではないのか。
ガラは、シャダムに恐怖を覚えてしまう。
「皆の者、ザイドスの件は残念ではあるが、俺のたむに宴を催し………」











″ズヴゥンッ!!″








「何だ!?」
ゴーマ宮が震えた。
天空で君臨する居城に振動を与えるとなれば……。
「申し上げます!」
慌てて走ってくるコットポトロ。
さっきまでいた方向を指さす。
「大連者です!大連者が攻めてきましたァァッ!!」
「何!?」
早い。
ザイドスが死して、すぐに攻めこんできたとは。
シャダム達が向かうと、本当にダイレンジャー達がいる。
「シャダム……」
今まで戦ってきただけではなく、嘉挧を殺した者。
奴を殺さない限り、平和は訪れない。
龍連者はスターソードを抜き、刃先を向ける。
「シャダム、道士の仇…………とらせてもらうぞ!」
マスク越しではあるが、ダイレンジャー全員の顔はシャダムを狙ったものであった。
それは願ってもいない好機でもあった。
ここでダイレンジャーを返り討ちにすれば、自分の覇道を邪魔する者はいなくなる。
「もはや休戦協定に意味はない…………。ゴーマ次期皇帝の名の下に命ずるッ!。ゴーマ全軍、大連者を撃滅せよッ!!」
シャダムは己が権限を以て、言論の間にいる怪人達へと命令を下す。
「近衛兵、奴らを斃せ!」
赤いスーツのコットポトロが現れる。
剣の構えを見るに、通常のコットポトロ以上の強さなのだろう。
それを率いるは、甲冑のゴーマ怪人が2人いる。
子竜と同族であると伺える容姿で、近衛兵という名に相応しく、ゴツゴツしている。
「顔良、文醜!」
『おおうッ!!』
2人の武将が近衛兵とともにダイレンジャーへ向かっていく。
「みんな、行くぞォォッ!!」
ダイレンジャー全員が抜刀、ゴーマも戦闘態勢へと移行する。
早速、数で勝るゴーマの兵達は取り囲んでいく。
すかさず龍連者と天馬連者がスターソードを重ね、上に掲げた。
『天火星・″稲妻火炎破″ッ!!』
稲妻と炎が巻き起こり、放射状に拡がっていく。
最初に突撃していったコットポトロ達は絶命し、その周囲も被害を受けたようだ。
その隙にと、麒麟連者らがそれぞれ斬りかかっていく。
その先にはピストルの形状をしたゴーマ怪人がいる。
「貴様らはこの″拳銃伍長″が撃ち抜いてやるッ!軍曹の仇だぁぁ」
外見と文句から大筒軍曹の部下だろうか。
「雑魚は邪魔だッ!」
麒麟連者がヤイバーを付けたダイレンロッドを向ける。
そのまま撃たれる前に、銃口へ突き刺してしまう。
「えひッ!」
聞かないような悲鳴を上げ、銃口からは火花が散る。
ガクガクと痙攣が始まり、眼もギョロっと回っている。
「″旋風斬り″」
ホウオウレンジャーによる、大輪剣での攻撃。
そこで拳銃伍長は死んだ。
それからコットポトロによるマシンガンの斉射を防御するために、ホウオウレンジャーによって骸が用いられる。
「怯むなッ!大連者を斃せッ!!」
「申し上げます!小さき大連者が、かんざし女雛の手引きにより侵入した模様」 「何だと!?」












別方向から侵入したキッズ達は、近衛兵との戦闘をしていた。
テンマレンジャーが天狼トンファーを回しながら、殴打していく。
振りかかる剣を砕き、その破片を雷がつたっていく。
その隙間をワイバーンのリンドブルムが飛ぶ。胴体を裂き、その間を通過していく。
「数が多いな」
「敵の本拠地だからな」
今までの戦闘を振り返れば、数では″ジェットマンの世界″でのバイラム・ウォーには劣る。
しかし、不十分ながらコットポトロの割に近衛兵の戦闘力は低くない。
「近衛兵は洗練されるのみではない。コイツらが守るは元老院じゃ」
この奥には元老院がいる。そして、ゴーマ皇帝も。
「コウ、ここは俺と純平で抑える!とっととやってこいよ、ゴーマの親玉を!」
ワイバーンは悟る。経験不足の自分達では、大した力になれない。
デーヴァとの戦いで実感させられた。
ならば、と勝てる彼らを征かせなくては。
「君たちだけでやる気?。あたしも残るわッ!」
マカラも戦線を先に進めるべく、残留を決める。
「正夫、無理はしないでよ」
「いってくるよ、お姉ちゃん」
シシレンジャーは振り返らずに返した。
マカラには、その意味を理解する。
″わかってる″とはいわない。
そうだ。ここは本拠地。
敵を斃すには無理をしてでも…………。
「いつの間に、そんな肝がすわったんだか……」
マカラはドライバーのキーを2回転させる。
撃ち出された光球は分裂していき、雲のように拡がる。
それが近衛兵を取り囲み、一斉に爆発した。
それを合図にし、キッズ達はその場を過ぎていく。
「みんな、また後で!」
ホウオウレンジャーの言葉に頷き、3人は持ち場として武器を構える。
勝利を信じる、自分達のヒーローの勝利を。