「道士ィィッ!」
「おじ様ぁァッ!!」
ダイレンジャーは急ぐ。
キバー号で隠し通路を抜け、中国の奥地へと。
逆3角形になったゴーマ宮を拝謁する亮達。
巨大すぎる。
大神龍の攻撃にも耐えたという強固さを計り知ることができる。
「道士は…………」














静かだ。
誰もいないようだ。
本来ならば、国葬をされるはずの立場だが、断ったのなら当然か。





″大した役者だったよ″






貂蝉か。
すまなかった。






″私と来てくれれば…………″







そうだな。
暗殺の申し出、断らなければ…………。
もう声がない。
去ったようだ。
それはそうか。
許嫁を置いていき、6000年待たせたその末に敗北して死ぬ男にかける言葉などあるまい。
もはや、自分には何もない。
後悔だって、あるものか。










ーーーーーいや、ある









彼らに逢いたかった。
再び、彼らに。
血は繋がらずとも、自らの子どもである大連者に見送ってほしかった。
それはワガママというものかな。
彼らを裏切った身だ。








″道士ぃィィッ!!″







亮の声だ。
幻聴まで聞こえてきたか。










″道士ッ!″
″おじ様ッ!″












「道士、嘉挧ッ!! 」
「…………はぁ…………来て、くれたのか、お前達…………」
眼を開けると、そこにはダイレンジャーの面々がいた。
「すまねえ道士ッ!。俺達、アンタの気持ちも理解せず…………」
「なぜ、お前があや…………まる?…謝らなければ…………ならのは…………たしの…………だ…」
話す度に、喉が震える感覚が無くなっていく。
耳だけは聞こえるために、出しているのはわかるのだが。
亮達も焦っているようだ。
なにせ、腹を貫かれたのだ。
吐き出す血など、とうに枯れた。
「お前達を…………騙し…………裏切り…………その上で敗けた…………」
「いい…………もう、いいんだ……」
強く、優しい人間になった。
もう、自分がいなくとも、彼らはやっていける。
「その上で、頼みが…………。どうか、シャダ…………の…………しん…………を止めてく…………。」
「わかった。わかった…………」
「ゴーマ15世にも…………まだ、大きな、ひみ…………」
「わかっよ、道士…………」
亮が承諾してくれた。
ああ、安心した。
最期まで、お前達には重き荷を託したままだったな。
「道士、アンタの意志は…………″遺志″は俺達が継ぐ…………だから…………だから…………」
何だ?
急に天気が悪くなったのか?
前が見えない。いや、どうやら視力さえ失ったようだ。
この暗闇、怖いものだ。
自分が殺めた者も、自分がそう味あわせたのだから、自業自得かもしれない。
だが、何か、何か。
この虚無の内に、哀しく逝きたくない。












″道士″











「!?」
五感を失い、何をしたかわからない。
腕でも伸ばしたか。
その掌…………重みと″温かさ″を感じる。
「お前達の手か…………」
そうか、この温かさこそ、自分がゴーマに広めたかったものだ。
誰かを愛し、愛される喜びを。
満足のいく生では無かった。
だが、人に触れて味わえたゴーマでは出来ない感覚が、ここにある。
愛する者に囲まれ、後を託して逝ける。
なんと、報われる人生だったかーーーーー













「道士?…………道士ぃィィッ!!」
嘉挧は事切れた。
手を重ねていたダイレンジャー達は、次々に嘉挧の死を実感してしまう。
「うわぁぁぁぁぁァァッ!!道士、道士ィィッ!!!」
将児はその悲しみを行き場を決めることなく叫んでいる。
「道士…………」
知は崩れてしまった。
泣き、呆然と座り込んでしまう。
大五もまた、涙を堪えられないでいる。
「おじ様、眼を…………開けるアル…………」
受け止めきれないリンは、ただ嘉挧にすがりつく。
ただ一人、亮だけは力尽きた嘉挧の手を放さなかった。
自分の前から、また父が消えた。
人生の師であり、父と思って慕った嘉挧が…………。
そう思うと、放せなかった。












道士嘉挧は死んだ。
その悲しみを背負い、ダイレンジャーは最後の戦いへと赴く。
果たして、その決着は!!







つづく