もはや、気力と妖力の供給は期待出来なかった。
嘉挧は一歩たりとも、自力で歩けそうには無い。
「はぁ…………はぁ…………」
眼前にいる者。
そうか。
運命は決まっていたということか。
「頑張ったようだが、これまででだな」
何だ?
遠くにいたはずのシャダムの声が耳元でする。
そう思った瞬間、鎧が割れる。
そうか。妖力で編み出された鎧、自らの妖力が切れれば、発泡スチロールのようなものだ。
シャダムからの妖力波。
妖力が無ければ、気力で。
いや、出ない。
気力さえ尽きた。
「あぐ…………」
妖力波が直撃し、嘉挧は倒れてしまう。
会場の外からは歓声があがる。
もはや、事実上の勝敗は決定したのだから。
「トドメだッ!」
シャダムは走っていく。
遂にこの時が来た。
嘉挧もまた、立ち上がってしまう。
もはや力もない。
生きているのか、死んでいるのかも。
ふふ、亮ならばこんな状況でも諦めない。
少なくとも、目から光は失わないだろう。
自分はこの運命を、自然と受け入れている。
大五にはクジャクの死を受け入れるよう諭したが、よもや自分にハネ返ってきたか。
老いたな。将児ならば、そんな運命関係ないと言うだろう。
それとも、知のように静かに反抗へと移すか。
どれにしても、自分には何も出来ない。
では、何かやり残したことはあるか?
″道士ッ!!″
リンのように、誰にでも優しくしてやりたかった。
最後の最期に、彼らには悲しい思いをさせてしまった。
ああ、謝りたい。
今までの事は報われたんだ、すまなかったと。
あの、大事な自分の子どもたちに。
ーーーーーそうだった。彼らは、自分の…………。
「輪廻の理?」
洞窟の中は異空間となっており、キッズ達は浮遊しながら進んでいく。
道中、雛は閻魔大王から聞いた事を話していた。
「輪廻の理とは、ある人物が時間の流れをある程度固定化させ、それを世界の理としたものじゃ」
雛が説明するには、こんな歴史があったらしい。
調停者が歴史を変えようとする一方、ある者は自分の理想の世界にするために、世界の理に干渉したのだという。
″ジェットマンの世界″でキッズ達は思い知らされたことだが、一つの時間軸の流れは強大なまでの縛りがある。
幾つもの並行世界には、それぞれが″そうである″という理由がある。
″あの時こうしていたら″、″あの時そうしていなければ″、そういった因果の重なりがそれぞれの世界を構成させる。
別の世界から干渉があっても、戻そうとする″修正力″が働いたなら、その世界は本来の流れに戻る。
完全に一緒でなくとも、あまり変化がないように″変化することで維持″をするのだ。
ある者は、それを利用した。
どうしようもない悲劇を、変えようのない結末を回避する。
因果律を操作し、最悪の悲劇から世界を守ろうとした。
逆に、それは調停者との戦いの始まりになった。
歴史へ挑んだ調停者が望まぬ結末ならば、再び逆行をしてやり直す。
ある者が望まぬ結末なら、やはりやり直す。
そうやって、時間逆行とタイムパラドックスを繰り返しながら、少しずつの変化をして誕生したのが、今の世界なのだという。
「デーヴァもまた、何度も甦っては破れていたようじゃ。ある者に、な」
「ある者って、誰なの?」「わからぬか?。因果に干渉できるなら、それは人ではない。人を超えたーーーーー」
キッズ達はハッとした。
人でありながら、いや、神でありながら人であろうとする人物を。
「最悪の悲劇を回避するために、ある程度の不幸を受け入れなければならなかった」
それが、大神龍の襲来や嘉挧の死だというのか。
「そんな、″アイツ″が…………コウがこんなのを……」
「妾達が知っている奴とは違うのじゃ。恐らく、その時間軸は最悪の悲劇を迎え、その回避のためにやむを得なかったのだろう」
時間を変えれるなら、どうだろう。
訪れた結末を、使ってはいけない禁断の力で変える。
ありもしない、そんな夢の力を持ってしまったならーーーーー。
雛は、話を続ける。
「この時間軸も、やはり大筋は輪廻の理によって導かれた歴史じゃ。しかし、今回はそれを変えるチャンスがある」
「チャンス?」
「齊天大聖と無間覇王じゃ。理を打ち破る二傑がおる」
数々の歴史で、齊天大聖が現れたのはほんの一握りだという。
理を作り上げたのがコウならば、砕くのもまた。
コウも自覚してるのではないだろうか。
悪と断罪しきれず、正義にしては愚かしい選択の果て。
変えるには、自分がやるしかないと。
「それで、調停者とは誰なの?」
香澄からの指摘。
そう、コウと戦ってきた調停者の名前。
当然、雛は知っているはず。
「そいつは、そいつはの…………着くぞ」
嘉挧は一歩たりとも、自力で歩けそうには無い。
「はぁ…………はぁ…………」
眼前にいる者。
そうか。
運命は決まっていたということか。
「頑張ったようだが、これまででだな」
何だ?
遠くにいたはずのシャダムの声が耳元でする。
そう思った瞬間、鎧が割れる。
そうか。妖力で編み出された鎧、自らの妖力が切れれば、発泡スチロールのようなものだ。
シャダムからの妖力波。
妖力が無ければ、気力で。
いや、出ない。
気力さえ尽きた。
「あぐ…………」
妖力波が直撃し、嘉挧は倒れてしまう。
会場の外からは歓声があがる。
もはや、事実上の勝敗は決定したのだから。
「トドメだッ!」
シャダムは走っていく。
遂にこの時が来た。
嘉挧もまた、立ち上がってしまう。
もはや力もない。
生きているのか、死んでいるのかも。
ふふ、亮ならばこんな状況でも諦めない。
少なくとも、目から光は失わないだろう。
自分はこの運命を、自然と受け入れている。
大五にはクジャクの死を受け入れるよう諭したが、よもや自分にハネ返ってきたか。
老いたな。将児ならば、そんな運命関係ないと言うだろう。
それとも、知のように静かに反抗へと移すか。
どれにしても、自分には何も出来ない。
では、何かやり残したことはあるか?
″道士ッ!!″
リンのように、誰にでも優しくしてやりたかった。
最後の最期に、彼らには悲しい思いをさせてしまった。
ああ、謝りたい。
今までの事は報われたんだ、すまなかったと。
あの、大事な自分の子どもたちに。
ーーーーーそうだった。彼らは、自分の…………。
「輪廻の理?」
洞窟の中は異空間となっており、キッズ達は浮遊しながら進んでいく。
道中、雛は閻魔大王から聞いた事を話していた。
「輪廻の理とは、ある人物が時間の流れをある程度固定化させ、それを世界の理としたものじゃ」
雛が説明するには、こんな歴史があったらしい。
調停者が歴史を変えようとする一方、ある者は自分の理想の世界にするために、世界の理に干渉したのだという。
″ジェットマンの世界″でキッズ達は思い知らされたことだが、一つの時間軸の流れは強大なまでの縛りがある。
幾つもの並行世界には、それぞれが″そうである″という理由がある。
″あの時こうしていたら″、″あの時そうしていなければ″、そういった因果の重なりがそれぞれの世界を構成させる。
別の世界から干渉があっても、戻そうとする″修正力″が働いたなら、その世界は本来の流れに戻る。
完全に一緒でなくとも、あまり変化がないように″変化することで維持″をするのだ。
ある者は、それを利用した。
どうしようもない悲劇を、変えようのない結末を回避する。
因果律を操作し、最悪の悲劇から世界を守ろうとした。
逆に、それは調停者との戦いの始まりになった。
歴史へ挑んだ調停者が望まぬ結末ならば、再び逆行をしてやり直す。
ある者が望まぬ結末なら、やはりやり直す。
そうやって、時間逆行とタイムパラドックスを繰り返しながら、少しずつの変化をして誕生したのが、今の世界なのだという。
「デーヴァもまた、何度も甦っては破れていたようじゃ。ある者に、な」
「ある者って、誰なの?」「わからぬか?。因果に干渉できるなら、それは人ではない。人を超えたーーーーー」
キッズ達はハッとした。
人でありながら、いや、神でありながら人であろうとする人物を。
「最悪の悲劇を回避するために、ある程度の不幸を受け入れなければならなかった」
それが、大神龍の襲来や嘉挧の死だというのか。
「そんな、″アイツ″が…………コウがこんなのを……」
「妾達が知っている奴とは違うのじゃ。恐らく、その時間軸は最悪の悲劇を迎え、その回避のためにやむを得なかったのだろう」
時間を変えれるなら、どうだろう。
訪れた結末を、使ってはいけない禁断の力で変える。
ありもしない、そんな夢の力を持ってしまったならーーーーー。
雛は、話を続ける。
「この時間軸も、やはり大筋は輪廻の理によって導かれた歴史じゃ。しかし、今回はそれを変えるチャンスがある」
「チャンス?」
「齊天大聖と無間覇王じゃ。理を打ち破る二傑がおる」
数々の歴史で、齊天大聖が現れたのはほんの一握りだという。
理を作り上げたのがコウならば、砕くのもまた。
コウも自覚してるのではないだろうか。
悪と断罪しきれず、正義にしては愚かしい選択の果て。
変えるには、自分がやるしかないと。
「それで、調停者とは誰なの?」
香澄からの指摘。
そう、コウと戦ってきた調停者の名前。
当然、雛は知っているはず。
「そいつは、そいつはの…………着くぞ」