「″アルビオンブレイカァ ァッ″!!」
デーヴァの腹へと刺し、白銀に光る槍から魔力が注がれていく。
グリグリとするため、焼かれながら抉るという凶悪な技である。
本来ならば、突き刺して終わるのだが、父が子どもの頃に観ていたというヒーローのDVDの影響か、突き刺した上で魔力を流しているのである。
「ぐぅぉぉ…………ッツァ!」
ユニコーンを無理矢理引き剥がし、殴り飛ばす。
とはいえ、既にかなりのダメージを負っている。
「私が……こんな…………」
手を見ると、砂のように零れ落ちていくものがある。
これは仮そめの肉体が朽ち、灰化しつつあるのだ。
今までに数万人を喰らったが、完全な受肉には到らなかった。
いや、ここまでダメージを受けるなど想定していなかった。
「貴様らッ!許さん…………」
羅刹に再び力を込めていく。
不発に終わった″天地乖鸞″。
一度放てば、秋葉原一帯は灰塵に帰すであろう威力がある。
「させないッ!」
何か大技がくると察し、シシレンジャーがデーヴァの周囲の空気ごと氷結にかかる。
「くだらんッ!」
気だけで砕き、尚も溜める。シシレンジャーはでーす合わせ、気力を込めていく。
「気力ッ!」
そう言うと、デーヴァの傷口に付着した氷が拡がっていく。
「ここ脅しだなあァァッ!」
怒りに任せ、一気に気力と妖力を解放する。
羅刹が紅に輝き、充満したことを意味していた。
「塵芥となり果てるがいいッ!″天地乖鸞″ッ!!」
螺旋状のエネルギー波が周囲を飲む。
歩行者天国になっている位置から、秋葉原駅までは瞬時に崩壊・溶解をした。
もはやクレーターとも云える穴を作り出しており、生命の波動を感じさせることはない。
「ハァ…………ハァ…………終わったか」
大分力を使ってしまった。
体の灰化が侵攻している。
早く東京駅辺りにいき、人間を喰らう必要がある。
だが、ここに十万年に及ぶ因縁が終結したのだ。
そうだ。
どんな望みも、願いも、神のさじと力で崩れる。
運命の子という神を倒したことで、自らが新たな神であると証明されたのだ。
「そう、これからは私が…………」

















!!?









何だあれは?
デーヴァの視線に入ってきたのは、右に気力と左に妖力のオーラを翼のように展開するスーパーリュウレンジャー。
その横には、シールドのようなものに包まれたダイレンジャーキッズとサーガレンジャーが浮いている。
ダイレンブレスレットにある気力とプラズマスパークエネルギーを用いて、空中浮遊とシールドを作ったのである。
「さっき確かに…………!!?。シシレンジャーかッ?」
何と初歩的な戦術だ。
氷は時間稼ぎ。本命は、自分たちの幻を見せ、シールドを張ることだった。
「デーヴァ、お前は神なんかじゃない」
スーパーリュウレンジャーは溜まりに溜まった神力を白虎真剣に宿していく。
「破壊しかせず、何も生み出さないお前は神じゃない。過去にとらわれ、今を見ないお前に明日は創れない」
過去の歴史からキッズ達の実力を計っていたデーヴァ。
しかし、その通りでは無かった。
ダイレンジャーキッズ達は明日を常に見ている。
過去ばかりしか見ない者が、先を歩もうとする者に勝てるはずがない。
「もうお前が次の世界に行くことはない。ここで、消滅させるッ!」
すべてを断ち切るため、スーパーリュウレンジャーは降下していく。
なけなしの力で
「く…………天地乖…………」
「″吼牙一閃″ッ!!」
相手が技を発動する前に、全力で斬断する。
「があぁ…………か…………」
斬られた胸元から生気が溢れていく。
最早肉体を失い、行き場のない魂が昇天していく。
果たして彼らが救われたのか、それは想像でしかない。
ただ、これからはデーヴァに脅かされることはない。
そう確信が、スーパーリュウレンジャーにはあった。
「終わったなデーヴァ」
デーヴァの躰は崩壊していく。
齊天大聖になれば、この程度ならばすぐに始末できただろう。
しかし…………。
「香澄ちゃん」
「?」
「君がトドメを」
「!!?」
そう言われたガネーシャ。
そうか。スーパーリュウレンジャーは、敢えて齊天大聖にはならなかった。
環境に配慮してでもあるが、何よりサーガレンジャー・中でもガネーシャを立ち直らせるためだ。
「…………ええ」
彼らだって、この悪魔の介錯をしたいだろう。
だが、敢えて自分に。
″今″の世界で、デーヴァを斃して晴れるのは、自分だから。
ガネーシャバスターに連結し、ゆっくり近づいていく。
1回、2回、3回とキーを回し、魔力を込めていく。 「″グランエンド″」
そう。
父の無念、願い。
すべて、ここに果たす。
「待てッ!私は神…………この尊い存在を消そうと…………」
「お前が見下す人の命で永らえる…………そんなのが神であるものか。果てなさい」
引き金が弾かれる。
魔弾はデーヴァを貫いた。
灰になり、崩れ落ちる。
僅かに輝いた魂を、スーパーリュウレンジャーが斬り裂く。
転身を解く面々。デーヴァの魂が、消えていくのを見る。











終わった。
喜ぶキッズ達の中、香澄はただ佇む。
終わってしまった。
自分が戦った目的も完遂した。
ふと思う。
なぜ彼らは笑う?。
大望果たさば笑うのは人として普通である。
普通でないのは自分か。
復讐という大それた事をした後には虚無感。
よく綺麗事に″復讐は何も生まない″というのがあるが、ちょっと違うらしい。
復讐は最初から、何もない憎しみだけなのだ。
その憎しみが晴れてしまえば、心を埋めるものが何もない。
行くべき場所も、何を成せるかさえわからない。
「香澄ちゃん」
コウが近づいてくる。
ハッ、と目をそらしてしまう。
「あたしは、貴方達にヒドいことをした。一緒に戦った仲間達にさえ」
「そうだね」
否定しない。
却って、庇われた方が苦しいので助かる。
「みんなに、ごめんなさいと伝えて」
「直接言うんだ」
「もう、どうやって謝ればいいのよ。それにわからないの。これからどうしたらいいのか」
道は父が示した道だ。
ならば、この先はどうなる?
進めやしない。
道がなければ、歩むことなどできない。
「貴方ならあたしに教えてくれる?」
逃避だ。
もはや、何もわからない自分からの―――。
「僕に、君が進んでいい方向なんてわからない。何を言われても、最後は自分で道を決めて歩かなきゃいけないんだ」
ほら、綺麗事だ。
術をもたない者は、立ち止まるしかないというのに。
「君が歩いてきた道は、確かにお父さんに言われたものだ」
「ええ。だから、あたしには…………」
「でも、歩いてきたのは君だ。それは君が歩いてきた、確かな道なんじゃないのかい」
「…………私の道?」