妖力だけならば、霊力を浴びたシャダムに分がある。
しかし、嘉挧は気力をも会得しているため、使い分けることで僅差でしかない妖力のパワーを埋めている。
「″大気力・落砲旋″」
通常に使われる気力を上回る攻撃力を有する大気力。
″落砲旋″は、周囲の岩を大気力で浮かせ、相手にぶつける技である。
コロシアムの外にある山々から、幾つも岩が呼び寄せられる。
それを空中で旋回させ、勢いを付加した状態で落下させる。
「すべて叩き落とすッ!!」
剣から妖力を放出し、柱のような長さへとなる。
それを鞭のようにグリンッ、と回して迫る岩を砕いていく。
ならば、と嘉挧は手を組んで念を集中させる。シャダムもまた、妖力の鞭を戻し、新たに手を向ける。
『″嵐破高旬″』
赤い閃光が舞い、互いに打ち消しあっていく。
大妖力の技であり、嘉挧はダイレンジャーを圧倒したものでもある。
威力も互角。両者は再び剣での戦いへと切り替えるのであった。
元老院もおいそれと指をくわえてはいられない。
己達の役割、それはゴーマ皇帝を支えると同時に、抑止力として存在する。
霊力を浴びる以前とはいえザイドスを圧倒する張遼でさえ、戦う気が無かったとはいえ元老院であったリジュには及ばなかった。
張遼と嘉挧は互角であった。
しかし、今の嘉挧とシャダムは当時以上に強くなっている。
今ならば、この2人を抑えるだけの力はある。
けれども、これから先はどうだろうか。
ゴーマ皇帝の抑止力といっても、あくまで元老院全員を指しているため、単独ではない。
「気になるな、あの嘉挧殿の顔」
口にしたのは周瑜だ。
孫策も気にしてみると、嘉挧の表情には何やら余裕があると思える。
互いに本気とはいえ、今のところ勝負を決すべき全力を出してるわけではなさそうだ。
無論、戦いは始まったばかり。
初手で出し惜しみせずに妖力を使いきったにも関わらず、相手を斃しきらなければ殺られる。
そのため、2人はお互いに全力を出すべきタイミングをはかっている。
しかし、どうだろう。
嘉挧には他にも策があると。
例の気力と妖力、2つの塔の力はそこまであるのだろうか。
そう考えている内に、金属音が変わった。
重い音だ。
どちらもヒートアップし、相手への殺意も高まったことだろう。
そして、死合は動く。
シャダムの鎧が、刃に触れたのであった。
「くっ………」
怯む。
それを見逃すほど、嘉挧は甘くない。
剣を振ろうとすれば、脚でさらに態勢を崩す。
妖力波を避け、着実に剣を当てていく。
達人であればあるほど、″刹那″の事態が攻防の明暗が分かれる。
「クハッ…………」
倒れない。踏みとどまれ。
「俺が、貴様なんぞに…………」
シャダムの視線には嘉挧しかいない。
頭をよぎる、過去。
嫡子であるため、不自由なく育つ皇子。
彼の腕となり、脚となり、盾であり、刃でなければならない。
そう教えられて育ってきた側室の子に生まれた少年。
冗談じゃない。
生まれた順番、生まれた環境、ただそれだけで、彼はすべてを手にした。
自分の命さえ、彼には献上しなければならないのか。
ふざけるな。
気にくわない。
ならば、自分があの場に行く。
すべてを、手中に…………。
そのチャンやスがやっと、やっと来たのだ。
「貴様なんぞにィィッ!」
振ろうとする剣。
目指した先にいる奴が、自分の命を奪う。
そんなのは断じて認めない。
「ズアァァッ!」
「ふんッ!」
異なる金属音。
空を舞う剣。
それをキャッチし、首に2刀が突きつけられる。
そこには、シャダムのひきつった顔があった。
「妖力・″爆雷波″ッ!」
ザイドスが放った妖力弾が拡散する。
『うわあぁぁぁァッ!!』
妖力の塔を守るために前衛に出たが、自分達は火花にまみれてしまう。
ザイドスに勝てる力はない。
ならば、塔を守利切れれば良い。
「退け、大連者ぁ…………退かねえと死ぬぞぉぉ」
遊びではなく、本気で妖力を溜めるザイドス。
遊んでる場合では無かった。
塔を破壊しても、シャダムが敗けた後では意味がない。
気力の塔に派遣したコットポトロは子竜らがいるため期待できない。
ここは、今すぐ破壊するのみ。
「ヤバい、あんなの受けたら……」
大五はザイドスの両手に宿る妖力球を見て、ハッとした。
あれでは庇いきれない。受けたら、転身できない自分達では死ぬ。
「みんな、俺達がバリケードになるんだッ!」
臆していた大五は、亮の言葉で立ち直った。
そうだ。転身できないまでも、気力は自分達の中にある。
5人は左掌と右拳を合わせ、気力の壁を前面へと展開させる。
「バリアのつもりか……そんなに死にたきゃ、嘉挧と一緒に死ねぇッ!」
ザイドスの両手から、巨大な妖力球が放たれる。
気力バリアに衝突して亮達にドンッ!!、という衝撃を及ぼす。
いますぐにでも逃げ出したいくらいだが、ここを踏ん張らなくては。
そうすれば、嘉挧は勝てる。
首筋に突きつけられた刃を、冷や汗がつたう。
動けば斬られる。
いや、動かなくとも、いずれ。
勝負は決した、と誰もが思う。
そんな状況だ。
「だが、首は急所だ」
「!?」
よく見ると、首筋に刃は触れていない。
薄いが、妖力によるバリアが展開されている。
「その傲慢こそ、貴様の命取りだッ!」
口から妖力波が放たれる。嘉挧も反射的にシャダムを蹴るも、兜へと妖力波は当たる。
反動で後ろに飛んだ嘉挧は、持ち直そうと頭を振る。
しかし、嘉挧は気力をも会得しているため、使い分けることで僅差でしかない妖力のパワーを埋めている。
「″大気力・落砲旋″」
通常に使われる気力を上回る攻撃力を有する大気力。
″落砲旋″は、周囲の岩を大気力で浮かせ、相手にぶつける技である。
コロシアムの外にある山々から、幾つも岩が呼び寄せられる。
それを空中で旋回させ、勢いを付加した状態で落下させる。
「すべて叩き落とすッ!!」
剣から妖力を放出し、柱のような長さへとなる。
それを鞭のようにグリンッ、と回して迫る岩を砕いていく。
ならば、と嘉挧は手を組んで念を集中させる。シャダムもまた、妖力の鞭を戻し、新たに手を向ける。
『″嵐破高旬″』
赤い閃光が舞い、互いに打ち消しあっていく。
大妖力の技であり、嘉挧はダイレンジャーを圧倒したものでもある。
威力も互角。両者は再び剣での戦いへと切り替えるのであった。
元老院もおいそれと指をくわえてはいられない。
己達の役割、それはゴーマ皇帝を支えると同時に、抑止力として存在する。
霊力を浴びる以前とはいえザイドスを圧倒する張遼でさえ、戦う気が無かったとはいえ元老院であったリジュには及ばなかった。
張遼と嘉挧は互角であった。
しかし、今の嘉挧とシャダムは当時以上に強くなっている。
今ならば、この2人を抑えるだけの力はある。
けれども、これから先はどうだろうか。
ゴーマ皇帝の抑止力といっても、あくまで元老院全員を指しているため、単独ではない。
「気になるな、あの嘉挧殿の顔」
口にしたのは周瑜だ。
孫策も気にしてみると、嘉挧の表情には何やら余裕があると思える。
互いに本気とはいえ、今のところ勝負を決すべき全力を出してるわけではなさそうだ。
無論、戦いは始まったばかり。
初手で出し惜しみせずに妖力を使いきったにも関わらず、相手を斃しきらなければ殺られる。
そのため、2人はお互いに全力を出すべきタイミングをはかっている。
しかし、どうだろう。
嘉挧には他にも策があると。
例の気力と妖力、2つの塔の力はそこまであるのだろうか。
そう考えている内に、金属音が変わった。
重い音だ。
どちらもヒートアップし、相手への殺意も高まったことだろう。
そして、死合は動く。
シャダムの鎧が、刃に触れたのであった。
「くっ………」
怯む。
それを見逃すほど、嘉挧は甘くない。
剣を振ろうとすれば、脚でさらに態勢を崩す。
妖力波を避け、着実に剣を当てていく。
達人であればあるほど、″刹那″の事態が攻防の明暗が分かれる。
「クハッ…………」
倒れない。踏みとどまれ。
「俺が、貴様なんぞに…………」
シャダムの視線には嘉挧しかいない。
頭をよぎる、過去。
嫡子であるため、不自由なく育つ皇子。
彼の腕となり、脚となり、盾であり、刃でなければならない。
そう教えられて育ってきた側室の子に生まれた少年。
冗談じゃない。
生まれた順番、生まれた環境、ただそれだけで、彼はすべてを手にした。
自分の命さえ、彼には献上しなければならないのか。
ふざけるな。
気にくわない。
ならば、自分があの場に行く。
すべてを、手中に…………。
そのチャンやスがやっと、やっと来たのだ。
「貴様なんぞにィィッ!」
振ろうとする剣。
目指した先にいる奴が、自分の命を奪う。
そんなのは断じて認めない。
「ズアァァッ!」
「ふんッ!」
異なる金属音。
空を舞う剣。
それをキャッチし、首に2刀が突きつけられる。
そこには、シャダムのひきつった顔があった。
「妖力・″爆雷波″ッ!」
ザイドスが放った妖力弾が拡散する。
『うわあぁぁぁァッ!!』
妖力の塔を守るために前衛に出たが、自分達は火花にまみれてしまう。
ザイドスに勝てる力はない。
ならば、塔を守利切れれば良い。
「退け、大連者ぁ…………退かねえと死ぬぞぉぉ」
遊びではなく、本気で妖力を溜めるザイドス。
遊んでる場合では無かった。
塔を破壊しても、シャダムが敗けた後では意味がない。
気力の塔に派遣したコットポトロは子竜らがいるため期待できない。
ここは、今すぐ破壊するのみ。
「ヤバい、あんなの受けたら……」
大五はザイドスの両手に宿る妖力球を見て、ハッとした。
あれでは庇いきれない。受けたら、転身できない自分達では死ぬ。
「みんな、俺達がバリケードになるんだッ!」
臆していた大五は、亮の言葉で立ち直った。
そうだ。転身できないまでも、気力は自分達の中にある。
5人は左掌と右拳を合わせ、気力の壁を前面へと展開させる。
「バリアのつもりか……そんなに死にたきゃ、嘉挧と一緒に死ねぇッ!」
ザイドスの両手から、巨大な妖力球が放たれる。
気力バリアに衝突して亮達にドンッ!!、という衝撃を及ぼす。
いますぐにでも逃げ出したいくらいだが、ここを踏ん張らなくては。
そうすれば、嘉挧は勝てる。
首筋に突きつけられた刃を、冷や汗がつたう。
動けば斬られる。
いや、動かなくとも、いずれ。
勝負は決した、と誰もが思う。
そんな状況だ。
「だが、首は急所だ」
「!?」
よく見ると、首筋に刃は触れていない。
薄いが、妖力によるバリアが展開されている。
「その傲慢こそ、貴様の命取りだッ!」
口から妖力波が放たれる。嘉挧も反射的にシャダムを蹴るも、兜へと妖力波は当たる。
反動で後ろに飛んだ嘉挧は、持ち直そうと頭を振る。