散髪が終わり、知はドライヤーで亀夫の髪を乾かす。
「さあ、もう終わりですよ」
「うわああぁぁぁァァッ!!」
「亀夫!?」
突然苦しみ出した亀夫。
訳もわからないままに亀夫は消えてしまう。
「え?亀夫、亀夫ッ!………………うん?」
椅子と色がほぼ同化して見える小動物。
知はそれを拾い上げる。
「亀夫が、また亀になった…………」
″天宝来来の玉″を制御できるようになってからは、亀になるようなことはなかったのに。
ロードワークも終盤、そろそろジムに戻る頃だ。
将児は住宅街から大通りに出る。
そこでブゥゥォォンッ!!、という駆動音。バイクだと一発でわかる。
将児がその音の方を向くと、眼を見開いてしまった。
何と、無人でバイクが走っている。しかも、歩道に乗り上げ、自分に向かってくるではないか。
「うおっ!」
間一髪で避ける。過ぎ去ったバイクの方を見ると、音と共に既にいなくなっていた。
「何だありゃあ………」
バイクがひとりでに走るなどありえない。
それに、さっきのバイクはどこかで見たことがある。
″プルルルルッ!!″
「!?」
道路脇の公衆電話。
この電話が鳴るなど、普段なら無いはずだ。
「…………クソッ!」
将児はわけもわからないまま、ボックスを開ける。
すると、受話器が浮き上がり、将児に向けられた。
「あんさん、真っ直ぐ空を見なはれ~」
「はァァッ!?」
電話から聞こえた親父声よに言われ、将児は振り向いて上を見る。
すると、そこには旗のようなものを振る神風大将・電話先生・墓石社長の3バカの姿があった。
「3バカ!?。あの旗は…………」
神風大将から送られてきたはずの旗。
それを振り回し、何か言っている。
3人が無茶苦茶にそれぞれの言いたい事を言っているのでよくわからない。
しかし、″何やってるんだ″・″ どうした、お前らしくない″と言うのは聞き取れた。
「てめぇら、何だってんだよッ!」
会話がキャッチボールになることはなく、3バカは消えるようにいなくなってしまう。
将児は腹に巻いていた例の旗を取りだし、しっかりと見る。
そうだ。この旗だ。2つとないはずの、友情の旗…………。
店を休んだ亮は、山奥にある滝に来ていた。
僅かながら思い出した、父の記憶。
父はここで1人、滝に打たれていた。
小さい自分は何をしていたか理解していなかったが、今ならわかる。
亮は上半身を裸にし、滝に打たれている。
ただ打たれているのではなく、空突きをしていた。
冬の冷たい水は、人の躰には厳しい。それが勢い良く降り注いでくる。
けれど、亮の心中を変えることはない。
「…………何なんだ、何なんだよ道士嘉挧ゥッ!」
いくら仕事にのめり込んで忘れようとしても、修行をしていようと、何をしても、心は晴れなかった。
「俺はあんたを親父だと思って信じて従ってきたのに…………」
戦う力を与えてくれた。
訳もわからないまま解散を告げられ、それを奪われた。
師であり、父であった嘉挧に。
「いきなり解散だなんて、俺はどうしたらいいんだよッ!道士ぃぃィッッ!!」
誰もいない山中に木霊する亮の叫び。
悲しく、空しい。
そこへ、ヒュンヒュンヒュンという、空気を切る音。
亮は目線の先に、その主を見つけ、手で掴んだ。
開くと、そこには髑髏のマークが刻まれたコインがあった。
「これは、陣の…………まさかッ!」
亮が顔を上げると、そこにいた。
的場 陣。宿敵にして、戦友。
「生きていたのか、陣!」
魔拳士の衣装を纏い、亮を見ている。
別れた時もそうだった。深傷を負い、あの後感じた気の消失…………。
「かあぁぁッ!!!」
陣は突然声をあげ、飛び上がった。
そのまま蹴り、亮は滝下の水面へと打ち付けられてしまう。
「ブッ!…………何をするんだ!?」
「さあ、もう終わりですよ」
「うわああぁぁぁァァッ!!」
「亀夫!?」
突然苦しみ出した亀夫。
訳もわからないままに亀夫は消えてしまう。
「え?亀夫、亀夫ッ!………………うん?」
椅子と色がほぼ同化して見える小動物。
知はそれを拾い上げる。
「亀夫が、また亀になった…………」
″天宝来来の玉″を制御できるようになってからは、亀になるようなことはなかったのに。
ロードワークも終盤、そろそろジムに戻る頃だ。
将児は住宅街から大通りに出る。
そこでブゥゥォォンッ!!、という駆動音。バイクだと一発でわかる。
将児がその音の方を向くと、眼を見開いてしまった。
何と、無人でバイクが走っている。しかも、歩道に乗り上げ、自分に向かってくるではないか。
「うおっ!」
間一髪で避ける。過ぎ去ったバイクの方を見ると、音と共に既にいなくなっていた。
「何だありゃあ………」
バイクがひとりでに走るなどありえない。
それに、さっきのバイクはどこかで見たことがある。
″プルルルルッ!!″
「!?」
道路脇の公衆電話。
この電話が鳴るなど、普段なら無いはずだ。
「…………クソッ!」
将児はわけもわからないまま、ボックスを開ける。
すると、受話器が浮き上がり、将児に向けられた。
「あんさん、真っ直ぐ空を見なはれ~」
「はァァッ!?」
電話から聞こえた親父声よに言われ、将児は振り向いて上を見る。
すると、そこには旗のようなものを振る神風大将・電話先生・墓石社長の3バカの姿があった。
「3バカ!?。あの旗は…………」
神風大将から送られてきたはずの旗。
それを振り回し、何か言っている。
3人が無茶苦茶にそれぞれの言いたい事を言っているのでよくわからない。
しかし、″何やってるんだ″・″ どうした、お前らしくない″と言うのは聞き取れた。
「てめぇら、何だってんだよッ!」
会話がキャッチボールになることはなく、3バカは消えるようにいなくなってしまう。
将児は腹に巻いていた例の旗を取りだし、しっかりと見る。
そうだ。この旗だ。2つとないはずの、友情の旗…………。
店を休んだ亮は、山奥にある滝に来ていた。
僅かながら思い出した、父の記憶。
父はここで1人、滝に打たれていた。
小さい自分は何をしていたか理解していなかったが、今ならわかる。
亮は上半身を裸にし、滝に打たれている。
ただ打たれているのではなく、空突きをしていた。
冬の冷たい水は、人の躰には厳しい。それが勢い良く降り注いでくる。
けれど、亮の心中を変えることはない。
「…………何なんだ、何なんだよ道士嘉挧ゥッ!」
いくら仕事にのめり込んで忘れようとしても、修行をしていようと、何をしても、心は晴れなかった。
「俺はあんたを親父だと思って信じて従ってきたのに…………」
戦う力を与えてくれた。
訳もわからないまま解散を告げられ、それを奪われた。
師であり、父であった嘉挧に。
「いきなり解散だなんて、俺はどうしたらいいんだよッ!道士ぃぃィッッ!!」
誰もいない山中に木霊する亮の叫び。
悲しく、空しい。
そこへ、ヒュンヒュンヒュンという、空気を切る音。
亮は目線の先に、その主を見つけ、手で掴んだ。
開くと、そこには髑髏のマークが刻まれたコインがあった。
「これは、陣の…………まさかッ!」
亮が顔を上げると、そこにいた。
的場 陣。宿敵にして、戦友。
「生きていたのか、陣!」
魔拳士の衣装を纏い、亮を見ている。
別れた時もそうだった。深傷を負い、あの後感じた気の消失…………。
「かあぁぁッ!!!」
陣は突然声をあげ、飛び上がった。
そのまま蹴り、亮は滝下の水面へと打ち付けられてしまう。
「ブッ!…………何をするんだ!?」