出てきたコウは街を歩いていた。
昼飯を食べ損ねた。何か食べるものはないか…………。
そう思っている内に、休業している″セブン″へと辿り着く。
そこには、他のキッズも集まっていた。
「偶然にしちゃあ…………できすぎだよなぁ」
そのまま地下室へと向かい、電気を点けて落ち着かせる。
健一はエネルギー探知機を触る。
これらを使って、地球の平和を守る…………そう意気込んでいたのに。
今や用無しどころか、使う意味すら失ってしまった。
転身できないのでは、戦う事が出来ない。
幾つかの敗北、幾つもの勝利を重ねた戦いの果て。
掴んだ訳ではない平和。
「なあ、本当に地球は平和になったのかよ」
誰に向けたわけでもない疑問の言葉。健一に対して、答える者はいない。
誰もがわかっている。ゴーマが休戦協定を守るのか、嘉挧の意図がハッキリしない以上、真の平和ではない。
偽りではないが、仮そめの平和だ。
「でも、あたし達に出来ることは何もないんだよ」
町子の言う通りだ。戦う力がないどころか、何をどうすればいいかさえわからない。
「地球の平和は、いざとなればサーガレンジャーが守る…………ってことなのかな」
コウはふと考える。
復活した古き破壊神・デーヴァ。奴も行方がわからず、ゴーマと並ぶ脅威である。
その対処をするのは、香澄が率いるサーガレンジャーだろう。
「香澄ちゃん…………」
学校での態度は普通という言葉が、そのまま当てはまるようなものだった。
成績は優秀で、クラスメートとの仲は良好だ。
学校での彼女はミステリアスな雰囲気をしておらず、いたって普通の女の子だ。
あれ以来、自分達とは距離を置いてはいるが、何も変わった事はない。
「でも、デーヴァって神様が滅ぼしきれない程に強いんでしょ?」
正夫の言う通り、ダオス王に敗れはしたがバックアップを残すことで現世に甦った。
伝説にあるような強さを誇っているとしたら、サーガレンジャーだけで勝てるかはわからない。
ダイレンジャーと共同戦線により対峙した方が勝率はあがるはずなのだ。
「僕はなんとなく、香澄ちゃんの気持ちわかるよ」
嘉挧への恩は表だ。その裏には、父から託されたものを証明したいという気持ちが隠されている。
父の正しさ、父の開発した力で、父の仇を討つ。
形は違えど、親の思いを叶えたいというシンパシーを抱く。
「香澄ちゃんはお父さんの願いを守り通したいんだよ」
「だからって、力を奪われたら俺達は…………」
「″力″…………か」
割り込んできた声。
年老いた声色が生み出す重さ。
「マスター…………」
″セブン″の店主・ダンである。
「私もあった。戦いたいと願ったことが何度も」
ある戦いで負傷し、後輩に託すしかなかった時期があった。
あの時自分に力があれば、守れた命もあったはずなのだ。
「例え力が、変身が出来なくても出来ることはあるはずだ。君達は、それを探すべきじゃないのかな」
「セブン……」



















リンが食卓を片づける。
確かにコウの言う通り、自分だって何かしたい。
ダイレンジャーとしての自分を捨て去る事が出来ないし、捨ててはいけない気がするのだ。
コウだって…………。
ふと、指輪を掴む。コウに引き合わせ、継いだたくさんの想いがつまっている。
「お母さん、私何もできないアル…………」






″大丈夫″






「え!?」
声が聞こえた。
あの声はコウの母に間違いない。
「今のは………。??。指輪が、光って……」
エメラルドに輝いている。
何かを伝えるように、何か気づかせるために。