病院を見舞ったキッズ達は、当然のように香澄に詰め寄った。
壁際にいる香澄の脇で、健一は掌を勢いよく叩いた。
「あら?健一君は壁ドンするタイプだったの?」
「とぼけんな!」
嘉挧が襲ってきた時、明らかに黙認していた。
いや、由貴を足留めした辺り、協力していたようだった。
「俺達はもう…………転身できない…………」
「だから、あたし達がいるのよ」
香澄は淡々と話す。
コウは健一の腕をどけ、香澄の方を向いた。
「話してくれるかい?」
「ええ。全部、ね。あたしが、あなた達の知ってる柊香澄と瓜二つの理由も」
聞きたいことは山程ある。
それを察してか、初めから話すつもりなのか。
香澄は語りだした。
「まず、あたしは普通の人間よ。いえ、普通の人間だったわ」
遡ること、10年。
香澄の父、柊 晋(すすむ)は研究者だった。
それも未来技術を専攻としながらも、趣味は考古学といった変わり者であった。
その類い稀に見る才覚からか、″未来を得るためには、過去から成功と失敗を学ばなければならない″というポリシーを持っていた。
高度な科学力を持っていた古代文明の存在を信じ、それを解き明かす事で新たな技術が生まれると信じている。
かつ、古代文明が滅びた原因を知ることで、人類の行く末を誤らせないようにするという、責任も感じていた。
中国奥地に栄えていたという古代文明の跡を探索するチームにたまたま参加したところ、彼はあるものを見つけた。
それは牛とも、鬼とも言える怪物が画かれた人二人分の大きさの石板であった。
これを持ち帰ったところ、化石に近いことがわかった。
中枢部には、玉璽が嵌め込まれていた。
待ち望みながらも、恐ろしい事実が石板には刻まれていた。
古代文明…………即ちダオス文明の存在を示す文章が刻まれていたのである。
始まりと終わり、その発端となる戦争も、気力と妖力も。
その中で、再び未来にて古代の戦いが再現されるという事も記されていた。
よくある、古代人の占いや神のお告げというオカルトだと誰もが思った。
しかし、資金援助をして貰っていた″財団″を通じて、ダイ族の末裔と称する者が現れたのである。
彼は気力を使い、超能力という言葉で示されるような現象を引き起こしたのである。
彼の話では、ダオス時代の気力と妖力は現代に僅かに残る者より遥かに強かったという。
今やとゴーマが復活のために暗躍し、石板に刻まれた文章が現実味を帯びてきたのである。
「甘寧さん、我々人類は、どうすればこの危機を乗り越えれるのですか?」
ダイの末裔・甘寧は古代ダイ族長老の血筋で、デーヴァ等失われた歴史をも語り継いできた。
正義感はあるが、再びダイ族の再興を目刺し、″財団″の中級幹部にまで上りつめたのである
「ゴーマが本格的に動き出せば、各国の軍隊も勝てません。″アレ″を使い、強化策を練るしかありません」
アレ…………とは、石板にある玉璽であった。
かつて、ダオス王が所持していたという、″巫霊太極の玉璽″(ぶれいたいきょくのぎょくじ)。
″天宝来来の玉″と″大地動転の玉″の要素を併せ持つ、力の結晶である。
デーヴァが誕生した際に、それまで再現したという。
オリジナルには遠く及ばないが、気力と妖力を制御できるのだ。
本人は滅び、今はその力が残留しているにすぎないという。
「私達ダイ族には、精鋭の5人の戦士″大連者″という者がいたそうです」
大連者は、気力を極めた先に、自ら鎧を精製して装着し、戦っていた。
「現代の科学でこの鎧をパワードスーツとして再現し、ゴーマの侵攻に備えるのです」
晋は読んでいた。ゴーマの侵攻を阻止、或いは復活しないならば、そのまま軍事利用することを。
そして、彼が″財団″の頂点に立ち、世界を裏から支配するつもりなのも。
けれども、あの超能力に対抗するには、こちらも超能力を身に付けなければならない。
人類の命運は、自分にかかっている。そう、義務感を抱いたのだ。
こうして、″財団″協力を貰い、過去から未来を守護する戦隊を生み出す″プロジェクトサーガ″に乗り出したのであった。
模倣の″巫霊太極の玉璽″を解析し、人工的に″天宝来来の玉″に似た菱形の結晶を造り出した。
これがサーガレンジャーの力の源・″ヴェーダコア″であり、″魔力″を生み出すのだ。
魔力というのは、古来から人間が不可思議な力を得た時に用いる事から来ている。
普通の人間を転身者に想定され、体力を″ヴェーダコア″を通して魔力へと返還することで、気力や妖力に対抗できるというのだ。
当然、気力や妖力に比べると体力と魔力の強さは連動している。
消耗すればそれだけ魔力も体力も減ってしまう。代わりに、体力さえ回復させれば、魔力は尽きないということだ。
こうして数年をかけて製作し、最初のサーガレンジャー・タイプ″カトブレパス″が完成した。
カトブレパスは水牛の魔獣をモチーフとしている。
″ヴェーダコア″は剥き出しとなっているが、その分パワー重視となっている。
装着実験は成功したが、何回かの実験の最中、転身者の躰に異常が起きた。
何と、怪人へと変貌したのだ。
別の装着者が怪人を殺したが、その者もたった1回の装着で一時昏睡状態に陥った。
調べると、転身は誰にでも出来るが、力を引き出すには適合しうる者でなければならないらしい。
更に、″ヴェーダコア″が強力すぎて、普通の人間を怪人へと変えてしまう副作用がわかった。
こうして、プロテクトを一層強化する作業が始まったが、その頃には紐男爵とダイレンジャーの戦いが始まってしまっていた。
そして、しばらくした後に愛娘である香澄が交通事故で重症を負ったのである。
鏡化粧師による鏡やガラスを崩壊させた事で起きた、二次災害であった。
この時、阿古丸は香澄の顔を奪った。死にゆく者ならば、奪っても問題は無いからだ。
壁際にいる香澄の脇で、健一は掌を勢いよく叩いた。
「あら?健一君は壁ドンするタイプだったの?」
「とぼけんな!」
嘉挧が襲ってきた時、明らかに黙認していた。
いや、由貴を足留めした辺り、協力していたようだった。
「俺達はもう…………転身できない…………」
「だから、あたし達がいるのよ」
香澄は淡々と話す。
コウは健一の腕をどけ、香澄の方を向いた。
「話してくれるかい?」
「ええ。全部、ね。あたしが、あなた達の知ってる柊香澄と瓜二つの理由も」
聞きたいことは山程ある。
それを察してか、初めから話すつもりなのか。
香澄は語りだした。
「まず、あたしは普通の人間よ。いえ、普通の人間だったわ」
遡ること、10年。
香澄の父、柊 晋(すすむ)は研究者だった。
それも未来技術を専攻としながらも、趣味は考古学といった変わり者であった。
その類い稀に見る才覚からか、″未来を得るためには、過去から成功と失敗を学ばなければならない″というポリシーを持っていた。
高度な科学力を持っていた古代文明の存在を信じ、それを解き明かす事で新たな技術が生まれると信じている。
かつ、古代文明が滅びた原因を知ることで、人類の行く末を誤らせないようにするという、責任も感じていた。
中国奥地に栄えていたという古代文明の跡を探索するチームにたまたま参加したところ、彼はあるものを見つけた。
それは牛とも、鬼とも言える怪物が画かれた人二人分の大きさの石板であった。
これを持ち帰ったところ、化石に近いことがわかった。
中枢部には、玉璽が嵌め込まれていた。
待ち望みながらも、恐ろしい事実が石板には刻まれていた。
古代文明…………即ちダオス文明の存在を示す文章が刻まれていたのである。
始まりと終わり、その発端となる戦争も、気力と妖力も。
その中で、再び未来にて古代の戦いが再現されるという事も記されていた。
よくある、古代人の占いや神のお告げというオカルトだと誰もが思った。
しかし、資金援助をして貰っていた″財団″を通じて、ダイ族の末裔と称する者が現れたのである。
彼は気力を使い、超能力という言葉で示されるような現象を引き起こしたのである。
彼の話では、ダオス時代の気力と妖力は現代に僅かに残る者より遥かに強かったという。
今やとゴーマが復活のために暗躍し、石板に刻まれた文章が現実味を帯びてきたのである。
「甘寧さん、我々人類は、どうすればこの危機を乗り越えれるのですか?」
ダイの末裔・甘寧は古代ダイ族長老の血筋で、デーヴァ等失われた歴史をも語り継いできた。
正義感はあるが、再びダイ族の再興を目刺し、″財団″の中級幹部にまで上りつめたのである
「ゴーマが本格的に動き出せば、各国の軍隊も勝てません。″アレ″を使い、強化策を練るしかありません」
アレ…………とは、石板にある玉璽であった。
かつて、ダオス王が所持していたという、″巫霊太極の玉璽″(ぶれいたいきょくのぎょくじ)。
″天宝来来の玉″と″大地動転の玉″の要素を併せ持つ、力の結晶である。
デーヴァが誕生した際に、それまで再現したという。
オリジナルには遠く及ばないが、気力と妖力を制御できるのだ。
本人は滅び、今はその力が残留しているにすぎないという。
「私達ダイ族には、精鋭の5人の戦士″大連者″という者がいたそうです」
大連者は、気力を極めた先に、自ら鎧を精製して装着し、戦っていた。
「現代の科学でこの鎧をパワードスーツとして再現し、ゴーマの侵攻に備えるのです」
晋は読んでいた。ゴーマの侵攻を阻止、或いは復活しないならば、そのまま軍事利用することを。
そして、彼が″財団″の頂点に立ち、世界を裏から支配するつもりなのも。
けれども、あの超能力に対抗するには、こちらも超能力を身に付けなければならない。
人類の命運は、自分にかかっている。そう、義務感を抱いたのだ。
こうして、″財団″協力を貰い、過去から未来を守護する戦隊を生み出す″プロジェクトサーガ″に乗り出したのであった。
模倣の″巫霊太極の玉璽″を解析し、人工的に″天宝来来の玉″に似た菱形の結晶を造り出した。
これがサーガレンジャーの力の源・″ヴェーダコア″であり、″魔力″を生み出すのだ。
魔力というのは、古来から人間が不可思議な力を得た時に用いる事から来ている。
普通の人間を転身者に想定され、体力を″ヴェーダコア″を通して魔力へと返還することで、気力や妖力に対抗できるというのだ。
当然、気力や妖力に比べると体力と魔力の強さは連動している。
消耗すればそれだけ魔力も体力も減ってしまう。代わりに、体力さえ回復させれば、魔力は尽きないということだ。
こうして数年をかけて製作し、最初のサーガレンジャー・タイプ″カトブレパス″が完成した。
カトブレパスは水牛の魔獣をモチーフとしている。
″ヴェーダコア″は剥き出しとなっているが、その分パワー重視となっている。
装着実験は成功したが、何回かの実験の最中、転身者の躰に異常が起きた。
何と、怪人へと変貌したのだ。
別の装着者が怪人を殺したが、その者もたった1回の装着で一時昏睡状態に陥った。
調べると、転身は誰にでも出来るが、力を引き出すには適合しうる者でなければならないらしい。
更に、″ヴェーダコア″が強力すぎて、普通の人間を怪人へと変えてしまう副作用がわかった。
こうして、プロテクトを一層強化する作業が始まったが、その頃には紐男爵とダイレンジャーの戦いが始まってしまっていた。
そして、しばらくした後に愛娘である香澄が交通事故で重症を負ったのである。
鏡化粧師による鏡やガラスを崩壊させた事で起きた、二次災害であった。
この時、阿古丸は香澄の顔を奪った。死にゆく者ならば、奪っても問題は無いからだ。