一旦、リンのマンションに移動したダイレンジャー。
消沈し、意気も無い。
「道士がゴーマだったなんて…………」
将児は信じたくない、というのを強調している。
たくさんの苦楽を共にしてきたというのに。
「それより、みんなはどうしますか?。本当に″天宝来来の玉″と、オーラチェンジャーを返すんですか?」
嘉挧から言われた事。
自分達がダイレンジャーである証を、その力を剥奪される。
「俺はイヤだぜ!」
「しかし、本当にゴーマが2度と襲ってこないなら、もう必要無いのかもな」
大五は考える。ダイレンジャーが必要なのは、ゴーマの脅威があるからだ。
その恐れがなければ、ダイレンジャーは無用の長物だ。
「そんなの信じられるか!

「そうですよ!黙って見てる連中じゃありませんよッ!」
はじめは正義感が未熟だった2人が、今やゴーマの危険性を説くまでにきた。
「連中は前にも休戦協定を破ってるし…………それに相手はあのシャダムやガラなんだぞッ!!」
今までの事を考えれば、到底黙っているとは思えない。
いつまた協定を無視し、攻撃してくるかわかったもんじゃない。
大神龍ももういない。抑止力となるのがないのだ。
「大体、みんな道士の事を本当に信用できんのかよッ!」
嘉挧は恩人だ。人生の師とも思えるほどの。
しかし、突如姿を消し、ゴーマの出身であることも隠していた。
果たして、信用足り得るか。
「…………俺は信用する」
亮の言葉は重かった。
「例えゴーマでも、俺達にとって道士嘉挧は、やっぱり道士嘉挧なんだ。だから、俺は何でも言う事を聞く」
無力だった自分に力を与えてくれた嘉挧。それで自分が護れたものがたくさんあった。
だから、亮にとって嘉挧は師以上なのだ。
「だったら、てめぇだけ返すんだな!。…………そういや、お前はいつもお利口さんだったもんなぁ」
「!!?。何だとぉ…………」
「なんだよ」
亮は将児の胸ぐらを掴む。
ただただ、勘に触ったのだ。
迷いはする。煮え切らない部分もある。
それでも、信用したいという決意をしたというのに。
「やめて!」
リンが止めに入る。
今にも喧嘩が始まりそうで、見ていられなかった。
「私だって信用したいアル。でも、わからないのがありすぎる…………あの2本の塔は何なのか………… 」
気力と妖力、2つの塔。
近づくものに防御する装置がある。
本当に平和になるなら、なぜあんな真似が必要だったのか。
「それに、ダイレンジャーを解散するにしても、どうして私達のところへ戻ってきてくれないアルか?」
ゴーマへの帰還。
平和になった世界なら、自由に会えるはず。
「ゴーマに戻った、ってだけさ」
考えてみれば、単なる権力闘争ではないか。
自分の派閥ではない者を減らしていき、都合のいいところで戻る。
いつでも、嘉挧はゴーマを完全に打倒しようという事を口にはしなかった。
あくまで、人類に振りかかる火の粉を払っていたにすぎない。
「俺達は騙されたんだ。俺達は…………道士嘉挧に裏切られたんだよッ!!」














外に出た亮。
それを追い、リンが様子を見に来る。
「亮…………」
「リン…………。覚えてるか?。俺の親父も、裏切り者だった」
鉄面皮張遼。亮の父にして、先代龍連者であった。
経緯はどうあれ、仲間を死に追いやり、復讐のために敢えてゴーマに従っていた。
和解できたものの、父が裏切っていたという衝撃と張遼を喪失してしまった。
「それなのに、今度は嘉挧まで…………。裏切り者だなんて、俺は信じたくねぇ…………」
師以上…………父代わりだったのだ。
父に向けられなかった気持ちを嘉挧にしているのだ。










その頃、部屋にいる知は人知れず泣いている将児に気づいた。
「泣いてるんですか?」
「うるせぇ…………。俺だって、本当は信じてぇんだ…………それなのに…………」
信じたい。
それなのに、信じさせてくれない。
疑念の材料、状況、理由…………。あらゆるものが、嘉挧への信頼を揺れ動かしてしまう。
大五も横で、その様子を静かに見ている。
「道士嘉挧の大馬鹿野郎ォォォッ!!」
泣きながら将児は叫んだ。
誰か嘘だと、言って欲しかった。
どうか嘘で、あればいいのになと、願わずにはいられない。
そして、それが叶わずに、真実であることを認識しながら。