大王剣を抜刀し、刀身に気力が注がれていく。
その様子を、駆けつけた嘉挧は目撃してしまう。
「やめろ、大連王!」
攻撃の中止を訴えるが、その声は届かない。
大連王は大王剣を上げ、袈裟を狙って振り下ろした。
『大王剣・″疾風怒濤″!!!!!』










「″扇覆黙(おうぎふくもく)″








気力を込めた大王剣。子竜の前に現れた、巨大な鉄扇が防いだのであった。
「何だありゃあ?」
驚くダイレンジャー。しかし、幾多の怪人を葬ってきた″疾風怒濤″も完全に防げるほど弱くはない。
鉄扇にヒビが入り、今にも叩き割られそうだ。
「子竜中尉、今の内に縮まるのだ!」
指示を出しながら、その人物は子竜へ向けて光を放つ。
それを受けた子竜は、一気に小さくなったのであった。
「うぐッ!」
その瞬間に大王剣は鉄扇を叩き割った。空振りとなったが、当たれば確実に子竜は死んでいただろう。
「みんな、降りるぞ」
龍連者に言われ、ダイレンジャーは地上へ降りた。
目の前には子竜と、鉄扇の兜を着けたゴーマ怪人が立っている。
「すまない大連者。子竜中尉が早まった真似をしてしまい」
「何?何だお前は?」
「私はゴーマ元老院、″鉄扇右大臣″。普段は袁紹と、名乗っているがね」
人間形態になり、まるで平安時代の貴族のような姿になる。
子竜も元の姿に戻り、遅れて嘉挧も到着した。
「子竜中尉!」
「参謀長…………申し訳ありません。私がいたらないばかりに…………」
嘉挧が駆け寄ったのは子竜だった。
転身が解けたダイレンジャー達は、そのショックは計り知れない。
「何なんだよ…………あんたは…………いったい何なんだッ!?」
嘉挧は立ち上がる。
言わなければならなかった。本当ならば、もっと早く。
知ってほしくはなかった。それが失望と、疑念を呼ぶのは必至だったからだ
「私は…………ゴーマだ」
その瞬間、ダイレンジャーは固まった。
道の教え、厳しくも優しい嘉挧。
謎でいい。自分達の拠り所であってほしかった。
それが…………失われた。
「私はゴーマの侵略に反対し、聞き入れられずにやむを得ず、ダイに身を投じた」
確かに今まで材料はあった。
ゴーマの内をよく知っている。怪人の情報。
できるはずのない、ゴーマ皇帝との謁見と協定締結。
「今でも、子竜中尉や袁紹右大臣のように私と同じ考えの者が僅かながら存在する」
穏健派、ということだろうか。
阿古丸の件を考えると、一枚岩ではないのだろう。
人間との共存を望み、平和を願う。
「それなのにお前達は、危うく殺めるとこだったッ!」
嘉挧は激昂しながら、子竜が持っていた気力の塔を突き刺す。
ここに気力と妖力、2つの塔が並び建った。
「でも、そんなこと僕達知りませんでしたよ!」
知が釈明のように言う。
「そうだぜ……。そいつは暴れるし、そんな変なヤツをブッ建てるからよ!」
当然だ、と人間なら思うだろう。
ゴーマのしてきたことを考えれば、目的関係無しに疑ってしまう。
「お前達には関係無い。言ったはずだ…………大連者は解散すると」
妖力の塔を建てた時、宣言された。
休戦協定の締結がされた以上、ゴーマは襲ってこない。
ダイレンジャーは、もはや不要ないし必要ではないのだ。
「イヤ!そんなのイヤアルよッ!!」
「そうだ…………。理由もハッキリせずに解散なんて」
解散に反対するダイレンジャー。
一方的に引き込まれて、一方的に解散される。
納得できるものではない。
「訳もわからないのに、解散だなんて…………」
信じて従ってきたが、なぜこんなことに。
「亮…………兄ちゃん…………」
「?。コウ、みんな…………」
キッズ達が駆けつける。
しかし、コウはボロボロな上に、全員浮かない顔をしている。
「どうした?」
「サタンゼッドを斃した後、道士嘉挧に…………″天宝来来の玉″とキバチェンジャーを獲られたよ…………」
『!!?』
亮がキッズ達の手首を見ると、確かにオーラチェンジャーがない。
由貴が何があったかを訴えるように眼を潤している。
コウだけは抵抗でき、その上で奪われたのだろう。
「お兄ちゃん……あたし…………」
「道士、何でだ!?」
「必要ないからだ。ゴーマの侵略がない以上、転身するのも、気伝獣を呼ぶことも」
この瞬間に確信した。
ダイレンジャーの解散を許容することは、2度と転身する事が出来ないのだと。
「お前達は私の言うことがわからんのだな。ならば、明日の正午に地獄ヶ原で待ってる。そこで渡すんだ」
そう言うと、嘉挧は子竜と袁紹と共に消えた。