「!?」
何の音かと思えば、校門を潰して侵入してくる車。
丸い、ハニワ腹話術師の顔の形をした車。一目でわかった。あれは、ハニワンパンマン号だ。
上の蓋が空き、小さいハニワが出てくる。
「ハニワンパンマン、新しい躰だよ!」
首がない胴体を投げ、落ちている首へと繋げる。
赤く目が光り、ハニワンパンマンは復活してしまった。
「邪気100倍!ハニワンパンマン!!」
元通りになっている。
恐らく、このハニワンパンマンを斃したところで、再び復活するだけだろう。
クジャクレンジャーはダイレンブレスレットのエンブレムをずらし、光を纏う。
「星纏装ッ!!」
己が気力とブレスレットに内蔵されたプラズマスパークエネルギーが合わさり、クジャクレンジャーを守る鎧として形成されていく。
金と紫により、クジャクを思い出させる容姿となる。
シン・クジャクとしてパワーアップし、ハニワンパンマンと対峙する。
「何だその姿は!?」
驚くハニワンパンマンを尻目に、シン・クジャクは孔雀連弩に気力を込めていく。
同時に背中の羽が扇状に広がり、共に気力が注がれていく。
「…………ハァッ!」
孔雀連弩・羽から同時に光の矢・″破邪四十九連閃″が放たれる。
瞬く間に復活したばかりのハニワンパンマンが粉々にされていく。
「な、何ぃッ!?」
次に、その照準はハニワンパン号へと向けられた。
如何に硬いといえど、その威力と連射に耐えれない。
実際、車体が次々と剥がれ、砕かれていく。
「こうなれば、死なばもろともッ!!」
ハニワンパン号は、シン・クジャクに向かって走り出す。
躰があっさり破壊され、命運尽きたと思い、特攻をかけたのであった。
「あと10秒…………」
星纏装を使えるのは1分間のみ。逃げ回られるよりは、突っ込んで来てもらった方が都合がいい。
羽に宿っていた気力をすべて孔雀連弩に集中させ、収まりきらずにスパークしていく。
「″孔雀明王扇・破邪烈光″!!」
″孔雀明王扇・破邪烈光″とは、孔雀明王扇の力を一点に集中させて放つ光の矢である。
人と同じくらいはある大きさの矢が射たれ、ハニワンパン号を貫く。
あまりの呆気なさに比べ、派手な炎上をしている。
「ヌゥゥオオオォォッッ!!………バイバイキ…………」
星纏装が解除されたクジャクレンジャーの眼前で爆発したハニワンパン号。
本体が爆死した今、石にされていた子供たちも元に戻ったのであった。
「優美ちゃん。あたし達が学校を守るわ。だから、コウ君達の下へ」
ガネーシャに言われ、クジャクレンジャーは周りを見る。
確かに、サーガレンジャーがいれば安心だろう。出自は気になるが、今は敵を倒すのが最優先だ。
「ええ」
クジャクレンジャーは大輪車を使い、学校を出ていく。
それを確認すると、転身を解除した。
「サーガレンジャーは転身を解きなさい。維持にも体力は魔力に変換され、消耗してくんだから」
言われた通り、陽介達は転身を解く。
仮に敵が来れば転身すればいいのだし、学校のみんなのケアが重要な時だ。
香澄は街の方を見る。各地で、シン・クジャク同様の激しい光が立ち上っている。
どうやら、キッズ達が星纏装を使用したようだ。
「そう…………それでいいのよ。今の内に力を使いなさい…………」
稲妻が迸る。狼をイメージさせる金の装飾が、神々しさを強調させる。
「あんま時間かけらんねぇからよ。一気にカタつけてやんよ」
星纏装し、シン・テンマは全身が雷を纏っているようだった。
Rガマグチ法師は、大槌を振り回し、勢いを増させる。
自分がパワーアップし、相手もパワーアップした。それだけの事だ。
「互角になったつもりKaaaaa!!」
ガマグチ殺法・″積木崩し″。通常の状態なら、一撃で深手を負う威力だが…………。
シン・テンマは天狼トンファーを出し、受け止めてしまう。
「ファッ!?」
「知ってっか?ガマグチ野郎」
互角という見立てだったが、その圧倒的な力の差をすぐに理解できた。
その間に天狼トンファーが、橙がかった紅に染まっていく。
「電子レンジで温まるのは、高周波ってやつが熱を生むかららしいぜ」
ピキピキ、という音。
それは、大槌にヒビが入った音である。
更に、ブクブクと膨れ上がり、熱さを感じたRガマグチ法師は大槌を放した。
すると、その瞬間に大槌は破裂し、後には木片だけが残っていた。
「!?」
「お前もレンジでチンにしてやろうか?」
Rガマグチ法師は自分が破裂するイメージをわき、すぐに後退する。
「これならどうDA!!」
顔を開き、恵比寿顔の覆面を連続で放つ。″ガマダンク″だ。
例によって以前より数が多い。シン・テンマは脚に電撃を収束させていく。
「全部落としてもいいけど、時間ねぇからよ」
″ガマダンク″が迫る中、パッと姿を消すシン・テンマ。
雷速の状態で、不規則な軌道を描いていく。
見失ったと思い、現れたのは″ガマダンク″が過ぎ去った出発点。
あと10秒。それだけあれば、斃せる。
手には恵比寿顔の覆面が1つだけ握られていた。
「行くぜ…………潤雷星・″超電磁波動重弾″!!」
潤雷星・″超電磁波動重弾″とは、重力をかけ、重さが何倍にも増した物体を、更に雷を纏った脚で蹴る必殺技である。
右回転蹴りで、蹴り飛ばす。雷が球を電動スピンさせ、擬似的にレールガンを再現したのである。
怒涛の勢いで、Rガマグチ法師に命中する。
すると、覆面に込められた高周波がRガマグチ法師に伝わっていく。
「ぬぅぅぅゥゥゥOOOOoooooooッ!!」
血液が沸騰し、ブクブクと膨れ上がっていく。
やがて、その熱に耐えきれず、破裂・爆発したのであった。
2本の斧と、2対の獅子と狛犬を模した肩。シン・シシとなり、周囲には氷が生えるように精製されていく。
B鍵道化師は悟った。あの氷は普通の氷ではない。迂闊に手を出せば、命取りになる。
「ムヒョヒョ…………ここは…………」
空間に鍵を開け、次元を移動する。
再び背後に周り、妖力を全身に刺さっている鍵へと込めていく。
錠前から抜け、その鍵をシン・シシへと向けて放つ。
「″万能鍵地獄・マスターブレンド″!!」
全身の鍵を相手へと向け、鍵を打ち込む″万能鍵地獄″。そのパワーアップ版である。
なんと、威力は変わらないものの、バリア等の障壁をも無効にするのである。
「ムヒョヒョ!!」
はしゃぐB鍵道化師。シン・シシは動じず、垂れ流すように、冷気を解放していく。
いや、冷気も増えれば濃霧のようだ。一面が雪景色のように白い。
「…………どういうことだムヒョ?」
冷気に呑まれたように、″万能鍵地獄″で放った鍵が停止していた。
B鍵道化師がよく凝視するが、全く視界がよくない
そればかりか、自分が身動きを出来ない。
「ムヒョ?」
腕も、脚も、鍵さえも動かない。
自分が凍ったことさえ、感じなかった。
その原因は、シン・シシの冷気であることは明白であった。
空間に逃げられたら手出しできない。
ならば、逃げ込まれる前に周囲すべてを凍らせればいいのだ。
B鍵道化師を含め、その周りの空気中の水分そのものが凍結されていたのである。
氷の檻どころか、氷山に埋もれたかのようになっている。
「もう怖がったりしない 」
斧を前にして、シン・シシは気力を解放する。
もはや時間はないし、かける必要さえない。
「霜氷星・″氷山大割砕″!!」
霜氷星・″氷山大割砕(ひょうざんだいかっさい)″とは、絶対零度の空間に閉ざした敵を氷山ごと粉砕するシン・シシの必殺技である。
気力の込められた斬撃が氷山に打ち込まれ、大きなヒビが入る。
そこから枝分かれするように、次々とヒビが増え、最後には砕け散った。
それは割れた鏡が光を反射しながら舞い落ちる光景のようであった。