東京駅地下では、大五・知・リンが改めてアジトへの入り口を探している。
レンガの壁は急に現れたのではない。常時開いていただけだ。
閉じる方法があるなら、開く方法も繋がってるはずだ。
「ありませんねぇ」
知は壁を触るものの、何も反応がない。
もしかしたら、何もないのではないかと。
大五は諦めず、壁を触り続ける。
必ず、必ず何かが。
「…………あったぞ」
レンガの一部が、他とは違う感触だ。
トントンと軽く叩いてみる。





″ピピッ!!!″



軽い音声がして、壁が開いた。
3人はいつものアジトの開きを見て、本当だと確信を得る。
しかし、中には何もない。いや、残ってなどいなかった。
落ちる砂も、気力を集める宝玉も、テレビもない。
「何もない…………本当に解散するつもりなんだ!」
残念めいた本音を言う知。
そこには確かにあったんだ。
自分達がダイレンジャーとして過ごした間の物が。
「…………ねぇ、こっちの部屋を見るアル!」
リンに呼ばれ、2人は隣の部屋へ赴く。
そこには自分達の愛車・キバー号が揃っていた。
妙だ。解散するつもりならば、キバー号も必要がない。
「なのに、なぜコイツだけ…………」
嘉挧の本意が読めない。いったい、何をするつもりなのか。













″妖力の塔″の前に残った亮と将児は塔を、観察していた。
なぜこんな塔を建てたんだろうか。
将児はふと、手を伸ばして触ってみる。
「!?。おおぉぉァァッ!!」
すると、″妖力の塔″から妖力が迸った。
「将児、大丈夫か!?」
慌てて手を放したが、これは並大抵の妖力ではない。
触れたら防衛のために妖力を放つようだ。
つまり、あの子竜という怪人はその妖力に耐えるために、人目を顧みずに怪人態だったのだろう。
「コイツは何のために…………」



″キャアアアアアァァァァッ!!″





『!!?』
悲鳴が響き渡る。
オフィス街のど真ん中だ。朝の出来事を考えると…………。
下を見ると、子竜が堂々と歩いている。
手には、ここに突き刺さっている″妖力の塔″に似た塔を持っている。
うって変わり、澄んだオーラを纏う槍のような塔だ。亮と将児は一つの推測を出した。
ここに突き刺さっているのが″妖力の塔″だとしたら、反対に″気力の塔″ではないだろうか。
「何をしようとしてやがるんだ?」
「とにかく、リン達に連絡だ 」
あの子竜が何かするのは、間違いなく嘉挧に通じているのだが、それが何か見えてこない。
すぐに他の3人も合流して、後を追う。
子竜はオフィス街を歩き、人々は逃げるばかり。
自分達がいることに気づいていそうだが、暴れるつもりはないようだ。
(奴は嘉挧の命令で動いていると…………)
手を出すなという嘉挧の言葉。
それを信じていいのか。亮だけではなく、ダイレンジャー全員が答えを渋っていた。
そんな中、サイレンを流しながらパトカーが到着する。通報でもあったのだろう。
「止まれ!」
異形の者への恐怖と、市民を守らなければならない使命感。
2つを背負い、警官達は怪人の前に立つ。
当然のように警告を無視して、子竜は歩いていく。
「撃てぇッ!」
警官達は発砲する。
鉛の弾が甲冑に命中し、金属同士の衝突した音がしている。
カキン、カキンと弾かれる音。重厚な戦車が進むように、歩みを止めることはない。
それでも、尚警官達は撃ち続ける。業を煮やし、子竜は額の眼から赤い光線を放った。
直撃を避けて地面を狙ったため、死ぬことはない。子竜はそう考えた。
その通り、警官達に死者はいない。しかし、至近距離で高熱の火花を浴びてしまい、のたうち回っている。
残りの警官も凪ぎ払い、邪魔だとパトカーもひっくり返す。
「野郎ぅぉ…………亮、これでも見過ごすってのかよ!」
様子を伺っていたが、これは放っておくわけにはいかない。
亮は将児の言葉に頷き、オーラチェンジャーを出す。
「みんなぁ、転身だぁぁァッ!!」
『気力転身!!!オーラッ、チェンジャァァァァッッ!!!!!』
転身した5人は、子竜の前に立ち塞がる。
それを見て、掌を大連者へと見せる。
「邪魔をする気か!?」
「人を傷つけておいてッ!」
大連者はスターソードを抜き、子竜へと向かっていく。
「先に手を出したのは人間だッ!」
重厚な剣を取り出す子竜。一斉に斬りかかってきたダイレンジャーのスターソードを、片手だけで受ける。
重みがかかり、流石に怯んでしまう。
だが、嘉挧の策を成功させるために、退くわけにはいかない。
「ッッ…………かああァァッ!!」
全力を出し、ダイレンジャーをはねのける。
『うわぁっ!』
「退け大連者ッ!なぜ参謀長嘉挧の邪魔をする?。それでもあの方の部下なのか!?」
子竜は理解できなかった。
嘉挧が信頼していた弟子達が、その本心を理解しようとしていないことに。
逆も然り、ダイレンジャーも人々を傷つけてまで、作戦を成そうとする事に賛同することができない。
「何故なんだ?」
龍連者はスターソードをグッと握る。
何もわからないままに、無駄だとわかる戦いをしている虚しさが、怒りを生んでいる。
「どうして俺達とあんたが…………戦わなくちゃいけない…………道士嘉挧ゥゥッ!!」










遂に、ダイレンジャー最終章の幕が開いた。
道士嘉挧の策とは?亡霊怪人にさらわれた子供達は?
そして、サーガレンジャーの正体とは!?






つづく