地獄の三人官女。ゴーマの怪人で、そう自称する三姉妹の怪人達。
その三姉妹の三女・イヤリング官女がいる。彼女はその持ち前である黒い髪が最大の武器である。
夕暮れ時、眼鏡をかけた少年は家に帰ろうと自転車を漕いでいた。塾が終わり、ゲームショップで貯めたお金を使ったのだ。
売り切れ続出の人気ゲーム、「パワフルレンジャー・ユーラシア大陸からのヒーロー」を買った直後である。
友達はみんな買い、自分だけ小遣いの関係上1週間遅れだ。
何やら全159ステージという圧倒的なボリュームで、難易度もそこそこあるらしい。
早く帰ってやりたい、みんなに置いてけぼりにされるのは嫌だ。
家に帰るには、普段ならこの道を行かなきゃいけない。でも、そこは工事してるから時間がかかる。
けれど、ここを曲がればトンネルがある。トンネルを抜ければ、自分の家の脇に出るんだ。
人気のないトンネルで、普段は通らないけど、この際構わない。
少年は道を曲がり、トンネルへと入っていく。夕方だから薄気味悪いが、仕方がない。
サァァッ、と進む。自転車のライトが前方を照らす。
すると、灯りが何かを見つける。
女の人だ。巫女のような服装で、現代社会には不似合いな格好。
美人、と言える。髪が長くは、綺麗な顔立ちだ。
そう思いながら、少年は女性を通過する。
「坊や、お前の腕をお見せ」
トンネル内に響き渡る声。誰の声だろう?
少年の背後では、女性が顔に手を翳す。すると、体が変わっていく。
サラサラとした髪は毛布のようなフワッとした髪質となり、両耳が顔の2倍以上に大きくなる。
耳の輪は金色のイヤリングとなり、まるで腕輪のように太くなってしまう。
巫女服は胸当てに変わり、豊満な胸が盛り上がる。また、下半身は赤色へと変化する。
顔も変わった。両目を瞑り、口の部分に大きな一つ目が出現した。
ゴーマのイヤリング官女である。
イヤリング官女から、髪が伸びていく。物凄い速さで自転車に追いつき、背後から少年に絡みついた。
「わあッ!」
驚きの声と共に、少年は倒れてしまう。カラカラと自転車のタイヤが回り続け、その間に少年は髪によって引きずられていく。
「た、助けてぇッ!」
助けを求めるも、声はトンネル内で反響するのみで、外には漏れていかない。
僅かながら漏れても、人通りがないために気づく者はいなかった。
少年はイヤリング官女の下へと引き寄せられ、腕を捕まれてしまう。
袖をまかれ、二の腕がしっかりと露にされてしまう。
「…………違うようね」
自分はとりあえず、この怪人が探している人物ではない、ということがわかった。
だが、それよりこの髪、気持ちがいい。夜寝る時にかけるような毛布に近い感覚だ。
「せっかくだから、お前の命を少しだけ頂くわ」
少しだけ?。別に殺されるってわけじゃなさそうだが、どういうことだろう。
そう考えてる間に、ビクンっと体が唸る。
髪を通し、黄色い光がイヤリング官女へと吸い上げられていく。
少年の生命力を吸収し、体力・妖力に変換しているのである。
「ああ…………ああ…………」
体から力が抜けていく。
しかし、何だろうこの快感。髪に絡まれ、胸を当てられ、気持ちいいと感じてしまう。
いつの間にか、恐怖は無かった。
この苦しみ、むしろ愛くるしい。
マシュマロみたいに柔らかい胸。クラスの女の子達より断然大きい。
ああ、このまま眠ってしまいそうだ。いや、このままいっそ…………。
「大丈夫かえ?」
その声でハッとした。
少年は起き上がる。まだあのトンネルにいる。光がほとんど入ってこない辺り、もう夜に近いらしい。
「俺、どうしたんだろ?」
「お前はここで倒れてたのじゃぞ」
自分と同じくらいの女の子だ。彼女が介抱してくれたのか。
少年は思い返す。あの怪人は何だったのだろう。誰かを探してたようだが。
それにしても、美人だったな。噂に聞いてるダイレンジャーがいずれ退治するんだろうか。
何か、もったいない。
あの髪、気持ち良かったな…………。
「何か、盛り上がっとるな」
「ん?あ、こ、これは…………」
ある点を少女は見つめ、少年は慌てて腰を引く。
思春期の少年には恥ずかしかった。
「どうじゃ?妾に、それを使わぬか?」
「え?」
トンネルは誰も通らない。ゲームはまだ先になる。
他の戯れが出来てしまったからだ。
少年の暑い夏が始まった。
おわり
その三姉妹の三女・イヤリング官女がいる。彼女はその持ち前である黒い髪が最大の武器である。
夕暮れ時、眼鏡をかけた少年は家に帰ろうと自転車を漕いでいた。塾が終わり、ゲームショップで貯めたお金を使ったのだ。
売り切れ続出の人気ゲーム、「パワフルレンジャー・ユーラシア大陸からのヒーロー」を買った直後である。
友達はみんな買い、自分だけ小遣いの関係上1週間遅れだ。
何やら全159ステージという圧倒的なボリュームで、難易度もそこそこあるらしい。
早く帰ってやりたい、みんなに置いてけぼりにされるのは嫌だ。
家に帰るには、普段ならこの道を行かなきゃいけない。でも、そこは工事してるから時間がかかる。
けれど、ここを曲がればトンネルがある。トンネルを抜ければ、自分の家の脇に出るんだ。
人気のないトンネルで、普段は通らないけど、この際構わない。
少年は道を曲がり、トンネルへと入っていく。夕方だから薄気味悪いが、仕方がない。
サァァッ、と進む。自転車のライトが前方を照らす。
すると、灯りが何かを見つける。
女の人だ。巫女のような服装で、現代社会には不似合いな格好。
美人、と言える。髪が長くは、綺麗な顔立ちだ。
そう思いながら、少年は女性を通過する。
「坊や、お前の腕をお見せ」
トンネル内に響き渡る声。誰の声だろう?
少年の背後では、女性が顔に手を翳す。すると、体が変わっていく。
サラサラとした髪は毛布のようなフワッとした髪質となり、両耳が顔の2倍以上に大きくなる。
耳の輪は金色のイヤリングとなり、まるで腕輪のように太くなってしまう。
巫女服は胸当てに変わり、豊満な胸が盛り上がる。また、下半身は赤色へと変化する。
顔も変わった。両目を瞑り、口の部分に大きな一つ目が出現した。
ゴーマのイヤリング官女である。
イヤリング官女から、髪が伸びていく。物凄い速さで自転車に追いつき、背後から少年に絡みついた。
「わあッ!」
驚きの声と共に、少年は倒れてしまう。カラカラと自転車のタイヤが回り続け、その間に少年は髪によって引きずられていく。
「た、助けてぇッ!」
助けを求めるも、声はトンネル内で反響するのみで、外には漏れていかない。
僅かながら漏れても、人通りがないために気づく者はいなかった。
少年はイヤリング官女の下へと引き寄せられ、腕を捕まれてしまう。
袖をまかれ、二の腕がしっかりと露にされてしまう。
「…………違うようね」
自分はとりあえず、この怪人が探している人物ではない、ということがわかった。
だが、それよりこの髪、気持ちがいい。夜寝る時にかけるような毛布に近い感覚だ。
「せっかくだから、お前の命を少しだけ頂くわ」
少しだけ?。別に殺されるってわけじゃなさそうだが、どういうことだろう。
そう考えてる間に、ビクンっと体が唸る。
髪を通し、黄色い光がイヤリング官女へと吸い上げられていく。
少年の生命力を吸収し、体力・妖力に変換しているのである。
「ああ…………ああ…………」
体から力が抜けていく。
しかし、何だろうこの快感。髪に絡まれ、胸を当てられ、気持ちいいと感じてしまう。
いつの間にか、恐怖は無かった。
この苦しみ、むしろ愛くるしい。
マシュマロみたいに柔らかい胸。クラスの女の子達より断然大きい。
ああ、このまま眠ってしまいそうだ。いや、このままいっそ…………。
「大丈夫かえ?」
その声でハッとした。
少年は起き上がる。まだあのトンネルにいる。光がほとんど入ってこない辺り、もう夜に近いらしい。
「俺、どうしたんだろ?」
「お前はここで倒れてたのじゃぞ」
自分と同じくらいの女の子だ。彼女が介抱してくれたのか。
少年は思い返す。あの怪人は何だったのだろう。誰かを探してたようだが。
それにしても、美人だったな。噂に聞いてるダイレンジャーがいずれ退治するんだろうか。
何か、もったいない。
あの髪、気持ち良かったな…………。
「何か、盛り上がっとるな」
「ん?あ、こ、これは…………」
ある点を少女は見つめ、少年は慌てて腰を引く。
思春期の少年には恥ずかしかった。
「どうじゃ?妾に、それを使わぬか?」
「え?」
トンネルは誰も通らない。ゲームはまだ先になる。
他の戯れが出来てしまったからだ。
少年の暑い夏が始まった。
おわり