″ビキッ!!″






「な…………」


鎌に皹が入っている。さっきの天狼トンファーを投げつけたのは、武器を破壊するためだったのだ。


「悪いな姉ちゃん。ゴーマだから、容赦はしないぜ!!」


″雷電ストレート″が大鎌遊女の胸部へと命中した。豊満な乳房すら突き抜け、衝撃が躰に走る。


「ぐ…………」


ガタガタと振るえながら、大鎌遊女は後退りする。思った以上にダメージが大きかった。


「ぐ…………く…………」


砕けた鎌の破片を握る大鎌遊女。テンマレンジャーは天狼トンファーを持ち直し、構える。
しかし、大鎌遊女は向かってこなかった。破片で眼帯の紐を切ったのだ。



「!?。な、なんだ…………」


テンマレンジャーはおぞましいモノを目にしている。そして、大鎌遊女から鈍色のオーラが湧き出してきたのであった。














若葉台町にいる大神龍の眼が輝きだした。嘉挧はハッとし、空を見る。
そこには紅い稲妻を迸らせる暗雲を見つける。


「あの稲光…………″大地動転の玉″の…………」


ゴーマ皇帝の証とされる″大地動転の玉″。その色は紅色をしており、雲に走る稲妻はそのものだ。
だが、おかしい。″大地動転の玉″は、ゴーマ15世が持っているはずである。
地上にまで影響を及ぼす力を、15世が使うとは思えない。
けれど、問題は違うところにある。あれだけ大規模な妖力があれば…………。









″ポワァァァァン″









大神龍から音が鳴る。すると、人々がビルから飛び降り始めた。
妖力が過剰に感じられたせいで、大神龍が怒り、人間の抹殺にとりかかったのである。


「やめろ大神龍!」


嘉挧は気力を使い、人々へと放つ。落ちる寸前で気に触れさせ、衝撃を無くせばいいのだ。
人々はパタッと気絶したまま寝転がり、または元の位置まで戻されていた。








″デュワッ!″








また、街のあらゆる場所に散り、嘉挧が庇いきれない人数を、ウルトラ兄弟達はウルトラ念力を用いて救助した。
変身能力こそ失ったが、一部の能力は使えるままなのである。
結果、人々は死傷者を出すことなく救われた。大神龍それを見ると、若葉台町から飛び立っていく。
どこへ向かったのか、それは嘉挧もウルトラ兄弟も予想がついていた。










ゴーマ宮、その内部にて孫策と周瑜は書物を読んでいた。


「やっぱりダメですね。肝心のページがありません」


周瑜達はある調べものをしていた。


「探せ。俺達の存亡がかかってるんだぞ」


ゴーマ一族の命運がかかっているという書物の捜索。元老院でさえ知らない事実があるはずだ。


「孫策、私達が掴んだ情報が確かなら…………」


「…………ゴーマは割れるだろうな」


2人が掴んだ情報はゴーマを分裂させてしまうかという内容。果たして、どんな内容なのか。










″ドオォォンッ!!″








「!?。なんだ…………」










″ズガオォォッ!!!″









「うぐぅッ!!」



「ゴーマ宮が攻撃を受けて………………まさか、また…………」




孫策の推察は正しかった。地鳴り、そしてゴーマ宮全体へ拡がる衝撃………………大神龍の攻撃である。
稲妻状のエネルギー波をゴーマ宮に向けて放ち、屈強な装甲を剥がしていく。
元老院も、貴族も関係なく、その衝撃に恐怖を抱いた。
地上では避難したゴーマの民に紛れ、シャダムが様子を見ていた。元凶なのは、息子である阿古丸だ。
そして、まだ確認出来ていない謎の強大な妖力を操れる人物。


「阿古丸…………」













アヤは白虎真剣を手に、天へ向けて掲げる。洗礼の儀式を始める時が、来たのである。


「大地の気力よ、宇宙の気力よ。大いなる力で、コウを救いたまえ………」


アヤが詠唱をすると、小規模ながら暗雲のような雲が発生した。雲は地球・宇宙から気力を集め、雷のように地上へと降る。
それが避雷針のように白虎真剣へと収束していく。


「く…………」


アヤは気力の鎧を纏っているが、それでも身震いしてしまうほどの圧力がかかる。
ホウオウレンジャーは、その気力がバキと同質のものだと気づいた。
これだけ膨大な気力をぶつけるとなると、通常ならばただでは済まない。
毒を以て毒を制す、という言葉通り、気力を注入して妖力を消滅させようというのだろう。


「グルゥゥ…………」


強大な気力を感じ、バキも反応をする。バキからすれば、自分の生命を脅かす剣にしか見えないのだが、それを排除すべく降下してくる。



「グオオォォッ!!」


アヤは動じず、白虎真剣を手にバキを待つ。


「我が息子コウ…………その躰からゴーマの血を…………消したまえ!!」