廃屋の奥にある部屋。シャダムはそこに辿り着いた。
白い服を着た女が鎖に巻かれている。コウの母親に間違いないだろう。


「悪いが、お前には消えてもらうぞ」


まだ顔は見えないが、薄暗い中でシャダムは口を開く。アヤもまた、阿古丸とは違う声に反応し、顔を上げた。


「!!??」


シャダムは思わず、脚を止めてしまった。手も固まり、冷や汗が出るかと思う程の驚愕であった。
対しるアヤもはまた、眼を見開いてしまう。



「シャダム………」


「アヤ…………」


お互いに最も会ってはいけない人物と出会ってしまった、と言わんばかり。
シャダムは少し眼を瞑り、気を持ち直す。目の前にいる女は、コウの母親…………。


「お前がコウの母親だったのか……。なるほど………」


シャダムはすべてを理解した。なぜコウがあれだけの気力と妖力を秘めているか、バキになるために必要なゴーマ皇族の″血″を引いている理由、コウの父を。


「父上!」


殺害を阻止せんがため、阿古丸が入ってくる。今度はアヤのほうがハッとした。


「父上…………?。じゃあ、阿古丸は…………」


「ああ…………俺の息子だ……」


いつになく、悲しげにシャダムは口にした。その瞬間、アヤも理解した。
今までの出来事があまりにも皮肉であったこと、阿古丸とコウの因縁、そして自分の功罪を。


「何を言ってるんだ……?。父上とコウの母親は知り合いだったのか!?」


阿古丸は不可思議にして、興味すら抱いた。怒りや憎しみしか見たことのないシャダムが、アヤを前にして悲しい表情をしてることに。
今しか、今しか知れないかもしれない。



「父上、これはどう…………」








″プイィィィンッッ!!″





『!!?』


小さいエメラルドの輝きを放ちながら浮遊してきた指輪。それはシャダムと阿古丸を過ぎると、アヤの左薬指にはまるのだった。


「アヤ、その指輪は…………」


「シャダム!阿古丸!」


背後から声が聞こえ、振り向く。そこにはダイレンジャーが全員いる。
指輪の光を頼りに、ここに着たのだろう。


「大連者!」


「今日こそコウのお母さんを返してもらうぞ!!」


意気高まるダイレンジャー。シャダムは口から妖力球を吐き、牽制をする。
すぐ様転身し、ダイレンジャー達は廃屋を突き破って外に出た。


「お母さんを取り返すんだァッ!」



龍連者の掛け声で一斉にダイレンジャーは走り出す。転身したナーガレンジャー配下のコットポトロがアヤを押さえ、イカヅチを含めて防御に入っている。



「お母さん、今助けるアル!」


「させるか…………」


接近してきた鳳凰連者に蛇奉刺又を向ける。妖力を刃へと″喰わせ″、黒い妖力のオーラを刃へと纏わせる。


「″吼牙一閃″に…………そっくりアル…………」


″吼牙一閃″は星の力に依存せず、コウと白虎真剣の技だ。その性質は単純なように見え、難しい。
妖力や気力を刃に纏わせるだけなら、ダイレンジャーや他のゴーマ怪人も出来る。
しかし、″吼牙一閃″は大量の気力を刃へと喰わせる…………つまりは一体化させてから、高密度の気の斬撃を放つ。
それを妖力で、同質の技を放つとは…………。


「受けるがいい、我が″邪牙噛衝″を!!」



蛇奉刺又を振り降ろすと、4本の闇の斬撃が放たれた。鳳凰連者は槍鳳凰・雅を正面に持ち、受ける。



「うッ!」


体を走る衝撃。ガタガタと震える槍と腕が戦慄を染み込まされるようだ。


「う…………ああぁぁぁァァッ!!」



耐えきれず、鳳凰連者は薙ぎ飛ばされてしまう。″邪牙噛衝″がそのまま進み、幾人かのコットポトロを巻き込んでいく。



「邪魔はさせんぞ!邪魔する奴は殺せェッ!!」









他のキッズ達がコットポトロを相手にする中、ホウオウレンジャーはガラから離れたかんざし女雛を相手にしていた。
昨日の戦いの決着を着けるため、両者は刃をぶつけ合う。



「阿古丸君を説得できるのは、雛ちゃんだけ…………お願い、手伝って!」


「妾が離れたら、阿古丸は独りになってしまわれる。妾は…………妾だけはあの方の傍にいなくてはならんのだァァッ!!」


簪剣を天へと向ける。ホウオウレンジャーは様子が違うかんざし女雛の殺気を感じた。
本気だ。かんざし女雛は本気で戦いにきている。



「かんざし殺人術・″華の舞″…………」










かくして、コウを巡る戦いは佳境を迎えた。
大神龍に操られた人々の運命は?コウはゴーマへとなってしまうのか?
そして、シャダムとアヤの過去には何が秘められてるのだろうか?






つづく