イカヅチはその一つ目で、少年達を見る。その視線を遮るのは、桃色の気流であった。
「呀ッ!!」
気流は旋回し、竜巻となる。しかし、イカヅチはものともせずに仁王立ちしている。
(ただのゴーマ怪人ではない…………)
見た目から防御が厚いイメージはあるが、それ以上に屈強らしい。
かつ、さっきの雅之達を追っていたスピードは、鈍重とは言い難いものである。
「気力転身!!」
鳳凰連者に転身し、スターソードを抜く。振りおろし、イカヅチを斬りつける。
″カヂンッ!″
「硬い!?」
火花こそ散れど、刃が斬り込めない。とても分厚い鉄板のようだ。
「ヴォォォッ!!」
イカヅチが叫ぶ。すると、頭部と肩から虹色の妖力波が放たれ、鳳凰連者を襲った。
「キャアァァァッッ!!」
森の裏側で強力な妖力が発したのを感じ、由貴と健一は走って向かっていた。
「凄い妖力…………普通のゴーマ怪人じゃない!」
「あの虹色の…………ん?」
健一がふと先を見る。すると、向こうから雅之達が歩いてくるのが見えた。
「雅之!」
「!?。健一、由貴!」
2人が駆け寄る。雅之は今までの経緯を話し、コウのゴーマ化の進行と暗躍している阿古丸の狙いが知らされた。
「じゃあ、リンお姉ちゃんがゴーマと…………」
「そうなんだ!。なあ、お前ら助けてやってくれ!」
「わかってるよ!由貴ちゃん、俺達はリン姉ちゃんを助けに………」
″ヒュンッ!″
「!!?」
由貴は近づく何かに気づき、取り出した青龍月刀で弾いた。
カキンッ、という音がする。恐らく金属である。弾かれたモノは健一が目視で確認する。
「…………あれは簪!?」
それだけで正体はわかった。雅之は逃げようとするも、啓大達がフラフラとして中々動けないでいる。
「雛ちゃんでしょ!?。隠れたって、気でわかるよ!」
由貴が呼び掛ける。それに応じたのか、はたまた最初からなのか、かんざし女雛は現れた。
雛人形のような桃色の振り袖を羽織り、凛としている。それはであった頃の雛とは、まるで別人だ。
「お前達の友人は助けておいた」
「え!?」
チラッと啓大達を見る。もしや、逃げ遅れた彼らを別の道から逃がしたのだろうか。
「少々、手込めにさせてもらったがの」
ドキッ、とする健一と雅之。由貴は何を言っているかわからなかったが、言葉の意味を理解できる健一は思う。
あの短時間で、この人数を、しかも抜かすとは…………。
「それは、ありがとう」
「妾は無駄な犠牲は出しとうないでの」
イヤリング中宮の事件を思い返しているのであろう。雛は人間に対しての興味と贖罪の気持ちが芽生え、変化している。
「じゃが…………阿古丸様への忠義はそれに勝る!」
雛はパチン、と指を鳴らす。すると、啓大達はハッと意識を取り戻した。
「俺は…………いったい…………」
「お前ら、逃げろ!!」