「ふぁ~あ……」


アクビをしながら起きる優美。パジャマを脱ぐと、ジュニアブラを着ける。
膨らんできたが、まだまだ由貴には程遠いのは悔しいところだ。


「さぁってと……」



長い髪をくるくると回しながら三つ編みし、リボンで結ぶ。
この髪型にして久しい。大五には相変わらずアピールしても、伝わらない。
そればかりか、この頃大五はクジャクの事ばかり考えていると思えた。



「大五お兄ちゃん……」



優美は部屋を出る。台所には朝食に出るであろう味噌汁の香りが漂う。
それにしては忙しくない。父の急いで食べる姿も、母が手早く食器を用意してるわけでもない。


「お父さん……お母さん……」


疑わしい。本来ならばあるはずの光景がそこにはない。
ガスを止めようと歩く。






″カツッ″








脚に何かが当たる。下を向くと、肌色が真っ先に眼に入った。



「お母さん!?」


優美の母が倒れていた。側には父もいる。父の手には電話が握られている。
助けを呼ぼうとしたのだろうか。


「ねえ、お母さん……お父さん……」


どうしよう、と錯乱に近い動揺をしてしまっている。


「と、とにかく救急車を呼ばなくちゃ……」


優美は父が握っている電話をとり、救急車を呼ぶ。
サイレンが鳴り、自分だと思い下を視ると、別の棟に止まる。
隣でも何か起きたのだろうか。そう思っていた矢先、町中からサイレンが鳴り響いている。


「何が起きてるの?」










学校は休校になってしまった。″セブン″に集合したキッズ達は街で起きている異変について話し合う。
まず、優美の住んでいる団地の周辺の住人の多くは病院に行っている。
気分が悪くなるだく個人差はあるが、共通点は″黒い斑点″が体に現れることである。


「原因はわからないけど、これがみんなを苦しめてるのか?」



「でも、これはゴーマの仕業じゃないよ」


由貴は何人かの治療を試みたが、気力を受け付ける気配が無かった。
妖力によるものでもなければ、流行り病というわけてはなさそうだ。



「みんな!!」



町子が″セブン″に入ってくる。急いで持っている紙を机の上に置いて広げていく。


「これ………」


クラスメートの様子を見に病院に行った際、町子がチラッと見てしまったものだ。
驚きの余り、盗んだカルテである。もちろん、この後には戻すつもりであるが。


「急いで書いてあんのかわかんないけど、下手くそだなぁ」


「もう!違う、違う!!病名……」


健一達は町子に言われた通り見る。そこには驚きの病名があった。














″風邪″














『!!?』


風邪、という病気は軽度の細菌又はウイルス感染症を指す
だいたいは市販の風邪薬や人間の自然治癒力で克服・治療が出来る。


「それがどうして……」


それを聞いていたダンはカルテを取り上げ、読んでみる。


「これは……」


「マスター、何かわかるの?」


優美が迫るように尋ねる。友達だけではなく、両親が発症している為に他のキッズ以上に焦っている。


「この謎の病気の正体、思ったより厄介だぞ」