由貴が亮を心配している部分は同居してることではない。
どうやら、亮は残業まで進んでしてるらしい。
「知り合いが怪我して、治すのに金がいるんすよ」
そう言っているらしい。由貴は亮の優しい部分を知りながら、やはり不安を消せない。
由貴は健一達に話し、相談を始めたのだった。
「亮兄ちゃんが…………」
「そうなの」
健一はどこか、うんうんと頷いて聞いていた。
「でも、俺は何となくわかる」
「え…………」
「亮兄ちゃんにとって、その陣って人はライバルなんだよ」
「ライバル…………」
「そ。漢字だと、好敵手って言うんだけどさ」
好敵手。実力を競いあうに相応しい相手の事をいう。
「好敵手…………」
まだ自分にはわからない、と思う。恋愛にすれば町子が相当するが、戦闘においてはそういう相手がいない。
強いて言うならば、アイリーンがそれに値した。剣術面で敗北し、勝つために努力した。戦ってる最中、勝利した時、何とも言えない高揚感があった。
後に残る、罪悪感とも言える虚しさを上回る達成感。他人には言葉で説明出来ない。
「話は変わるけど、昨日の夜に変な事件が起きたみたいなんだ」
「変な事件?」
健一がふと話を変える。どうやら、女性の変死体が発見されたという。
「その変死体、おおよそ人間や動物の歯形とは思えない牙でかっ切られたような状態みたいなんだ」
「…………ゴーマ…………かな?」
休戦協定を結んで以来、表だった動きをしていないゴーマ。
自分達と戦っていないだけで、影で暗躍している可能性は十分にあり得る。
「でも、妖力は感じなかったよ」
妖力の気配はない。寝ていたとしても、強力な気を見逃す自分ではない。
由貴は不思議に思いながらも、放課後は他のキッズと手分けしてコウを捜索するのだった。
ただ、その日もやはり収穫はない。王青龍に乗り、空中・水中共に捜したが、見つからないのだ。
「あの、誰か手伝っていただけませんか!?」
明くる日、由貴はコウの捜索中に他の街の駅で聞き覚えのある声を聞いた。中で、何か叫んでいる。
咄嗟に切符を買い、駅に入る由貴。そこには、亮と車椅子に乗った陣がいたのだった。
「亮お兄ちゃん!」
「ん?由貴ちゃん…………」
「いったい…………」
「ああ。ちょっと、たまには外の空気でも吸って欲しくて…………」
それで遠くの街まで電車で…………。叫んでいた理由は何となく、状況で察した。
車椅子の陣を階段に上げたいのだろう。しかし、誰も手伝ってはくれない、ということだろう。
「みんな、自分の事で精一杯だ。自分の子としか考えない、人間はそういうものだ」
陣はそう言う。だが、由貴にはそれを素直に捉えられなかった。まるで、自分がそうであるように、そうされてきたかのように。
どうやら、亮は残業まで進んでしてるらしい。
「知り合いが怪我して、治すのに金がいるんすよ」
そう言っているらしい。由貴は亮の優しい部分を知りながら、やはり不安を消せない。
由貴は健一達に話し、相談を始めたのだった。
「亮兄ちゃんが…………」
「そうなの」
健一はどこか、うんうんと頷いて聞いていた。
「でも、俺は何となくわかる」
「え…………」
「亮兄ちゃんにとって、その陣って人はライバルなんだよ」
「ライバル…………」
「そ。漢字だと、好敵手って言うんだけどさ」
好敵手。実力を競いあうに相応しい相手の事をいう。
「好敵手…………」
まだ自分にはわからない、と思う。恋愛にすれば町子が相当するが、戦闘においてはそういう相手がいない。
強いて言うならば、アイリーンがそれに値した。剣術面で敗北し、勝つために努力した。戦ってる最中、勝利した時、何とも言えない高揚感があった。
後に残る、罪悪感とも言える虚しさを上回る達成感。他人には言葉で説明出来ない。
「話は変わるけど、昨日の夜に変な事件が起きたみたいなんだ」
「変な事件?」
健一がふと話を変える。どうやら、女性の変死体が発見されたという。
「その変死体、おおよそ人間や動物の歯形とは思えない牙でかっ切られたような状態みたいなんだ」
「…………ゴーマ…………かな?」
休戦協定を結んで以来、表だった動きをしていないゴーマ。
自分達と戦っていないだけで、影で暗躍している可能性は十分にあり得る。
「でも、妖力は感じなかったよ」
妖力の気配はない。寝ていたとしても、強力な気を見逃す自分ではない。
由貴は不思議に思いながらも、放課後は他のキッズと手分けしてコウを捜索するのだった。
ただ、その日もやはり収穫はない。王青龍に乗り、空中・水中共に捜したが、見つからないのだ。
「あの、誰か手伝っていただけませんか!?」
明くる日、由貴はコウの捜索中に他の街の駅で聞き覚えのある声を聞いた。中で、何か叫んでいる。
咄嗟に切符を買い、駅に入る由貴。そこには、亮と車椅子に乗った陣がいたのだった。
「亮お兄ちゃん!」
「ん?由貴ちゃん…………」
「いったい…………」
「ああ。ちょっと、たまには外の空気でも吸って欲しくて…………」
それで遠くの街まで電車で…………。叫んでいた理由は何となく、状況で察した。
車椅子の陣を階段に上げたいのだろう。しかし、誰も手伝ってはくれない、ということだろう。
「みんな、自分の事で精一杯だ。自分の子としか考えない、人間はそういうものだ」
陣はそう言う。だが、由貴にはそれを素直に捉えられなかった。まるで、自分がそうであるように、そうされてきたかのように。