「!?」



何だ?、と由貴は疑った。再び手を当てるも、稲妻に弾かれてしまう。


「なんで…………」


「…………コイツは…………」



由貴とは別の意味で驚いたのは亮だった。倒れている男、それは陣であったのである。


「陣…………」



「知ってる人なの?」



「うん…………。由貴ちゃん、治せないかな?」


「それが…………」



治せないのではない。治ることを、拒否されている。鳴水星の、とりわけ由貴の能力は人体の生命力を活性化させることによるものだ。
″傷を治したい″という自然な体の反応を手助けし、失われた腕や脚も取り戻せる。
しかし、拒否されては治療どころか回復すら出来ないのである。


「ど、どうしよう…………」



「大丈夫さ。コイツは…………俺が運ぶ…………。みんなに、俺は先に変えるって伝えて」


そう言って、亮は陣を自分の家に連れていった。助けなくてはならない、そう思ってしまったのだ。














「ただいまー」



洋子がバイトから帰ってきた。高校の課題もある中、買い物までしなくてはならないので、辛いところだ。



「お兄ちゃん、帰ってるんでしょ?」



部屋を開ける洋子。しかし、部屋にはいない。



「ありゃ?」



見回すと、布団が盛り上がっている。


「何よ…………由貴ちゃんにいいように使われでもしたか、このロリコン兄貴………………」



言葉を失った。布団の中にいたのは亮ではない。
知らない男性。寝顔ではあるが、イケメンというよりはハンサム顔だ。


「あ…………洋子!」



「ちょ…………誰、この人?」


亮が戻ってきた。ちょっと買い出しにいった間に、洋子が部屋に入るのは計算外だった。


「友達だ!。ちょっと、具合が悪いから、泊めてやってるんだよ」



「え…………そう…………」



渋々納得する洋子。亮は陣の額に濡れたタオルを置く。
陣はゴーマの力で魔拳士になってしまった。病院に行って、何か驚かれたら厄介なので、治療もここでするしかない。
タオルを絞り、再び額に置き直す。



「……………………ん?」



その声は洋子のものでは、とりわけ女子供の声ではなかった。この場にいる自分を除き、そんな声を出す人物は…………。


「ここは………………。!!?。貴様は…………亮!?」


気がついた陣。亮の存在に気付き、起き上がろうとする。



「グッ…………」


胸が痛む。触ると、包帯が巻いてあるのがわかった。それで自分がどういう状況下にいるかがわかったのだった。


「俺を…………助けたのか?」



「…………俺とお前は切っても切れない仲…………みたいだ…………」



「ふざけるな!!…………ぅうッ…………」


胸を抑えながら立ち上がる。拳士を握り、亮に向けた。


「決着を着ける…………俺と勝…………うぐッッ…………。」