コウが発見されたと聞いても、由貴は本部には戻らなかった。自分の力で、少しでも傷ついた人を治せるならと、街を往き来していた。
横転した電車では相変わらず救出作業をしている。由貴は野次馬の中から見ていたが、そこにはおぞましい光景が広がっていた。



「うっ…………」



吐き気がしてきた。どのみち治療は出来ない。その場を離れ、由貴は近くの小学校へと向かった。
幸い、ここの学校は無傷で避難所になっているようだった。
見つからないようにホウオウレンジャーに転身し、治療を始めていった。
死んでいなければ、ホウオウレンジャーの癒しの水で治る。ただ、多くの人に使う分、せいぜい生命力を高めて怪我を軽くする程度である。



「さ、あなたの番よ」



ホウオウレンジャーは同年代の少女を治療していた。だが、少女は下を向いたままである。



「どこか痛むの?」



「…………たの…………」



「?」



「何でダイレンジャーは、あの怪獣をやっつけてくれなかったの?」



ホウオウレンジャーは思わず動きを止めてしまった。


「お父さんも…………お母さんも大怪我をした…………ねえ、ダイレンジャーは何であの怪獣をやっつけないの?」



少女の眼は絶望に染まっていた。ホウオウレンジャーは思った。傷は癒せても、心までは救えていない。自分がしてきたのは…………。














思えば、こんな大都会で数ヵ所で治療したところで、助かるのは知れたものだ。
偽善なんじゃないかと、由貴は歩きながら思ってしまう。無理していたためか、気力も消費しているために足がフラフラしている。



(ねえ…………あたし達のやってることって何なの…………教えてよ…………)


誰でもいい。教えてほしい。由貴はクラッとして、倒れてしまう。



「ねえ…………亮お兄ちゃん…………コウ君…………」













″ピュー″








「誰…………?」


吹き戻し。由貴を起こした人物のだ。



「阿古丸君?」



「君を迎えに来た…………と言ったらどうする?」



早々にナンパをする阿古丸。由貴は青龍月刀を阿古丸の首筋に突き付けた。


「コウ君を元に戻して」



強い目。本気だと″思わせる″にはいいだろう。


「君に私は斬れない…………わかっている」


指で青龍月刀をどかす。由貴は疲労もあってか、刀を下げてしまう。


「コウ君がいれば、あの龍も…………」



「無理だ。あの強さは大連者・ゴーマ総力でも勝てない。君のがわかるはずだ」


さっきの少女の言葉があまりにも重くのしかかる。


「由貴ちゃぁぁんッ!!」



「コウ君?」


コウの声だ。目を醒ましたのだろう。



「!?。阿古丸…………」



コウは由貴よりも阿古丸に注目している。


「由貴ちゃんに何をする気だ!?」


「…………嫁にする気だ」



コウと阿古丸は互いにキーを出す。由貴は戦うつもりだと思い、間に入った。



「今は戦ってる場合じゃないでしょ!?」


「…………」